第二十五話 山の中
少し短いです。
主人公の名前を黒兎に変更しました。
色白男のクークに案内されて、山の中に入った。
中は、テラスの様なのもあり、どこかのカフェの様になっていて、多くの人がいた。
偶に、人間には見えないくらいの人がいるが、オーディンに聞いていた為二度見の様な失礼な真似はしていない。
向こうは皆、こちらをじっと見ている。手にジョッキの様なものを持っている者もいるが、皆静かにこちらを見ている。
その光景を見ながら、僕達はクークについて行きながら歩いている。
並び方は、前から、クーク、セイ、リョク、シラノ、クロミ、アカリ、アーサー、僕、オーディン、フェンリルとなっている。
スレイプニルやペガサスは、外で待っている。
ハデスは、秘密だ。
今は、テラスに目を向けている。
そこで、一人の女性と目があった。
僕より一つ年上くらいであろうか?女性というほどではないだろうが、大人っぽい様な雰囲気がある。
大人しそうな青の髪で、薄い青の服を着ている。
向こうも直ぐに目があったのに気づいたのか、こちらを向き声をかけてきた。
「君!名前なんていうの?!」
向いていたテラスには少し距離があった為、向こうが大声でこちらに声をかけてきた。
今の声で皆の視線が、僕と声をかけてきた子を行ったり来たりしている。声をかけてきた子の近くのいた女の子が何か言っているが、声をかけてきた子は無視してこちらを向いている。
僕も、それを聞くかと少しツッコミたくなったが、それをするともっと注目が集まりそうなので、やめておく。
念のため、自分を指差して確認したが、向こうが頷いた為、僕だということが確定した。正直、あまり確定してほしくなかった。
「朱宮黒兎!」
僕は聞こえる様に大声で言った。
そして、言ってから気づいたが、この世界は名前と名字どちらが先なのだろうか?
もし、名前が先なら僕は朱宮と呼ばれることになるだろう。
別に悪くないかな?でも、それが名前だと思われるのは違う。
僕の場合、どちらも少し特殊な気もするから、まあ、どちらでもいいと言えばいい。
向こうは僕の名前を聞くと笑顔になって席に戻って行った。
「シュミヤクロトか」
最後に何か言っていた気もするが、僕には聞こえなかった。
女の子が席に戻っていくと、止まっていた歩みが再開された。
向かって行く先を覗けば、台の上にリスがいる。
茶色い毛に黒いクリクリっとした大きな目玉。
どう見てもぬいぐるみだ。某ランドなどで売っていそうなぬいぐるみである。
が、次の瞬間、驚くべきことが起こった。
「ジョン、連れてきたよ」
クークにそう言われると、動き出したのだ。
初め、クークの行動が、何か分からなかった。ぬいぐるみに話しかけたから当然だろう。だが、本当にわからなくなったのは、次の瞬間だ。
ぬいぐるみが動いて、話しかけたのだ。クークに。
「おう!!ご苦労でい!!」
そう言った。
そして、僕は何も考えられなくなった。
何でと聞かれれば、顔だろう。
そう、顔だ。
元が、ぬいぐるみの様に可愛らしい顔なのだ。
それを無理矢理、何処ぞのオヤジの様に顔がなったら、ビックリだ。いや、ビックリどころでは無い。
その、恐ろしい顔が、僕に衝撃を与えた。そして僕は何も考えられなくなった。
「オラァ!!いつまで固まっとんじゃ!!」
その言葉と同時に、僕の頬に痛みが走った。
考えられなくなってからどれだけたったかは知らないが、僕は、痛みで目が覚めた。
「目ぇ覚めたかぁ!?」
そこには、悪魔がいた。悪魔リスだ。
僕には、そうとしか思えないのだ。
その顔は、未だに僕にダメージを与える。
僕は、そのダメージを堪えながら、言葉を出した。
「えっと、このリスは何グホッ」
語尾が変な様にも感じられるが、そうでは無い。
台詞の途中で、痛みが発生した為だ。
今度はさっきよりも強く、地面に打ち付けられる。
「このとか言うな!!このとか!!分かったかコラァ!!」
その悪魔は、僕に向かって怒号を発する。
叩かれた頬はまだ痛い。
何処ぞのアニメの様に文句を言いながら睨むなんてことはしない。
僕は叩かれたことはあるし。
「わっしは、ジョンという世界神。分かったか!?」
勝手に大声で自己紹介を始める悪魔。
その顔は神では無い。神では無い。顔だけで堕天している。
それにしても、世界悪魔(悪魔リスが世界神だから)とは。
神龍に会う前に先に別のに会うとは、運がいいのか、悪いのか。同じ所にいるから悪いんだろう。
「ああ、別に危害なんぞ加えさせんから、かくれとらんでいいぞ!!」
悪魔リスは、誰もいない方を向いてそんな事を言った。
僕には、意味は当然わかる。見抜かれた事に驚いている。
悪魔リスの顔は、確信だ。
言い訳は言えても、誤魔化しは効かない。
恐ろしい顔だが、それはわかった。
「出てきていいぞ。ハデス」
僕が許可を出すと、突然、人が現れる。
兜を持った。黒髪の青年。
ギリシャ神話、冥府の神、ハデスだ。
ハデスには、フェンリルに乗っている途中に兜をかぶってもらう事にした。
ハデスの兜は、姿を消す。
それは、メデューサ退治に行ったペルセウスにも貸された物だ。
その兜を使い、万が一の時は助けてもらおうと思ったのだが、その計画は失敗に終わった。