第十四話 決闘
この話は、主人公の誰の視点でもありません。三人称というやつです。
話の中で出てくる説明は主人公の知らない事です。
神が説明してくれている様なものです。
誰の視点であろうと、話もの流れには関係ありません。
それを分かった上でどうぞ〜
【黒魔術・落雷】
オーディンは黒魔術を唱えた。
現れた魔法陣は黒く、オーディンと同じくらいの大きさだ。
黒魔術とは、敵を殺す為や、害する為に使われる魔術で、この世界では禁忌になどなってはおらず、一般的な魔術の種類として知られる。
オーディンが放った魔術はその名の通り落雷の如き雷を相手に当てて攻撃する魔術である。
その魔術が飛んできたフェンリルはそれを食らわずに避けた。
避けたフェンリルはそのままオーディンへと向かっていく。
【獣術・疾風の獣】
フェンリルが使ったのは自分を早くする獣術である。このスピードですぐにオーディンのそばへ着く。
【赤魔術・飛行】
赤魔術とは、使用した者の身体能力を強化したり、何かしらの特別な力を与える魔術だ。
オーディンの後ろに赤い魔法陣が出る。
それが出た瞬間、オーディンは浮いた。
オーディンが使った赤魔術は使用した者に飛行能力を与える者だ。
だが、効果が良いわけではない。消費される魔力が大きいにもかかわらず、たいしてスピードも出ないし、高度も高くまで行けない。
【赤魔術・飛行】では、フェンリルに攻撃される前に逃げることはできない。ただでさえ速度が上がっているフェンリルであれば、空に上がる前に簡単に追いつき攻撃ができる。ついでに言えば、例え空に上がったとしてもフェンリルの跳躍力であれば簡単に噛み付ける距離に移動できる。
では、何故オーディンはこの魔術を使ったのか?
その疑問は次にオーディンが使った魔術で解ける。
【緑魔術・泥】
緑魔術とは、自然にある者を操作する、近い者に変化させる、成長を促す等のことを行う農業に適した魔術だ。
緑魔術は一つの魔術でそれを操り、変化させ、成長も促す。一つの魔術でで全ての効果を行える。
だが、一回魔術を発動させればそれで一度に全ての効果が発動できるわけではない。
発動した術者がどうしようとするかで効果は決まる。
魔術を使うだけなら上級者が使う魔術でも素人にできる。
だが、うまく効果を発揮させたり、二つの効果を同時に生み出す事は熟練した者でも難しい事だ。
オーディンが使った魔術の魔法陣が出たのは地面である。
そして、フェンリルが次に足で踏もうとしていたところであった。
フェンリルが足を地につけるとそこは泥へと変わり、尚且つ意思があるかの様にフェンリルに絡まってくる。
それで、フェンリルは攻撃のタイミングを逃した。
オーディンは浮き、魔力に物を言わせ普通に使うより遥か上空に登っていく。
フェンリルは力を限界まで入れて泥を破ろうとしている。
フェンリルが泥を破ったのは捕らえられてから10秒の事だった。
役目を終えた泥の魔術はただの土に戻っていく。
フェンリルが抜け出すまでの時間オーディンは何もしてなかったわけではない。
オーディンはずっと呟いていた。呪文を。
呪文とは、魔術を使う方法の一つだ。
魔術を使う方法は三つ。
呪文を唱える事。
魔法陣を作る事。
無詠唱、無魔法陣でも発動。
そして、呪文を唱え、魔法陣も使うこと。
一つ目は決められた呪文を唱えるだけなので基本的にできる者は多い。
だが、デメリットも多い。
一定までの威力でしか発動しないし、発動までの時間も長い、詠唱を途中で妨害されればペナルティとして体に痛みが走る。などである。
そのため、呪文のみは初心者用とされている。
二つ目の魔法陣の発動は、一人前になればできる様なレベルである。
魔術の事を勉強して理解した時に使える様になる。
だが、魔術によって難しさも当然違う為、一生かかってもある魔術の魔法陣が使えないということも多々ある。
覚えるのは難しいが、メリットはある。
発動まで時間が圧倒的に少ないことだ。それに、難しく考えずとも、その魔術の事を覚えていれば、パニックの時でも使える。そして、威力を調整でき、力量次第で威力を大幅に上げられる事だ。
デメリットとしては、ほんの少しの時間が掛かってしまうことと、前述したが、覚えるのが難しい事。そして、魔法陣を読み取れる者もいるという事だ。
ちなみに、何故魔術なのに魔法陣と呼んでいるかといえば、分かりやすいからというのが理由だと言われているが、実際は神が世界を作る時に何日もかけて作った。
その時に魔術としたことを忘れて、魔法陣として決定してしまったということがある。
その為、魔術なのに魔法陣という微妙な矛盾が生まれたのだ。
この事を知るのは、神だけである。
恥ずかしくて他人に話せもしないからであろう。
閉話休題
三つ目の無詠唱、無魔法陣は、すぐさま発動できるが、威力は詠唱の時と同じくらい低い。
そして、これを使える様になれば、詠唱と、魔法陣を両方使える様になっていなければならない。
その為、これを使うのであれば、魔法陣を使う方がいいという者が多い。
使いどきは、闇討ち、牽制、そして魔法陣を読み取れる者に対する時だけだろう。
四つ目に詠唱を唱えて魔法陣を使う場合、両方のデメリットを受け継ぐ様な事がある。
だが、その威力は計り知れない。普通に魔法陣を使うより、何倍も威力がある。
習得方法は無詠唱、無魔法陣と一緒である。
今、オーディンは四つ目の詠唱を唱えて魔法陣を使うという事をしている。これを行うだけで大きな技量が必要だが、偽りの様でも神であるオーディンはそれを行える。
オーディンは詠唱を唱えながら、魔術を発動させた。
並行魔術行使という高等的な技術だが、それを当たり前に行う。
【緑魔術・蔓】
詠唱をしながら緑の魔法陣を作り出したオーディン。
その魔法陣から出てきた蔓は、真っ直ぐにフェンリルに向かって行く。
だが、フェンリルはそれを避けて爪で引き裂く。
オーディンはまた、同じ魔術を発動させる。
【緑魔術・蔓】
今度は数十の魔法陣を発動させ、四方八方から大量の蔓を発射する。
フェンリルもこれだけ多くくれば辛い。
【魔狼変化】
発動させたのは自分が使えるスキルのうちの真の力を発動させる物。
フェンリルの毛は美しい黒い毛であったのだが、魔狼となったフェンリルは村正とはまた別の禍々しい漆黒の気配を纏う。目は赤く血走り、どこからどう見ても危険な狼である。
魔狼フェンリルは遠吠えした。
その遠吠えで蔓は全部散り散りになり、フェンリルに迫る物が無くなった。
だが、オーディンはフェンリルの遠吠えの瞬間、フェンリルが動けない瞬間を待っていた。
オーディンは今までしていた詠唱を終わらせ、魔術を発動させる。
【黒魔術・火焔】
黒い魔法陣から出てきたのは、巨大な火の玉だ。
それはフェンリルに向かって進む。
【魔狼の咆哮】
フェンリルは迎え撃つ。
オーディンが放った巨大な火の玉に向かって方向を放つ。
魔狼になった事で咆哮も強くなった。
その、咆哮と火焔がぶつかる。
スキルと魔術のぶつかり合いのせいなのか、長い時間をかけて押し合いを行い、終わったのは、両方が消えた時だった。
そして残ったのは、焼け消えた広場。
互いに消え、引き分けになった事で、フェンリルとオーディンは互いに戦闘を再開しようとした。
フェンリルは毛を逆だたせ、歯を食いしばって、威嚇した。
オーディンはいつでも魔術を発動できる様に準備をした。
「そこまで!!」
そこに響いたのは、決闘の終わりの合図だった。
出てくる魔術の名前は、ギリシャ語を使っています。
特に理由はありません。なんと無くです。
北欧の神が世界をギリシャ語で魔術を使っているってなんか変だとはちょっと思いますw