私たちの未来
「アオ、もうそろそろ教えてくれてもいいんじゃないか。なんで僕達四人が選ばれたのかを!リスタートライフに」
『そうだね』
アオはゆっくり僕達のことを話し始めた。
『今から40年後、君達は同じロケットに搭乗するはずだった。月へ向けた宇宙旅行だ」
「宇宙旅行だって!」
『驚くことはないさ。2054年の未来だ、一般の人達も宇宙へ旅行に出かける時代さ』
「種子島の宇宙センターから?」と美咲お姉さん。
『いや、すぐ前の九十九里中央広場から。40年後には、そこは宇宙への玄関となる。ボク達がピラミッドを置いた丁度あの場所さ』
そうだったのか。それで僕の記憶に・・。あのピラミッドの前に立ったとき、はじめてじゃない気がしたんだ。
「なんか信じられないな。意外と近い将来に宇宙旅行だなんて」
桃子ちゃんの言う通りだな。なんかピントこない。
「でもウサギさんいないんだよね・・」
駿はそっちが気になるらしい・・。
『その日の天気は快晴、ロケット打ち上げにはもってこいの気象条件だった』
「それで僕達は月へ行くことは出来たのか?」
『・・答えはNOだ!』
「・・・」
『ロケットは発射直後、爆発炎上してしまった!機器のトラブルでね』
「なんだって!それじゃあ僕達はそこで命を・・」
『翔太達は直前で搭乗をキャンセルしたんだ』
「何故なの?」
『それぞれに、搭乗できないアクシデントが起こったんだよ。美咲ちゃんは突然の激しいめまいに襲われ、桃子ちゃんは激しい頭痛、駿はこらえきれないほどの腹痛。とてもロケットに乗れる状況にはなかった』
「そんな偶然ってあるのかしら」
「本当だわ・・」信じられないといった様子の美咲お姉さんと桃子ちゃん。
「あれ?翔太は」
「そうだよ。僕はどうしたんだ・・」
『ああ、翔太はただの遅刻』
「なんだそれ」
『ごめんごめん、予知したんだよ事故を』
「えっ!」
『結局、8人乗りのロケットには4人だけが乗り込み、事故の犠牲になってしまったんだ』
「そんなことがあったのか。でも、偶然にしては出来すぎた話だな」
『それは偶然なんかじゃないよ。必然のことさ!めまいも、頭痛も、腹痛も、遅刻も、並外れた心と身体の能力がそれをさせたんだ。命を守るためにね。そしてボク達は確信したんだ!リスタートライフにふさわしいのは、この四人だってね』
自分達の知らない間に、自分達の知らない力で事故を回避していた。まだ自信も確信もないけど、このあと大きな事が起こる!そして、それに僕たちは立ち向かっていかなければならない運命にある。僕はそんな気がしている。
僕と駿は桃子ちゃんの家に向かっていた。
ん?何か来る。アオか・・。
「どうしたの翔太」
「アオの気配がしたと思ったんだけど、気のせいかな。さあ駿、桃子ちゃん家に急ごう」
「うん」
「おじゃましまーす」
「あーあ、翔太君、駿君、早かったわね」
「あれ、美咲お姉さん・・桃子ちゃんは?」
「今ジュースを買いに行ってくれてるの」
「アオもまだなの?」
「うん、まだ来てないわよ」
「おかしいなあ、じゃあさっきのはいったい・・」
「えっ、何?」
「いや、来る途中でアオの気配を感じた気がしたんだけど」
「ただいまー、あっ翔太君たち、早かったね」
「うん」
「それより美咲お姉さん、今家の前でね、凄くステキな男性を見かけたんだ」
「ステキな男性・・?」
「歳はお姉さんと同じぐらいか少し上かな。初めて見る顔だったわ。ただね、髪の毛を真っ赤に染めてたの」
「そうなんだ、テレビとかに出るひとかな?」
「ん?でも見たことないなあ・・」
「そんなにいい男だったのか桃子ちゃん」
「そりゃあもう・・超イケメンよ!」
「超イケメンねー」
超イケメン・・!?僕の夢に出てきた神様もスゴいイケメンだった。もしかしたらあれは月の神様!
僕が感じたあの気配は、アオじゃなく神様だったのか・・。
僕達は慌てて外へ飛び出した。
「誰もいないねー、翔太」
「うん」
「あの辺ですれ違ったのよ。あっちに行ってみましょう」
「ワンワン、ワンワン」その時だ、ラッキーが勢いよく走り出した 。
「おいラッキー、追いかけよう」
ひとつ角を曲がった先にラッキーはいた。
その横には赤毛の男。
間違いない、いつか夢に出てきた男性、つまり神様だ!
「あの男性だわ、さっき見かけたのは」
「ラッキー!」そう言って駿がラッキーのもとへ駆け出した。
「ワンワン、ワンワン」
「こんにちは」
『こんにちは駿』
「・・・」
神様がいったい何をしに・・。
「神様・・月の神様なんだろう・・」僕は男にテレパシーを送った。
『その声は翔太か!だいぶテレパシーの能力があがったようだな』
「それはどうも」
「やっぱり月の神様だ、あの男。今テレパシーで話した」
「そうなんだ」
「駿」
「あっ翔太」
「このお兄ちゃん、駿君の名前知ってたよ」
「このお兄ちゃんは、アオのパパさ」
「えー、そうなの!」
『脅かしてごめんよ駿。ワタシの名前はレッド、よろしくな駿』
僕は思わずふきだしてしまった!
これで黄色がいたら信号機だな。
「レッド・・?」
『そう、みんなもレッドと呼んでくれ。美咲ちゃん、桃子ちゃん、それに翔太』
「じゃあアカ、今日アオは来ないのか?」
『アカじゃない、レッドだ!』
「それを日本ではアカって言うの」
まったく、親子そろって・・。
『今日はブルーは来ない。だからワタシが来たんだ、この懐かしい地球に』
「大体のことはアオから聞いてるよ」
『そうか、色々迷惑をかけるな』
「アオの話だと、新月の日がどうとか言ってたけど」
『そう、月の裏側に眠る勇者を蘇らせる』
「勇者だって?」
『サターンと互角に闘えるのは勇者をおいて他にない』
「でもアカ、仮に勇者が見事復活しても、100パーセント勝てる相手なのかサターンは?それに、こちらの思い通りに、勇者がサターンと闘ってくれるかもわからないんじゃ・・」
『普通に闘えば力は互角、どちらが勝利するかはその時の運だ』
「その時の運て、それじゃあまりにも無責任だろう」
『勇者は善の心を持つ。こちらの思いが通じれば必ず味方になってくれる』
「こちらの思いって?」不安そうに言う桃子ちゃん。
『誰かを助けたいという、切なる気持ちだ!』
それだけ言うと、アカは姿を消した。
「でもどうしても腑に落ちないよな」
「どうしたの翔太君」
「アカの言ってた切なる気持ちってやつ」
「実は私もちょっと引っ掛かるんだ」と美咲お姉さん。
「確かにアオのママ、すなわち女神を助けてあげたいとは思うけど、はっきり言って他人じゃん。そのひとに対してどこまで本気になれるのか・・」
おそらく勇者とやらは、中途半端な気持ちではこちらの味方にはなってくれないだろう。そんな予感がする・・。
『パパ、どうだった翔太達の印象は?』
『なかなか心の澄んだいい連中じゃないか』
『うん、ボクも大好きさ!彼らが』
『そんな大好きな連中を、だますようなやり方、おまえに出来るかい。いくらママのためとはいえ・・』
『・・』
『ブルー、おまえが賛成してくれなければ、この計画を進めるわけにはいかない。下手をすると翔太達もおまえも、心に大きな傷を負うことになる』
『わかってる。でもボクは翔太達を信じるよ。きっとわかってくれるはず。翔太達の心を傷付けることだけは絶対しないさ!絶対』
『いい仲間が出来たな、ブルー』
『うん』
『しばらく彼らには会えなくなる。今のうちに地球へ行ってくるがいい』
・・九十九里中央公園・・
「おっ、アオ、来たのか」
「こんにちはブルー」
『翔太、駿、なにやってるんだこんなところで』
「将来ここが宇宙への玄関になるなんて、想像しただけでワクワクするよ!でも悲しい事故が起きちゃうんだよな」
『うん』
・・「翔太君、駿君」美咲お姉さんと桃子ちゃんだ。
「あっ、ブルーもいたのね」
「ねー、ブルーのママってすごく美人なんでしょ、早く会いたいな」
「そりゃあ美人に決まってるよ。かぐや姫だぜ!なあアオ」
「駿君も早く会いたいな」
「ん?アオ、どうかしたか?元気ないみたいだけど」
『いや、そんなことないよ。ボクのママかい、そりゃあ美人に決まってるさ。宇宙一だね』
「そうだアオ、僕達はどうやって勇者を復活させればいいんだ?肝心なことをまだ聞いてなかったよ」
『うん、それは後でパパが説明に来るよ』
「そうなのか、アオが教えてくれるのかと思った。それから、ちょっと気になることもあってさ」
『勇者が本当にボク達のために、闘ってくれるかってことだろう』
「そうなんだ」
『その事なら大丈夫さ。ボクが保証する』
「そうか、ならいいけど」
『それよりみんなごめんよ』
「なんだよ急に・・」
『いや、何となくだ・・じゃあボクはこれで行くよ』
「うん、またな」
「またねブルー」
「なんか今日のブルー、元気なかった感じ」
「そうね」
美咲お姉さんと桃子ちゃんと同じように、僕も駿もそれを感じていた。