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リスタートライフ

『みんなは人生を繰り返すことの意味を、あまり深く考えてないんだろうね。前の記憶が無いんだから、ただ単純に繰り返してるだけだとか』

「前に僕達はその事で話し合ったけど、結局そんなような結論しか出なかった。だってそうだろう、前の人生の記憶が残ってるならともかく、全部消されちゃってるんだからな」


『じゃあ簡単に教えておくよ。人生って色々な事が起こるよね。良い時もあれば悪い時も、楽しいことや悲しいこと。人間はそれを喜怒哀楽で受け入れる。それに生きて行くというのは決断の毎日さ。ある岐路にさしかかれば、どちらかを選択しなくちゃいけない。何気ない暮らしのなかでも、何かしらの決断を無意識のうちにしている。そうやって人の心は磨かれる。その磨かれた部分の心までは、ボクの力でも消せやしない。その心の蓄積こそがリスタートライフの本質さ!』

「アオ、おまえ天才!?僕にはとても難しすぎる話だ」

「私、何となく理解できるかな・・」と美咲お姉さん。

「私も何となく・・」と桃子ちゃん。

「駿くんも・・」

駿まで理解したのか今の話を?!


『じゃあついでだから、もうひとつ難しい話だ』

「まだあるのか・・ついていけるかな僕」

『休憩するか?』

「うん、そうしよう」

このまま続けられたら、僕の頭はそれこそパニックだ。コーラでも飲んで落ち着かないとな・・。

四人はコップのコーラをゴクリと飲みほした!


「よしアオ、続きを頼む!」

『人間の能力って、実はまだまだ発揮されてないものがたくさんあるんだ。例えば身体能力。色々な種目のアスリートが、良い成績を出すために毎日トレーニングをするだろう。それによって潜在能力を最大限に引き出そうとする。それでも数十パーセント程度しか出しきれてないんだ。走るスピードも高く飛び上がる力も。ほら火事場の馬鹿力って知ってるだろう。いざとなったら普段の何倍もの力が出るってやつ!それが良い例さ』

「あっ、そうか、そうよね!」妙に納得の美咲お姉さん。

『それから脳なんて、ほんの数パーセントしか使われてないんだよ。もったいない話さ』

「そのもったいない部分をフルに引き出す、いわばトレーニング。それがリスタートライフって訳だな」

『その通りさ。今度は理解出来たみたいだな翔太』

「話の内容はわかったけど、それだけじゃサターンとは闘えないよな」

『そうさ、まだまだほんの準備段階さ・・』


『ブルーよ、その後どうなんだ例の四人は?』

『うん、大分その気になってきてるよ。ボクの感触だと相当期待できそうだけど』

『なら良いがな。それにしてもお前のママは元気でいるのだろうか?・・』

『パパ、ママとはまだ連絡がとれないの』

『うん、大分彗星は近づいてるはずなんだが、我々のテレパシーを遮るようなバリアが張られてるようだ』

『サターンの仕業?』

『おそらくな・・。早く手を打たないと、取り返しのつかないことになるぞブルー』


『レオン彗星』

おおよそ1000年周期で太陽を回るこの彗星。今はサターンが住み着いている。それが今回ばかりは様子が異なる。彗星の軌道が僅かにずれているのだ。このままだと太陽に近づきすぎて消滅してしまう。しかもその彗星にはボクのママが閉じ込められているんだ。彗星の消滅はすなわちボクのママの死を意味する。なんとしてもママを救い出さなくては。そのためには翔太達の力が必要なんだ!サターンを倒し、ママを助けだし、彗星の軌道を元に戻す。時間はもうわずかしかない。いずれ翔太たちにもこの事実を話さなくてはいけない。そしてサターンを倒す唯一の方法も・・。


『月の裏側』

月の裏側、すなわち地球からは決して見ることの出来ない場所。そこはボク達の月とサターンの月が衝突した側で、表側とは違い起伏が激しく、高い山脈が続いている。そのひとつに、高さが1万メートルにも及ぶ山がそびえる。そこに、ボクのママが閉じ込められたのと同じように、今復活の時を待つ者が眠っている。


一方地球では・・

「リスタートライフかあ。どうせなら記憶もそのまま残してくれたら良かったのに。そしたら良い方に良い方に人生進めるじゃん」

「それはさすがに反則なんじゃない。自分は最高の人生に近づけるんだろうけど、周りのひとには迷惑な話だわ、きっと」

「そうだな、そんなのズルいよな・・」

「翔太くん、なんだか諦めきれないって感じだけど?」

「えっ!そんなことないよ」

「それよりまだ準備段階って言う、ブルーの言葉が引っ掛かるな」

「美咲お姉さんも?!僕もずっと引っ掛かってる」

「ねー翔太、最近ブルー来てくれないね。どうしちゃったのかな?」

もう1週間、アオは僕たちの前に姿を現してない。


「ねー美咲お姉さん、リスタートライフってさ、すべて同じストーリーなのかなあ?つまり、アオが言うように人生って色々選択をしながら生きて行くんだよね。AとBがあって、必ずAならAを選んできたのかな?毎回の人生で・・」

「時にはBを選ぶこともあったかってこと」

「うん」

「どうかしらね、でもそうしたら人生が変わっちゃうてことでしょ・・」

「今度アオに聞いてみようか」

「そうね」

なんか今日あたり、アオのやつが現れるような気がするんだよな・・。


・・『翔太、なかなか鋭いなあ』

「あっ、アオ。いつの間に」

『さっきからずっといたよ。ちょっと姿を消してたのさ』

「透明人間!?」

『それを言うなら透明宇宙人。それより翔太、ボクが現れるんじゃないかって予感、見事だったな。これもリスタートライフの成果さ!』

「そうなのか?・・」


『翔太、ボクに質問があるんだろう』

「あーあ、リスタートライフのことさ」

『うん、聞いてたよ・・』

「じゃあ説明してくれ」

『忘却ってわかるか?』

「ええ、忘れてしまうことでしょ」

『美咲ちゃんの言う通り忘れ去ることだ。この忘却っていうシステム、実は人間にはとても重要な役割を果たしているんだ。人間には感情がある。ロボットと違ってね。嬉しいことや楽しいことは、いつまでも思い出としてとっておきたいけど、悲しみとか苦しみの記憶なんて、いつまでも残しておいたら辛くてたまらないよ。だから忘れるんだ』

「忘れるってなんかマイナスな印象だけど、そういう考え方もあるのか」

『ただこのシステムの悪いところは、忘れなくても良いとこまで作用しちゃうことがよくあるんだ・・なあ、翔太!』

「なんでボクの方を見る?どういう意味だよ!」

『・・・』


『こういうことないか。昔のなんでもないような事柄が、思い出としてずっと残ってるってこと。例えば友達から言われた一言とか、会話の内容とか。そんなの別に覚えてなくても、大したことじゃないってやつ』

「あーあ、言われてみるとそんなのあるわね」

「確かに私もあるなあ」

美咲お姉さんと桃子ちゃんのように、僕にもそんなのが確かにある、と言うかそんなのばっかりだって感じ。


『その記憶のすぐ前の選択肢のところで、前の人生とは違う方を選んだってことなんだ。AじゃなくてBの方をね!確率で言うと美咲ちゃんも、桃子ちゃんも、駿も約1パーセントってとこかな。違う方を選んじゃうのは』

「おい、コラ、アオ!僕はどうなんだ?」

「翔太の場合は約50パーセントだ』

「それって良いことなのか?」

『微妙・・だな!あっちにいったり、こっちにいったりってことだから』

「それはすなわち色々な経験が出来てるってことだね!」

『そうとも言える!』


「それからブルー、この間私達はまだまだ準備段階だって言ってたわよね。それってどういうことなの?」と美咲お姉さん。

「アオ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか・・」


『よし、次の満月の夜、前の広場に集合だ』

「何日だ?」

『9月9日』

「その日に何があるんだ?」

『それは、その時まで秘密さ』

教えてくれたっていいのに、アオのやつ。

『なんか言ったか翔太』

「いや」





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