巨大地下都市
地下浸入に成功した僕達は、急いで身を隠した。
『思ったよりかなり広そうだな』とゼウス。
「うん」
アオが偵察から戻ってきた。
『相当広いぞ。まるで地下の巨大都市だ。中央にエレベータがあって、更に下のフロアがある』
「更に下があるのか!」
『幸いこのフロアに男たちの数は少ない。蹴散らしながら、簡単にエレベータまで行けそうだ。問題はこの下だ!おそらくこの巨大都市の心臓部だろう』
・・トロの城・・
『パパ、あの人たちに何で歳なんて聞いたの?』
『どうしてしてそんなことを聞くんだ?舞』
『・・そのときのパパ、すごく悲しそうな目をしてたから』
『悲しそうな・・』
『うん、そんな風に私には見えたの』
『あの子達とは出会ってまだ日は浅いが、強さの中に、優しさと思いやりが詰まっているようで。そんな子達を、危険と知りながら、グリーのところへ行かせてしまうことに、罪悪感みたいなものを感じてな。それに・・』
『それに?』
『とても不吉な予感がしてならない』
・・グリー・・
どうやら3次元のやつらも、ここを嗅ぎ付けたらしいな。しかしもう遅い。私の科学者としての集大成メガキングは、99パーセント完成した。
だが私は、争うことを好んではいない。このメガキングも闘うためのものではない。ただ私という科学者を、グリーという人間を、世界にいや宇宙に認めさせたいだけだ!そしてその私の行動を邪魔する者があれば、そのときは決して容赦はしない。
・・巨大地下都市・・
僕達は既にエレベータの前までたどり着いていた。
『ここからは、グリーを守る男たちも大勢いるだろう。慎重に行こう』とポセイドン。
「わかった」
僕達は新たに得たミラーの超能力を使った。これで3次元にいるのとおんなじだ。
『駿、準備はいいか』とゼウス。
「うん、バッチリさ!」
「よし、いくぞ!」
僕達はエレベータに乗り込み、B2のボタンを押した。
エレベータは静かに滑り出し、下降をを始めた。
そして、B2?に激しく激突する格好で停止した。
『ずいぶん荒っぽいエレベータだな』
すると突然電灯が消えた。
「キャー」
すぐにポセイドンがビームライトを照らすが、エレベータの扉はいっこうに開こうとしない。
『ようこそ3次元の人間たち』
「サターン、サターンなのか?!」
『サターンはもういないよ。あるのはヤツの細胞だけだ』
「やっぱりサターンじゃなかったか!」
『まあ、細胞さえあればいつでも復活させられるがね!私のしもべとして・・』
『なんだと』
『そこから出られたら教えてあげよう。色々とな・・』
「くそー」
『衝撃波で扉を吹っ飛ばすか!』
『見たところ、何の変哲もないただの扉のようだが』
『でも、それがかえって怪しくないか!』アオの言う通りなんだか不気味だ。
「駿、この扉、透視できるか」
「やってみるね」駿はジーっと扉を見つめた。
「どうだ?」
「何も仕掛けはないみたいだけど」
「もしかしたら、扉を破ったと同時に、攻撃してくるんじゃ・・?!」と美咲お姉さん。
「僕もそんな気がするな」
「どうしましょう」と桃子ちゃん。
「・・駿、天井はどうだ?」
駿は天井を見つめた。
「・・大丈夫!」
「よし、天井を吹き飛ばそう!そうすれば異変に気づいて、何か動きがあるはずだ」
『よし!任せろ』
そして、ゼウスの電撃波が天井に炸裂した。
施設内にはけたたましい警報音が響き出した。
するとその数秒後、エレベータの扉が破られ、中に向けて機関銃が乱射された!
続いて機関銃を持った男たち数人が、エレベータ内に飛び込んできたが、そこには人の影も形もない!
その直後、戸惑う男たちの体を、ポセイドンの衝撃波が走り抜けた。
そして僕達は、静かに床に着地した。
ゼウスもポセイドンも攻撃の姿勢はそのままに、そして僕は、雷鳴の剣を構えゆっくりとエレベータを出た。
『さすがだな』
「グリー、超最強ロボットの製造をやめてもらうぞ」
『何のことだ』
『とぼけるな!』とゼウス。
『とぼけてなどいない。今さらそんなことを言っても遅いと言ってるだけだ』
『なんだと』とポセイドン。
『既に99パーセント完成している。あとほんの数時間で、お前たちに何ができるというのだ』
「翔太、あの扉の中だよ。そこにロボットが!」と駿。
『ちぇっ、小僧め』
「ゼウス、ポセイドン、グリーを頼む!」
『よし』
「駿、あの扉まで瞬間移動だ!」僕は雷鳴の剣に力をためた。
「翔太、いくよ!」
『おのれえ!』とグリー。
『お前の相手はこっちだ』
ゼウスとポセイドンはグリーの動きを抑え込んだ。
・・そして、扉の前に来た僕は、雷鳴の剣を振り抜き、扉を破壊した。
そしてそこには、超最強ロボットの姿が!
それはロボットというより、最強のサイボーグの方がふさわしい。そんな印象だ!
「うわー、カッコいい!」と感動してしまう駿。
その時だ!サイボーグの目が怪しく光った。
あれは・・サターンの目。
「駿!来るぞ」
僕は風雲の盾を前にして、駿の体を引き寄せた!
サイボーグの目から放たれたビームは、まさにサターンの攻撃そのものだった。
「翔太、今のは・・」
「うん、サターンのビームだ」
ゼウスとポセイドンに押さえつけられているグリー。さっきからしきりに何かを気にしている。翔太と駿の動きが気になるのか・・?
まただ、また視線を向けた。
・・もしや。
『翔太、そのロボットに何か繋がれているものはないか?コードのようなものだ』とゼウス。
「コード?」
「駿わかるか?」
駿は、サイボーグをじっと見つめた。
「・・あっ、背中側に何かある!」
『くそー、またしても』しまったという表情のグリー。
『それだ。そこからエネルギーが供給されているんだ!それを破壊するんだ』
「破壊するって、背中側のものをどうやって・・」
「翔太、ブーメランさ!」と風雲の盾を指差す駿。
「そうか!」
僕は風雲の盾を構え集中した!
そして、サイボーグの右側に大きく逸れるように、盾を投げた。右に飛んだ盾は方向を変え、サイボーグの背中側に回り込んだ。
「やったぞ!」
ブーメランと化した盾は、見事コードを切断して戻ってきた。
「翔太、やったねー!」
あと少し、あと少しで完全体のメガキングが誕生するところを。仕方がない、99パーセントでも、この3次元のやつらを倒すのには充分ののパワーだ!完全体の誕生は、こいつらを倒してからの楽しみとしよう。
『メガキングよ、お前のパワーをこいつらに見せてやれ!』身動きの取れないグリーはそう叫んだ。
グリーの叫びを聞き、サイボーグに魂が注がれた!メガキングがついに動き出したのだ。そして、素早い動きでゼウスとポセイドンを睨むと、レーザービームを放った。二人は咄嗟にグリーから手をほどき、辛うじてビームをかわした。
メガキングは、グリーの体を拾い上げその姿を消した。
『消えた!』驚くゼウス。
「消えた?!」
メガキングは超能力を使うのか!
・・月・・
『レッド、どうしたの?そわそわして』
『うん、なんだか胸騒ぎがするんだ』
『えっ?』
『ブルーや翔太達のことだよ・・ちょっと異次元の街まで行ってくる』
『私も一緒に行くわ』
・・カメゾウ・・
駿達大丈夫かなあ。だいぶ慌ただしいみたいだけど。早く戻ってきてくれないかな。
・・あっ!あいつグリーだ。何であんなところにいるんだ。それに、一緒にいるあのデカいのは誰なんだ?
またおどかしてやろうか・・。
すると、急に地面が大きく揺れだした。
『グラグラ、グラグラ・・』
わあ!なんだー。
『せっかくの地下施設を、爆破してしまうのはもったいないがやむを得まい。メガキング脱出するぞ』
『わかった』
地下施設を爆破!
駿達がまだ中にいるのに・・。
・・地下施設・・
『グラグラ、グラグラ・・』
『うわあ!なんだ!?』慌てるアオ。
「地震なの?」
「どんどん壁にヒビが・・」怯える美咲お姉さんと桃子ちゃん。
『うわー、天井が崩れるぞ!』とポセイドン。
『グリーのやつ、ここを爆破するつもりか』とゼウス。
「翔太・・」
「くそ」
天井が崩れ始めた!
『このままだと生き埋めだ』
「キャー」
「崩れるわー!」
その時、風雲の盾が青い光を放ち輝いた。
・・トロの城・・
『こんにちは』
『おお、レッド、セレーネ』
『こんにちは』舞と龍も二人の訪問を喜んだ。
『ところで今日は・・』
『息子達の様子をと思ってな』
『・・本当にそれだけか?』王様は、レッドが自分と同じ不安を抱いていることを悟っていた。
『・・・』
『レッドは、なんだか胸騒ぎがすると。このところ落ち着きがないんです』とセレーネ。
『実は私のパパもなんです。嫌な予感がすると・・』
『嫌な予感が・・?』
カメゾウの体は大きくふっ飛んだ!しかし、硬い甲羅が身を守ってくれていた。
そして目を開けると、青い光の玉が目の前に現れた。カメゾウは驚きのあまり、腰を抜かすところだったが、やがてその光は静かに消えて行き、みんなが姿を現した。
『駿、翔太!・・』
「カメゾウ!!」
『心配したんだよ!』
「ごめんよ。でも、風雲の盾がぼくたちを守ってくれたんだ」と駿。
『そう言えば、爆発する前にグリーを見たんだ。デカいやつと一緒だった』
「それメガキングだよ」
『メガキング!?』
「グリーがつくったサイボーグさ!」
「カメゾウ、それでグリー達はどこへいったんだ?」
『わからないけど。ここを脱出するって言って消えちゃったから』
『まず行くとしたら、王様のところだろう』とゼウス。
『そうだな。こちらも急ごう』とポセイドン。
・・トロの城・・
『ダーン!ゴトゴトゴ、バキバキバキ』
突然、轟音と共に激しい揺れが城を襲った。
『いったいどうした!?』
『お久しぶりです、吉永の爺さん』
『グリー』
『私はこれから3次元の世界に向かいます。その挨拶に』
『なんだと、子供達はどうした』
『子供達?・・ああ、タラスで爆発事故があってね』
『なに』
『どうも、逃げ遅れたようなんだ』
『翔太君達が・・』と唇を震わせる舞。
『お前の仕業かグリー』
『爺さん、それは人聞きが悪い。事故ですよ』
『・・・』
『あっそうだ、紹介します・・メガキング!』
ガーンという衝撃のあと、城の壁が破られ、3メートルはあろうかというサイボーグが現れた。
『これは・・』
『あなた方の言っていた超最強ロボットです』
『完成してしまったのか・・』驚きと恐怖の王様。
『グリー、あなたという人は・・』
『舞か、ずいぶんと女性らしくなったじゃないか』
『どうしてあなたはそんなに悪い人に』
『悪い人か。悲しいな、舞にそんなふうに言われると』
『くそー、翔太達をかえせ!!』
そう叫び、グリーに飛びかかろうとする龍。それを見たメガキングの目が怪しく光った。
『危ない龍!』
メガキングの放ったビームは、瞬時に龍をかばった王様の背中を直撃した。
『パパー』
『私は本気だ!』そうグリーは不気味な笑みを見せた。
『何てことを!』
『お前は誰だ?』
『レッド無茶はやめて!』
『許さん!』
『やるのか・・』
そして再びメガキングの目が光った。
レッドは咄嗟に、グリーを盾にする位置に回り込んだ。
『さあ、攻撃してみろ。グリーはひとたまりもないぞ!』
しかし、グリーは不気味な笑みを消すことはなかった。
そして、グリーの体は瞬時に消えた。
『なに!』
そして無防備となったレッドの体を、レーザービームが虚しく貫いた。
『レッド!』




