カモフラージュ
ん?なんだこのデカい荷物は・・。
『誰からだ』
「北の国からです!」
『・・・』
いよいよふたを開けるぞ。
・・あれ?グリーじゃないの。
さすがに慎重なグリー。何が入ってるかわからない荷物の蓋など、自分では開けない。
代わりに隣の若い男が、荷物の封を切って蓋を開けた・・?
いや、開けていない。開けようと、思いきり持ち上げるがなかなか開かない。蓋を開けようとしているのが、グリーではないことに気づいた駿とカメゾウが、中から蓋をぎゅっと押さえていたのだ!
『どうした?』待ちきれないと言った感じのグリー。
そしてグリーも荷物の前に行き、男と二人で蓋をグーっと持ち上げた。
蓋の開いた荷物をのぞきこむ二人。
『・・ん?』
そして、カメゾウがニコッと笑った。
『ギャー!!』
そして二人とも腰を抜かし、口から泡を吹き、気を失った。
「本当に苦手なんだな!カメが・・」
『よし、中に急ごう』
ときより向かってくる敵を蹴散らし、どんどん奥へ。
そして、ひとつの扉に行き着いた。
『ここだな!』
特定の者が手をかざすと開く仕組みの自動扉らしい。
僕は雷鳴の剣を握った。
「一気に行くぞ!」
そして、雷鳴の剣を構えた。
『翔太、敵だ!』とゼウスの声が。
その時、構えた雷鳴の剣に敵の姿が映った!
右だ!僕は雷鳴の剣を鋭く右に振り抜いた。
・・しまった!反対、左か・・。
ここは異次元の街。気づいたときにはもう、剣は右側を振り抜いていた。
・・だが、剣は見事敵を捉えていたのだ!
『危ないところだったな翔太』
「ああ」
あのときのように左右を間違え、やられたと思った。しかし、今は違った。自分の思った通り、敵は右にいたのだ・・どういうことなんだ。
その時僕は、ふと駿のことが頭に浮かんだ。大きな鏡の前で何やらやっていた駿の姿が・・。
『翔太急げ、扉を破るんだ!』とポセイドン。
僕は再び雷鳴の剣を構え、目の前の扉をぶち破った。
・・グリー・・
何だったんだ、今のカメのバケものは。あんなデカいカメなど見たことない。いったい誰がこんなことを・・。ワタシが大のカメ嫌いだと知ってるのは、吉永の爺しかいない。くそー、なめた真似を。
そして、グリーは普段見かけない大きな石が、そこに置いてあるのに気づいた。誰だこんなところに、センスのない石を置いたのは?
・・ん?動いたか。まさかな。
おそるおそる石に近づくグリーは、またとんでもないものを見てしまった。石が自分をにらんでいるのだ!
それが石ではなく、あのデカいカメだと知り、再び腰を抜かし泡を吹いた。
扉は跡形もなく飛び散った。
『みんな、慎重にいくぞ』
「そーだ・・」
「どうした駿?」
「カメゾウ大丈夫かな・・ぼくちょっと見てくるよ!」
「おい、駿!」
「すぐ戻ってくるよー・・」
『駿はどこに行ったんだ』とブルー。
「カメゾウが心配らしい」
『駿らしいな!じゃあボクも行ってみるよ』
「ああ、頼む」
駿を追いかけて、ブルーもカメゾウのところへ向かった。
扉の奥の部屋には、コンピューターがずらりと並び、あちらこちらで赤や青のランプが点滅している。部屋には窓ひとつなく、そこに働く科学者の姿もなかった。それに、僕達の目指す超最強ロボットの姿もない。
『静かすぎないか』とゼウス。
「人の姿も全然ないわ」
「ちょっと不気味だわ」美咲お姉さんも桃子ちゃんも、不安を隠せない。
『他の部屋に通じる扉も無いみたいだな』とポセイドン。
その時だった。先程破壊したはずの扉が、またそこに出現したのだ。
「しまった、罠だ!」
『くそ!』
「キャー!あの数字は・・」と美咲お姉さん。
『時限爆弾』とゼウス。
僕はもう一度、雷鳴の剣を握った。
『待て!翔太。むやみに扉を破ったら危険だ。その衝撃で爆弾が爆発するかもしれん』とポセイドン。
「なに」
『表から扉を解除した方が良さそうだな』とゼウス。
「よし、アオを呼び出そう」
『急げ、あと90秒しかない』
・・カメゾウ・・
「カメゾウ!」
『駿、来てくれたのか』
『駿!』
『あっ、ブルー』
『グリーはどうだ?』
『一度目をさましたけど、またボクの顔を見たら倒れちゃった!』
「弱虫だなあーグリーは」
「アオ、アオ、聞こえるか」
『翔太!どうかしたか?』
「罠だ!部屋に閉じ込められた。扉がまた出現したんだ」
『えー!』
「どうしたのブルー」
『翔太達が、あの部屋に閉じ込められたって』
「えー!」
「アオ、そこにグリーはいるか?」
『ああ、気絶してる、2回目の!』
「よし、グリーを連れて、この扉の前まで瞬間移動してくれ」
『グリーを・・そうか!扉のキーを解除するんだな』
「そうだ、急いでくれ時間がない!
『駿、カメゾウ、瞬間移動するぞ』
『よし、着いたぞ扉の前に!』
「頼む!あと60秒しかない。時限爆弾だ」
『なんだって!』
『駿、グリーの体を持ち上げて、扉のあの手のマークのところまで、グリーの手を持っていくぞ!』
「うん、わかった」
『せーの・・うっ重い!』
「せーの・・ひえー、全然届かないよ」
「アオ、まだか!」
『グリーの手が、マークまで届かないんだ』
「なんだと」
『翔太、どうした?早くしないとまずいぞ!』とポセイドン。
『最悪の場合、一か八かこちらから破壊するしかないな』とゼウス。
「・・アオ、急げ!あと30秒だ」
『わかってるよそんなこと』
『駿、ブルー、ボクの背中に乗って!』とカメゾウ。
「よし」
「あと15秒だ」
『翔太、雷鳴の剣を』とゼウス。
僕は再び雷鳴の剣を構えた。
『カメゾウ、思いきり背伸びをしろよ!』
10・9・8・7
『お前たち何をしてる』グリーが気がついた。
「うるさい黙ってろ!この弱虫」
6・5・4
「せーの・・届いた!!」
『お前たちまさか・・』慌てるグリー。
3・2・1
「よし、開いた!みんな逃げるぞー!瞬間移動」
『どかーん!!!』
またもや間一髪。
いったん僕たちはお城に戻っていた。
『じゃあ、あの建物は跡形もなく壊れてしまったのか』と王様。
「うん」
『では、超最強ロボットは・・』
『おそらく他の場所にあるんだろう。あの建物はカモフラージュだ!』
『完成までの時間稼ぎだな』
「それにしても、今回だけはヒヤヒヤものだったわ」と桃子ちゃん。
「カメゾウのおかげさ!」と駿。
『ん・・』みんなの視線に照れるカメゾウ。
「そう言えば、グリーはどうしたかしら」と美咲お姉さん。
『どこかに逃げて、ピンピンしてるさ』
「ても、あの建物がグリーの拠点でないとすると、いったいどこでその超最強ロボットをつくってるんだ?」
『他にそれらしい所はなかったと思うが』
『何も地上とは限らないさ』
『では・・地下か』と王様。
『うん』
「あっそうだ!舞ちゃん、鏡持ってない?」
『えっ、あるけど』
「ちょっと貸してもらえるかな」
「ん?翔太、舞ちゃんに鏡なんか借りて、なにするつもり?」おませな駿のひとりごと。
『はい、これでいいかな』
「うん、ありがとう」
「翔太君、鏡なんて借りてどうするの?」と美咲お姉さん。
「うん・・」」僕は鏡に映る自分の顔をじっと眺めた。
『翔太、気は確かか?!』とアオ。
『翔太は意外とイケメンだもんね』とカメゾウ。
「まーな」
「まーなって翔太君、すっかりその気じゃない」と桃子ちゃん。
「・・・」
「カッコいいのは・・認めるけどさ」えっ、桃子ちゃんの本心?!
「いや、闘ってる時に気づいたんだ、雷鳴の剣に敵が映った時にね!ここは鏡の世界だよね。ということは、この世界で鏡に映った自分というのは、3次元のいつもの自分ってことだよな」
「ああ、なるほどね。鏡に映ったものを、もう一度鏡に映すってことね」
「そうなんだ。つまり、自分の意識の中に鏡を置いて相手を見れば、いつも通りってことさ」
「翔太・・?」まだ、話についてこれない駿。
「アオ、超能力でそれ、なんとかならないかな?!」
『ミラーがあるよ!』
「ミラー?」
『うん、ものを見るときに、いつも鏡に映してから見るという超能力さ!』
「それだよ!アオ。何でもっと早く教えてくれないんだ!」
『気がつかなかったよ、ごめん』
「よし、試してみるか・・」
早速僕は、ミラーの超能力を使った。
「よしアオ、どこからでもいいから、僕を殴ってみてくれ」
『よし、いくぞ!』
「おお、頼む」
『えーい・・』
「ん?左だな・・やあー」
やった、完璧にパンチが炸裂したな。
「・・あれ?アオ!」気絶しちゃった。
危ないところで巻き沿いをくうところだった。しかし、あの部屋から逃れるとは、つくづく運のいいやつらだ。まあ、地下の超最強ロボットが無事だったことはなによりだ。あと24時間!そうすれば、私は世界最強の科学者となる。
そうだ、超最強ロボットのネーミングを考えないとな!超最強・・メガキングとでも名付けようか。
・・トロの城・・
『翔太、ところで歳はいくつだ?』と王様。
「15才だけど」
『みんなは?』
「15才です」、「22才です」桃子ちゃんと美咲お姉さん。
『駿はいくつだ?』
「6才だよ」
『すまないな、大切な時間をワタシ達のために無駄にしてしまい』
「どうしたんだ、突然そんなことを?」
「無駄だなんて、そんなことないですよ、王様」
「そうですよ」
「ぼくも全然へっちゃらさ!」
『ありがとう。そう言ってくれると助かるよ』
タラスの偵察からゼウスが戻ってきた。
『やはり地下が怪しいな!それに、男たちが話しているのを聞いたんだが、どうやらあと24時間足らずで、超最強ロボットは完成するらしい』
『あと24時間だと!』
『時間がないな!』
「やるしかない!」
「そうね!最後まで諦めないでいきまそょう」
「よーしカメゾウ、ぼくたちもいくぞ!」
『OK』
『気を付けるんだぞ』と王様。
・・タラス・・
『地下にどう浸入するかだな』とポセイドン。
『また野獣が襲ってこないとも限らない』とゼウス。
「地下への入り口はどこなんだ、ゼウス」
『それがどうも細工があるらしい!』
『どんな細工?』とアオ。
『あるエリアに立つと、勝手に体が転送されるシステムだ』
「転送装置か」
「じゃあ、そこまでたどり着ければいいってことか」
『さあ、それはどうかな。おそらく何だかのかたちで、人物を識別しているだろうな』とポセイドン。
「人相とかかな?」と桃子ちゃん、。
「とにかく、空から様子をうかがってみよう」
「カメゾウ、お前はここで待ってて!空飛ぶの怖いだろう」と駿。
『うん』
僕達はカメゾウを残して、空に飛んだ。
『あそこの施設の一角に、メトロの入り口に似たところがあるだろう。あそこだ』
ゼウスの言う通り、そこに何人もの人が出入りをしている。しかし、ここからだと何を識別の対象にしているのかわからない。
「アオ」
『わかった!任せろ』そう言ってアオは姿を消し、偵察に行った。
『桃子ちゃんの言った通り人相だ。奧にモニターがあってそれで!』
「変装したぐらいではダメね」と桃子ちゃん。
「・・美咲お姉さんと桃子ちゃんは鏡持ってる?」
「手鏡ならあるけど」
「私もあるわ」
「よし、駿、カメゾウの出番だ!」
『翔太、どうするつもりだ?鏡なんかで』とアオ。
「つまり・・」
カメゾウにひとつ鏡をくわえさせ、奥のモニターの脇に待機させる。そして、向かってくる男の顔を鏡に映す。鏡に映った男の顔を、僕達が持つもうひとつの鏡に映して、識別モニターに向ける。識別装置は、その男だと認識して転送を開始!手に持つ鏡は素早く次の者にわたす。それを繰り返す。
「・・わかった?」
『翔太、うまくいくのか?』疑うゼウス。
『翔太・・?』
「翔太君・・?」
「たぶんうまくいく!!」
「カメゾウ、用意はいいか?」
『いいよ』どう見ても石にしか見えないカメゾウ。
「よし、一人目が来るぞゼウス」
『うん』
見えてきた。カメゾウが男の顔をとらえ、ゼウスがカメゾウの鏡をとらえ、ゼウスがモニターに鏡を向けた!
おっ、ランプが点灯した。成功だ!
ゼウスは素早く鏡を置くと、転送装置で姿を消した。




