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月の神のねらい

『うわっ、地震だ!』

「また噴火が始まったか。急いでガラス玉を見つけないと」

『うん、がんばろう』張り切るカメゾウ。

そして・・。

「あっ!これかなあ」と桃子ちゃん。

「どれどれ・・」

「ん?」駿も真剣な顔でのぞきこんでいる。

そーと砂をかき分ける桃子ちゃんと美咲お姉さん。

「あったわ!ガラスの玉」桃子ちゃんの歓喜。


ガラス玉の砂をおとし、キレイに磨いて・・。

「これだ!アオ、アカに連絡だ」

『わかった』

『よかった見つかって!でも、駿の透視の力を使えば、もっと早く見つかったと思うけどね・・』カメゾウのひとりごと。


『おお、第三のガラス玉が見つかったか。早速雷鳴の剣をお前達の所へ瞬間移動させよう。天空の神の後継者が願いをかければ、きっと雷鳴の剣が甦るはずだ!』


・・マリアナ海溝・・

『ポセイドン、ブルー達が第三のガラス玉を探し当てたそうだ』

『そうか!雷鳴の剣があれば、恐いもの無しだな』


『・・雷鳴の剣がどうかしたか』

『その声はサターン』とゼウス。

暗闇の中にサターンの赤い目が鈍く光った。

『現れたなサターン』

『サターン・・』悲しみを隠せない乙姫。

『乙姫、生きていたか』

『サターン、お願いだからもうやめて!』

『乙姫・・』

ポセイドンは不安を隠せない。そしてあのメッセージが頭をかすめた。


『太郎さんにわたしの気持ちを伝えます。 乙姫』


『まあいい、次に会った時は容赦しないぞ!』

そう言い残しサターンはまた姿を消した。


・・あの海岸・・

『雷鳴の剣だ!駿』

「うん」駿は雷鳴の剣を受け取った。

『駿、心を込めて雷鳴の剣の復活を祈るんだ!』

「わかったよ!」

「駿、頼むぞ」

「駿くん」


ガラス玉の前に立ち、雷鳴の剣を握りしめる駿。そして、静かに目を閉じた。


荒れ狂う火山の音も、大地を揺るがす振動も、駿の耳には届かなかった。

風の音も、波の音も何もない。

静寂だけが駿を包んでいた。


「蘇れ雷鳴の剣!!」

「・・あれ?おかしいなあ・・」

一緒に目をつぶって祈っていた僕も、駿の異変に目を開けた。

「ん?どうした駿」なんだか嫌な予感。

「ん・・ダメだ」

「駿、冗談はやめろよ!」

『翔太、駿は冗談じゃないみたいだぞ』とカメゾウ。

「何だって」

「翔太君」

『翔太、今、最悪の事が起きてしまったのかも知れない!』

「駿は、天空の神の後継者じゃない。後継者は浦島太郎ってことか!」

しょんぼりする駿。


『アカ、アカ、すぐ来てくれ!』

僕は、たまらずアカを呼び出した!


「アカ、これはどういうことだ?」

『・・・』

「駿は、駿は天空の神の後継者じゃないということか」

『・・・』黙ってうなずくアカ。

その事が何を意味することなのか、ここにいる全員が知っていた。


『翔太、翔太、雷鳴の剣の復活はまだか?』ポセイドンからだ。

『翔太、翔太早くしろ!』ゼウスからも。


天空の神ゼウスの後継者は、駿ではなかった。すなわち、あの浦島太郎だったということだ。しかし太郎はもういない。それは、雷鳴の剣の復活はあり得ないということなのだ。


「どうして、どうしてダメなんだ。あの時はちゃんと出来たじゃないか・・」と駿。

『駿・・』

「ブルー、どうして?」

『・・・』アオにも答えは見つからない。


「ゼウス、ポセイドン、雷鳴の剣の復活は・・叶わなかった!」

『翔太、どういうことだ!』


これで地球を救う唯一の望みが断たれた。セレーネを救うことも出来ない。

もう、これで終わりなのか。


・・マリアナ海溝・・

『乙姫、お前は竜宮城に戻るんだ。ここからは命がけの闘いだ』

『乙姫、そうした方がいい』

『いいえ、こんな私でも何かのお役にたつと、それに、私には最後までやらなければならない理由がまあります』

『乙姫・・』

『あの人をあんな姿に変えてしまったのは、私なのですから』

・・その乙姫の言葉で、ポセイドンはすべてを悟った。

『わかった。無茶はするなよ』

『ありがとう、ポセイドン』


『ワタシが先頭を行く』とポセイドン。

三人はマリアナ海溝を目指した。

1.000、2.000メートル・・太陽の光など届かない暗黒の世界。凶暴な顔の深海魚も目につく。そして幾隻もの難破船が、深海の怖さを教えている。


その時、ポセイドンの前に何物かが現れた。

『気を付けろ!』

ポセイドンの体になにかが触れた。その瞬間、体を電流が駆けめぐった。激しい電気ショックに、ポセイドンは一瞬、体に力が入らない 。

『大丈夫かポセイドン』

『ああ、大丈夫だ』


そして三人の背後からも。今度は一匹ではない、あとからあとから、深海魚の怪物だ!

それに気付いたポセイドン。

『ゼウス、後ろだ!』

ポセイドンは瞬時に後ろへ回り込み、 怪物達に衝撃波はを放った。

一瞬はひるむものの、またこちらに向かってくる。

そして、 怪物の電撃が次々とポセイドンの身体を襲った。

『ポセイドン!』乙姫は思わず悲鳴をあげた。

『くそー』

ポセイドンは気を失い、ゼウスに抱えられている。


『ここがお前達の墓場だ!』深海に不気味なサターンの声が響いた。


『ブルー、ブルー、ポセイドンがやられた』

『何だって・・』

「どうした、アオ」

『・・ポセイドンがやられた』

「えっ!」

「ポセイドンが・・」

「くそー、どうして甦ってくれないんだ。雷鳴の剣さえあれば、サターンなんかやっつけてやるのに」

『駿・・』カメゾウは、もう役に立たないはずのガラス玉をくわえ、そっと駿のポケットに放り込んだ。


『ゼウス、ゼウス、なんとか敵をかわして、ひとまず引き上げるんだ』

『レッドか。どうやらそれも難しそうだ』

『ゼウス・・』


『私がフリーズシャワーで怪物の動きを止めるわ』

『よし、わかった』

『そうはさせない!』

そしてサターンの目が光った。

『乙姫!』

ゼウスは乙姫をかばうように、サターンと向き合った。

『うおっ!』サターンが放った鈍い光のビームが、ゼウスの身体を貫いた。

『ゼウス!』乙姫の頬には、嘆きと哀しみの涙が流れた。


『サターン、あなたというひとは・・』

『ワタシは、ひとの心などとうに棄てた。唯一あるのは憎しみだけだ!』

『あなたの身勝手な行動が、どれだけひとを傷付けているかわかっているはずよ』

『それがワタシの楽しみだ』

『そんなこと許されない』

『では聞こう。あの時お前がワタシにした行為、ひとを哀しみのどん底に突き落とし、人生を奪った。それは許されると言うのか』

『・・・』

『言葉があるまい。これはワタシの復讐だ!』


『サターン、もうやめなさい!』

『うっ?』

『その声は、セレーネ!』

『乙姫、私のために悲しい思いをさせてごめんなさい』

『セレーネ、いつの間に』

『あなたから逃げ出すくらい簡単よ!サターン』

『何だと』サターンはセレーネのもとへ向かい、両方の腕をとり、締め上げた。

『うっ』

『セレーネ』

『乙姫、今のうちに逃げて!』


サターンの合図で、また深海魚の怪物が迫ってきた。

セレーネは、サターンによって、再びさらなる深海へと連れ去られてしまった。


乙姫は、怪物達に向け、フリーズシャワーを放ち凍らせた。時間稼ぎはできるはずだ。


・・あの海岸・・

『ゼウスもやられた』とレッド。

「ゼウスも」と桃子ちゃん。

「くそー!もう許さないぞー!!」

「駿、何をするんだ!」

「駿くん」


駿の怒りはおさまらない。

「絶対許さない!」

駿は、カメゾウをつれて、瞬間移動をした。

行き先は決まっている。マリアナ海溝だ!

「駿のやつ・・アオ頼む!」

『うん!』僕とアオもすぐあとを追った。


「レッド、私達も」と美咲お姉さん。

『いや、今はダメだ』


レッドは信じていた。駿が天空の神ゼウスの後継者だということを。第三のガラス玉を前にしても、雷鳴の剣は復活をすることはなかった。駿の思いやりを怒りに変えた、あの爆発的な感情こそが雷鳴の剣復活の根元だと。

ブルーがサターンにやられたとき、駿の感情は爆発し、結果、雷鳴の剣の復活をみた!

今回もそれと同等の、いやそれ以上の感情の爆発が必要だ。

幼い駿の心を痛め付けるようで辛いが、それしか方法はないと、あらかじめ考えていたのだ。


『乙姫様!』

『カメゾウ』

「こんにちは」

『この子は駿だ。ボクの友達さ』

「あっ!ゼウス、ポセイドン・・」

『傷は深いけど無事よ』

「くそー、何てことを」


僕とブルーは駿に追いついた。

「駿!」

「あっ、翔太、ブルー」

『ブルー』

『乙姫、お久しぶりです』


「カメゾウ、サターンを倒して、ブルーのママを助けるぞ!」

「駿、これ以上はダメだ!」

「翔太・・何でだよ」

「このままサターンの所へ行ったら、命は無いぞ」

『駿が手にしている剣はもしや・・』と乙姫。

「雷鳴の剣さ!これでサターンをやっつけるんだ」

「駿!」僕は駿の頬を叩いていた。

「なにするんだよ!翔太・・」


「乙姫、ゼウスとポセイドンは?」

『あなたが翔太?!』

「はい」

『心配ないわ。気を失っているだけです』

「よかった。キズの手当てをしないと。アオ、美咲お姉さんと桃子ちゃんをここへ」

『よし、わかった』


「そうだ、セレーネはどこに?」

『海溝の一番底。そこがサターンのあじとです』


「くそー!」それを聞いた瞬間、駿とカメゾウが消えた。瞬間移動したんだ、サターンの所へ。駿のやつ。

「アオ!」

『わかった』


僕は駿を追いかけようとした。その時だ・・。

『翔太、ブルー、駿を行かせてやってくれ』

「アカ!・・なぜだ!」

『このままだと駿がサターンにやられちゃうよ!』


そしてアカは僕達に、秘密を明かした・・。

「そんな無茶な!もし、もし失敗したら・・」

『パパ、そんなの駿がかわいそうだ!』

『わかってくれ・・そして、お前たちは駿の後ろから、見守ってくれ!』


アカは僕達に、とんでもないこなとを打ち明けた。

アカは、駿が天空の神ゼウスの後継者だということを確信ていると言うのだ。第三のガラス玉を見つけたとしても、あの爆発的な怒りのパワーがない限り、雷鳴の剣の復活はあり得ないことは、初めから予想していたと。

そして、駿のその怒りのパワーを最大限に引き出すため、ある仕掛けをしたという。

それが、セレーネだ!

駿の目の前で、セレーネがサターンによってやられれば、あの時と同じ状況をうみだすことが出来ると。

もちろん、サターンにとらわれているのはセレーネの偽者。コピーだ!

あまりにも駿の心をもてあそぶようなこの作戦に、心は痛んだという。

しかし、今となっては、僕もブルーもその作戦に乗るしかなかった。

駿、なんとか堪えてくれ!















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