ポセイドン登場
もがいても、もがいても、巨大ダコのあしに締め付けられ、吸盤が体のあちこちに吸い付いている。
気持ちを集中させようとするが、出来ない。強力な締め付けに、意識さえ朦朧とする。このままではやられる。
海の上では、巨大ダコとゼウスの激しい闘いが。
しかしゼウスの放つ必殺技は、ことごとく跳ね返され、防戦一方だ。このままではゼウスも危ない。
空中からは、鳥の群れが駿達を襲い続けている。
「くそー」駿は怒りを抑えられずにいた。
『駿』
「駿くん」
「美咲お姉さん、桃子ちゃん、ぼくの合図でバリアを解いて。翔太とゼウスを助ける!」
「危険よ!駿君」
このままでは僕たちは全滅してしまう。そしてついに、駿のいかりは頂点に達しつつあった!あの時のように・・。
「ワン・ツー・スリーでお願い!・・」
「わかったわ!」
駿の迫力に押しきられた格好の美咲お姉さんと桃子ちゃんだ。
「いくよ!駿くん、ワン・ツー・スリー」
バリアが解かれた瞬間、駿の放った一撃は、鳥の群れを吹き飛ばし、巨大ダコめがけて一直線に進んでいった!
駿の一撃が命中するその直前、巨大ダコの姿が消えた!
駿の強烈な光の魂をかわした巨大ダコは、再び現れ、ゼウスを襲い始めた!長いあしを回転させ、まるでチェーンソーのようにゼウスの身体を切り裂いていく。
『くそー、あの巨大ダコ、姿を消せるのか』とアオ。
「ぼく、翔太のところへ」駿は海へ飛び込んだ。
『駿』カメゾウもあとに続いた。
「駿くん、カメゾウ・・」
『ゼウスもこのままでは危ない。どうしたら・・』
海の中では、巨大ダコのあしが僕を締め付けている。
カメゾウが噛みついても、駿が叩いても攻撃は続く。
もう限界か。
「翔太!」
『翔太!』
駿とカメゾウの声が微かに聞こえる。
『ポセイドンよ、間に合ってくれ!!』そう神は祈っていた。
僕の意識も限界。その時だ、巨大ダコのあしに電流のようなものが走り、あっという間に僕の身体を解放した。
「翔太、しっかり」
『早くボクの背中に!』
カメゾウは僕を背負い海上に出た。
そのあとに続いて海から出てきた男は、そのまま飛び上がり巨大ダコの体を掴んだ。
そして激しい衝撃波が、巨大ダコを包み込んだ!
『ゼウス、大丈夫か!』
『ポセイドン、来てくれたのか』
『あっ、ポセイドン!』驚くアオ。
「ポセイドン?」
『ゼウス、巨大ダコにとどめをさすぞ』
『おう』
ゼウスとポセイドンの放った同時攻撃は、巨大ダコを捉え吹き飛ばした!
美咲お姉さんのおかげで、僕もゼウスも元気になった。
救世主のように現れた謎の男ポセイドン。
『ポセイドン』
『ブルー、久しぶりだな』
『どうしてここに?』
『頼まれたんだよ、レッドに』
「アオ、いったい誰なんだ?」
『ポセイドン、海の神さ。天空の神ゼウスの弟分ってとこかな』
「そうなんだ。さっきは助けてくれてありがとう」
『おやすい御用だ!』
『しかし、強い敵だった』とゼウス。
『うん、だがこれで終わりではないぞ』
『ああ』
『カメゾウも久しぶりだな!』
『ポセイドン、覚えててくれたの』
『ああ』
「知り合いなのか?ポセイドンと」
『太郎さんを竜宮城まで運んでいるとき、ボディーガードをしてくれたんだ』
『乙姫の頼みでな』
「そうだったのか」
「ポセイドン、浦島太郎を知ってるの?」と駿。
『ああ』
「この人だよね」駿は、絵本の浦島太郎を見せた。
『そうだ、この青年だ』
「ポセイドンは竜宮城に行ったことあるの」と桃子ちゃん。
『あるとも!ワタシの家だからな』
「ワタシの家って・・じゃあ乙姫は・・」
『ワタシの奥さんだ!』
「えー!!」美咲お姉さんも、桃子ちゃんも、もちろん僕も駿もビックリだ。
『ポセイドン、ボクのママ、今どこにいるか知らないか』
『レッドにも聞かれたが、知らないんだ』
「最近、サターンが海を荒らしてるようだけど」
『ワタシも注意深く監視してるんだが、なかなか尻尾が掴めない。さっきの巨大ダコはサターンが造った化け物だ!』
「サターンは、海のどこかを拠点としているんだろうか!」
『おそらく。そしてセレーネもそこにいる』
「うん」
『日本の一番南、沖縄の離島はサンゴ礁で有名なのは知ってるだろう』
「知ってるわ、青い海にサンゴ礁が広がって、とてもキレイなところよ。色とりどりの魚たちもたくさんいて神秘的で、海の楽園ね・・」
「美咲お姉さん、行ったことあるの?」
「残念だけど・・テレビで見ただけ」
『そこのサンゴが今、ものすごい勢いで減少し、消滅してしまっている』
「えっ、あんなにキレイサンゴが」
『近年は海水温の上昇で、サンゴが減少傾向だが、それだけではとても説明のつかない規模だ!』
「そこが怪しいと言うのか、ポセイドン」
『確認する必要はあると思う』
「もしサターンの仕業なら許せないわ!大切な海を、キレイなサンゴ達を破壊するなんて」
『ポセイドン、案内してくれるか!』
『よし、また巨大ダコが現れるかもしれない。油断するな』
僕達はこうして、沖縄の離島、サンゴ礁に向かった。僕達が沖縄の離島に向かう間、幸いにもあの巨大な生物が襲ってくることはなかった。
『そろそろ着くぞ。世界一のサンゴ礁だ』
僕達は海に潜っていった。
「わー、キレイ!」
「本当、ステキね!」
『この先だ、サンゴがやられているのは』
進むこと数百メートル。そこには異様な光景が広がっていた。
辺り一面のサンゴが真っ白に変化している。さっきまであんなにいた魚たちも、急に姿を消した。
『ポセイドン、この一体だけ水質が変化しているようだ!』
『ああ、極端に酸性に片寄っている』
「どういうことだ?」
『サンゴが生息するには、それに適した水質と水温が不可欠だ。ここでは、何だかの理由で水質が酸性に片寄り、サンゴに強いストレスを与えている。サンゴは自分で動いて、理想の海域に移動することはできない。この環境が続けば、やがて訪れる死を待つだけだ』
「そんな・・」悲しむ桃子ちゃん。
「これが自然の力ではないというのか?!」
『そうだ』
「サターンの仕業ね!・・」
その時だ。
『何をしに来た』
「サターン、やはりお前の仕業か?」
『姿を現せ!』
「サターン、お前の目的はなんだ?」
『聞きたいか・・宇宙征服だ!』
『なんだと、ふざけるな!』アオの怒りの叫びだ。。
『そうそう、お前のママを預かってるぞ。ママが大切なら、これ以上ワタシの邪魔はしない方がいいな』
『くっ!』
『この海域での仕事は終わった。またどこかで会おう』
そう言い残し、サターンは姿を消した。
その代わりに現れたのは巨大なカニだ!
『来たな!』
『ゼウスいくぞ!あのハサミは強力そうだ、気を付けろ』
おそろしくでかいハサミだ。岩でも簡単に砕いてしまうだろう。
『翔太、みんなを頼むぞ』
「わかった」
その時、巨大ガニの目がこちらを向いた。そして僕達を捉え攻撃の構えだ。
『翔太、気を付けろ!』
『うわー』
咄嗟にカメゾウは僕のうしろに隠れてしまった。
その二つの目は赤紫に光り、一気にビームを放ってきた。何とか避けたが、海中では圧倒的にこちらが不利だ。
ゼウスは巨大ガニに電撃波をおみまいした。一瞬ひるんだすきに、今度はポセイドンの一撃!しかし、効き目はない。
「ゼウス、ポセイドン、その両方のハサミだ。そこが弱点だよ!」
いいぞ駿、透視でアイツの弱点を見つけたな!
『よし・・翔太、コイツの動きを止めてくれ。その間にあのハサミを打ち砕く!』
「よし、いくぞ」
僕はサイコキネキスで、巨大ガニの動きを止めた。
『ゼウス、右を頼む』
『わかった』
ポセイドンの衝撃波が左のハサミを、ゼウスの電撃波が右のハサミはをそれぞれ砕いた。
「やったあー!!」駿のおたけび。
弱点をつかれた巨大ガニは、戦意を失いあえなく退散していった。
「ポセイドン、あのサンゴたち、もとには戻らないの?」と美咲お姉さん。
『海流がもとに戻り、よどみが無くなれば、あとは時間とともに、ゆっくりだけど元のキレイなサンゴ礁に戻るはずだ』
「良かった」
それにいてもセレーネはどこなんだ。
とにかく竜宮城に行って、乙姫に話を聞かないと・・。




