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ボクの名前はブルー

「凄かったねー!翔太くん」桃子ちゃんはまだ興奮ぎみ。

「うん、あんなの見たことないよ」

「ねー翔太、さっきの爆弾!?」駿がやっとしゃべってきた。

「違うよ。雷、雷が落ちたんだよ」

「ふーん。駿くん怖かったなあ」

駿の顔はまだ青ざめている。

「みんな怖いわよあんなの。駿くんだけじゃなくてさ」

そう、桃子ちゃんは雷が落ちた時思わず・・僕の腕にしがみついてブルブル震えてたんだもんな!その僕も相当怖かったんだけど。


車の中で豪雨が過ぎるのを待つ間、僕は駿が遠くの一点を、ずーっと見つめているのに気づいた。

「どうかしたのか駿?」

「うん!さっき雷が落ちたところがピカピカ光ってたんだ。本当だよ」

「え?」そんなことで、駿が嘘などつかないことを僕は知っている。

「どうしたの翔太くん?」美咲お姉さんが僕らに聞いてきた。

「うん・・それがね、駿のやつが『光』を見たって言うんだよね。あの雷が落ちたところに」

「光?・・」


10分程で雨はやみ、またギラギラの太陽が顔を出してきた。車も駐車場もびしょびしょ!辺りには水溜まりも出来ている。

「ねー翔太、行ってみようよ、あの光ってたところ」

駿はやや興奮ぎみだ。

「そうだな、確かめてみようか」

僕たちは車を降りて、海岸に向かった。

こんな明るい時刻に、まさかお化けもないだろうからな・・。

ゆっくり近づいて行くけど、駿が見たというその光は全く現れない。やっぱり錯覚だったのか・・。


その時・・「ワンワン」

ラッキーが急に吠えたかと思うと、ある方向に一目散に走り出した。

「おい、ラッキー・・」

僕らも慌ててラッキーの後を追った。

「ワンワン」砂に鼻を近づけながら、何やら臭いを嗅いでいる。

「ワンワン」そして今度は、懸命に穴を掘り出したラッキー。

何かあるのだろうか・・!?

「ワンワン、ワンワン・・」

ん?何か見つけたのか。鳴き方が激しいぞ!

「ラッキー、何か見つけたのか」

そう言いながら、僕らはラッキーのもとに急いだ。


今度は駿がラッキーの掘っていた穴を堀りはじめた。小さな手で必死に!

「駿、気をつけろよ」

ラッキーと同じように、両手で砂をかき出している。

そしてついに・・「あった!!」

駿の大きな叫び声。

「ほら、翔太見て!」

そう言って駿が手にしてるのはトランプのカード・・?


「駿くん、よく見せて」桃子ちゃんが覗きこむように駿の手元を見ている。

「トランプのカードかな?」桃子ちゃんも僕と同じ意見のようだ。

「裏には何か描いてあるの」興味津々の美咲お姉さん。

そう言われて、駿がカードを裏返した。


「トランプのジョーカーかな?・・にしてはへんてこ」僕の素直な感想。

「ジョーカーにしては、なんかカワイイ顔だね」美咲お姉さんのやや意外な感想。

「カワイイっていうか・・カッコ良くない!」桃子ちゃんのイタズラな感想。

「・・ブサイク」駿の正直な感想。


「でも、これが光の正体かな?全然光ってないし、砂の中にあったんだし・・」

僕は率直な疑問を口にしてみた。

「んー・・そうだね。けど他には何もないんでしょう」

さすがの美咲お姉さんも、首をかしげている。


やっぱり錯覚だったのかな?太陽の光がガラスとかに反射してたのかもな・・。

しかし、辺りを見回しても、ガラスとか鏡なんて落ちてないよな・・。


「なーんだ、こんなカードじゃ要らないや。駿くん、もっとカッコいいのいっぱい持ってるし」

そう言いながら、駿はカードを無造作に捨ててしまった!

・・・『痛っ』

「ん?今何か聞こえなかった」

確かにひとの声が聞こえたようで、僕はみんなに聞いた。

「うんん、何も聞こえないわよ!どうして」

皆には聞こえなかったらしい。

「いや、ならいいんだけど・・」んーん、変だな。


・・・『こら待てー!』

「うわっ!やっぱり聞こえる」

僕はそーっと後ろを振り返った。


光ってる!あのカードが・・・。

僕は声すら出すことも出来ず、光を見つめながら固まってしまった!

「翔太くん・・」僕の異変に気づいた美咲お姉さんが、声をかけてきた。

「翔太くん」

「翔太」

そしてみんな一斉に、僕の視線の先に目をやった。

「えっ、うそー!」

「ワンワン、ワンワン」

そしてみんな固まってしまった!

「ウーッ」うなり声をあげるラッキー。

僕が聞いた声は、あの光から聞こえてきたんだ・・。


僕たちは恐る恐る近づいてみる。

『駿、痛いじゃないか!ボクを投げつけるなんて!』

カードがしゃべった。

「ワンワン、ワンワン」

そして、カードがへんてこな顔をこちらに向けたまま、ゆっくりと宙に浮かんでいった。

『あっ翔太、今ボクの顔へんてこって思ってた』

なんだこいつ、僕の心がわかるのか?

『ああ、わかるとも。名前は橘翔太。でこっちが橘駿。それと桜井桃子ちゃんと吉岡美咲ちゃん』

「私達の名前も知ってるの!?」

驚きを隠せない桃子ちゃん。

『もちろんさ。ボクはキミ達の親みたいなもんだからな・・!」

なにテキトーなこと言ってるんだこいつ。

『テキトーじゃないさ』

「うっ」・・いちいちひとの心を読むな!

「だいたいお前は何者なんだ。名前は?・・」

『ぼくの名前はブルー』

「ふーん、アオね!」

『アオじゃない、ブルーさ!』

なんかわかんないけど、変なやつと出会っちゃったな。


このブルーとかっていうやつの容姿を解説すると・・

年齢は3才くらい!

頭がでかくて目もでかくて。

人間との最大の違いは髪の色が青、そして逆立ってる。

もしかしたら、こいつの名前はこの髪の色からとったのか?だとしたら単純だね!

そして性格は生意気ってとこだな・・。


それにてもアオのやつ、何でカードなんかになっちゃったんだ・・?


「ねー翔太、ブルー君どうする?」

「どうするって・・また砂に埋めとけば」

「・・ふーん、わかった!」

僕の言うことを素直に聞いて、駿はカードをもとの穴に放り込んだ。

『こらー駿、ボクを穴に戻すな!』

「えっ・・」

アオが今度は僕の所に飛んできた。なんだこいつ飛べるんじゃんか。

『翔太、良いこと教えようか』

ん?怪しい。

「なんだよ、良いことって」

『聞きたいか』

「・・いや別に」


「そんなことよりアオ、おまえにひとつ聞きたいんだけどさ」

『なんだ、やっぱり聞きたいんじゅんか』

「違うよ。おまえさ、美咲お姉さんと桃子ちゃんのことは゛ちゃん゛をつけて、何で僕と駿は呼び捨てなんだよ。おかしいじゃんか」

そういうのを人間界では差別って言うんだ!

『おかしくなんかないさ。翔太も駿もボクのことをへんてこだとかブサイクとか言ったじゃないか。それに比べ美咲ちゃんや桃子ちゃんは、カワイイとかカッコいいって言ってくれたもんね。だからさ・・それに男の子だし!』

「なんだそれ」適当な理由つけて。

『それより翔太、ボクをアオって呼ぶのやめてくれよ』

「何で?ブルーだからアオ、おかしくないさ。ここは日本なんだからな!」

だいたいブルーって顔か。アオだよなどう見ても。

『なんか言ったか・・』、「いや」


「ねーねー、ブルー君、ブルー君は何するひとなの?」

『駿達をこの世に送り出す!それが仕事・・というか得意技かな』

「駿くん達って、じゃあ私や桃子ちゃんや翔太君も?」美咲お姉さんの当然の質問。

『そうだよ』

「そうだよってアオ、そんなこと信じられるわけないだろう。僕達はみんなお母さんから生まれるんだからな」

『そうだよ』

「この野郎!そうだよ、そうだよって・・」

『だって両方正しいんだもん』

「・・んー、なんかさっぱりわからないわ」と首をかしげる桃子ちゃん。


「ねー、ブルー君何歳なの?」

『ボクは1014才』

「1014才!」僕より1000才も上・・そんなバカな。見た目3才のガキじゃんか。

『嘘じゃないさ翔太!ボクは赤ちゃんからおじいちゃんまで、自由に姿を変えられるんだ』

「なんだって。だったらおじいちゃんになってみろよ」

『それが今はダメなんだ。このカードに閉じ込められちゃってるから。だからここからボクを出してくれよ』

「出すって?」

『翔太達が力を合わせてくれれば出来る!』

んー・・こいつの言うこと、信じていいものか。それにここから出て自由の身になったら、何をしでかすかわからないからな。

『何も悪いことはしないよ。信じてくれよ』

また僕の心を読んでやがる・・。そんなだから信じられないんだ!


僕達はアオのことについて話し合っていた。

「ねーどうするの翔太君」

「ん・・・?」

「話を聞いてる感じだと、悪いひとには思えないけどなあ」

美咲お姉さんの言うように、悪いやつではなさそうだけど・・。

「翔太、ブルー君をあそこから出してあげようよ!一緒に遊んでくれそうだもん・・」

「そうだなあ・・」

僕達がこうして話し合っている間、アオはラッキーと楽しそうにじゃれあっている。ラッキーが警戒心もなく、あんなに楽しそうにしてるってことは、意外といいやつなのかもな!?


「ラッキー!」

僕はラッキーを呼んで、アオのことを聞いてみることにした。

「ラッキー、おまえはあいつのことどう思う。信用できるやつか・・?」

「ワンワン、ワンワン!」

激しくしっぽをふってる。OK ってことか。


「出してやろうかあいつを・・」

「うん!」みんなの賛成をもらって、僕はアオに近づいて行った。


「で、どうすればいいんだ!」

『ボクをここから出してくれるのかい?』

「ああ!」

ラッキーに礼を言うんだな。


『まずボクのカードを、ボクを上にして置いてくれ。次に翔太、駿、桃子ちゃん、美咲ちゃんの順に右回りに手をつないで、ボクを囲むように円をつくるんだ』

僕達はアオの言う通り、カードを真ん中に置いて円をつくった。

「これでいいのか?」

『ああ。そして目を閉じて呪文を唱えてくれ!みんなでな』

「呪文を・・」

『ブルー復活』

「なんだそれ?!そのままかよ・・」

『うるさい!つべこべ言わずにやってくれ」

「もう、仕方ないな。じゃあみんないくぞ。駿も準備はいいか!?」

「おう!」

「いいわよ。こっちも準備OK よ」

「さあみんな、目を閉じて・・・」

心をひとつに!呪文を唱えるぞ。どんなことが起こるのか。もうやけっぱちだ!


僕達は手を繋ぎ、中央のアオのカードを見つめ、そして静かに目を閉じた。

そして呪文の言葉『ブルー復活』と声を合わせた。

「・・ブルー復活」


その叫びから何秒たったのだろう。僕のまぶたは眩しい光を浴びて、オレンジに輝いた。

ゆっくりと目を開けると、アオのカードは太陽より眩しいほどの光を放って、とても直視することは出来ない。みんなも眩しさを必死で堪えている。


眩しさのなか目をわずかに開けると、真っ白な光の塊はバスケットボールほどの大きさになり、ゆっくりと浮上しているところだった。

「駿、大丈夫か?」

「うん、平気だよ」

「ワンワン、ワンワン」興奮して駆け回るラッキー。

光の塊はどんどんどんどん上昇してゆき、10メートル、いやもっと高い所まで!

まるで太陽が二つ、砂浜、海そして僕達を照らしている。

僕達はまだ手を繋いだままだ。影は真下に二つ出来ている。


そして、1分、2分、3分・・光は徐々に弱まり、ついにひとの形が現れた。

「アオだ!」

「あー・・」

「ワンワン、ワンワン」

アオははゆっくりと降下してくる。そして僕達のつくる輪の中に降り立った。若干熱を感じる。

『サンキューみんな・・』

「ワンワン、ワンワン」大喜びのラッキー。


背は駿と同じぐらい。髪はやはりブルー。肌の色は人間並み。瞳は薄めのブラウン系・・。

「はじめまして、ブルー君」駿のご挨拶。

『駿、゛君゛はいらないよ。ブルーって呼んでくれ』

「わかった。ブルー」

『ありがとう。よろしくな駿。翔太も桃子ちゃんも美咲ちゃんも、どうぞよろしく!』

「よろしく、ブルー」

「よろしくな、アオ!」

『ちえっ・・』


「そうだアオ、早速おじいちゃんの姿になってみてくれよ」それが約束だもんな。

『おやすい御用さ』

そう言ってブルーはその場でくるりと一回転!

「あっ!」

アオは、あっという間にしわくちゃな顔に変身してみせた。あいつの言ったことは本当だったんだ。

『へへえ、これは90才のボクさ』

「他にどんなことが出来るんだアオ」

『それは徐々に・・』

ついにカードから抜け出し姿を現したアオ。それにしても、こいつの正体はいったい・・・。


「アオ、お前はいったい何者なんだ?どこから何の為にここへ」

『じゃあ、説明するよ。ボクは月から来たんだ』

「わあー、かぐや姫みたい!」桃子ちゃんは女の子らしくそう言うけど、かぐや姫はないだろう。

『かぐや姫はボクのママさ!』

「えーっ!!本当なの」

なにー!ボクのママだって・・。

「じゃあパパは?」よくぞ聞いてくれた駿。

『月の神様だ』


アオが神様とお姫様の子供だって!?だとしたら特殊な能力を持っていても不思議はないけど・・あやしいな。

『翔太、今ボクを疑ったろう』

「ひとの心を勝手に読むな!」

『違うよ。顔に描いてあるの』

「えっ・・」


「ブルー、あなたどうしてカードなんかになってたの」僕と同じ疑問を美咲お姉さんは聞いた。

『閉じ込められてたんだ。サターンのやつに』

「サターン?名前からして悪そうな感じだな」

『うん。ボクのパパもママも大昔、今のボクのようにあるところに閉じ込められていたんだ。そして二人とも、ボクのように人間に助けてもらった』

「人間に・・どう言うこと?」

『桃子ちゃんは、かぐや姫がどこから現れたか知ってるでしょう?』

「えっ・・かぐや姫は竹の中からだよね!」

『そう、ママを竹に閉じ込めたのがサターンさ』

「なるほどね!じゃあアオ、神様の方はまさか・・桃太郎?なんてことないよな」

『正解!』

「えーっ!!」


「ねー、ブルー、お月さまにはうさぎさんがいるんでしょ?パパが言ってたもん」

『残念ながら駿、うさぎは月にはいないんだ。あれは人間が勝手に想像しているだけ。日本では月の陰でできた模様が、うさぎが餅をついてるなんて言ってるけど、他の国ではそれがロバだったり、女の子の顔だったり、まあ色々なんだよ』

「なーんだ、うさぎさんいないのか・・いつか会いに行きたかったのになあ。ロケットでさ!」

『ゴメンよ駿』

ゴメンなんて、いいとこあるじゃんかアオのやつ・・。









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