ガラス玉
それから、アカ達は月に帰っていった。
『駿の持っていたあのガラス玉なんだが、以前どこかで見たような気がするんだ』
『レッド本当か。それはどこで?』
『それが思い出せない。ゼウスは見覚えないかあのガラス玉』
『ない』
・・地球では・・
「しかし、駿君がサターンを倒しただなんて驚きよ」
「そう、桃子ちゃんの言う通り。私も見たかったな、駿君がサターンを倒すところを」
「でも、駿くんもよくわかんないんだ。ブルーがやられて、悔しくて悔しくて!あとはおぼえてない」
急に激しい雨が降りだしてきた。
「急にすごい雨ね!」と桃子ちゃん。
外をのぞくと、空は真っ黒な雲。そして雨粒が激しく窓をたたいている。
「夕立だから、すぐおさまると思うけど」
「遠くの方で、雷が光ってるね」
次第に雷は近くなり、激しい稲妻と雷鳴を轟かせた。
『ゴロゴロ・バリバリバリ!!』
「きゃあー」美咲お姉さんの悲鳴。
「うわ、激しいな!」
『ゴロゴロ・バリバリバリ!!』
「ん?今何か光らなかったか!」
「稲妻よ!ほらまた・・」意外と怖がりな桃子ちゃん。
『ゴロゴロ・バリバリバリ!!』
「いや、雷じゃなくてこの部屋の中でだよ!」
「部屋の中で・・」
ん?まただ・・
何が光ったんだ?外の稲妻じゃない。確かにこの部屋の中だ。
『ゴロゴロ・バリバリバリ!!』
また光った・・あれだ!駿の宝箱。
「駿、宝箱をここに置いてくれ」
「えっ?うん」
駿は宝箱を棚から下ろし、床においた。
「ちょっと見ててよ、みんな!」
八つの瞳が宝箱を凝視した。
『ゴロゴロ・バリバリバリ!!』
「あっ、わずかに光ったわ!」
「うん!私にも見えた」
ブリキの宝箱がわずかに光を放った。
あのガラス玉だ。
あのガラス玉が、雷鳴に合わせるように光っているんだ!
「駿、宝箱のふたを開けて・・」
「わかった」
色々あるおもちゃの中に、あのガラス玉もあった。
『ゴロゴロ・バリバリバリ!!』
「わあー、眩しい!!」
雷鳴に共鳴してるんだ。
まるで生きてるようだ。
まぶしすぎて直視出来ない!
・・月では・・
『んー、思い出せん』
『まだ考えていたんですか』
『気になるんだよ』
『それにしても、ブルーは、かわいそうなことをした。女神もさぞ悲しがっていることでしょう』
『そうだな・・ん?ゼウス、今なんて言った?』
『えっ?』
『誰が悲しいと・・』
『・・女神ですか』
『そうだ!女神だ』
『女神の首飾りだよ!あのガラスの玉と同じものを見たのは』
『女神の・・。では、天空の神ゼウスは、もうひとつのガラスの玉を女神に授けたということですか』
『そういうことだ!』
僕はテレパシーでアカを呼び出した。
「アカ・アカ聞こえるか」
『おっ、翔太か。丁度いい、みんなでこちらに来てくれ。ガラスの玉を持ってな』
「どうしたんだアカ?こっちも大発見だ!」
『ほお、楽しみだな・・では、後でな』
「月まで来いってさ!ガラス玉をもって。なんか興奮ぎみだったから、アカの方も何か見つけたのかもな」
「よし、さっそく準備して行きましょう」
「よーし、出発!」
「駿、宝物忘れるなよ」
こうして僕達は、再び月へと向かった。
月ではいったい何があったんだろうか?あのアカの興奮した様子だと、月でも何やら大発見があったに違いない!とにかく急ごう・・。
そして・・
『おう、来たかみんな!』
「アカ、何かあったのか?」
『もうひとつのガラスの玉の持ち主がわかったんだ!』
「えっ?本当」一番驚いたのは美咲お姉さん。
『うん、女神だ!女神の首飾りだ』
「女神だって。アカ、何で今まで気がつかなかったんだ!?」
『すまん。それより女神のいるレオン彗星に急ごう』
「そうだな」
・・レオン彗星・・
数日前に激しい闘いがあったレオン彗星。それが嘘のように、今は静かな時を刻んでいる。
『さあ、女神のところへ』
「ああ!」
ガラスのケースに横たわる女神。
その胸元には、確かに駿が持ってるガラスの玉と同じものがあった。
『やはり同じものだ』
『間違いないな!』
「アカ、駿の方のガラス玉なんだけど、夕方の雷の時、すごい光を放ったんだ。」
『本当かそれは?』
「ああ、雷鳴が轟く度に、まるで生きてるみたいだった」
『雷鳴かあ』とゼウス。
「見せてやりたいけど、また雷鳴が轟かないとな」
『稲妻ならワタシに任せろ!』
「ゼウスが・・あっ、なるほど」
『よし、さっそくやってみてくれゼウス』
「駿、ガラス玉を床においてくれ」
「うん」
『よし、少し離れてろよ』
そう言うと、ゼウスは上空に指をたて、集中した!
『ゴロゴロ・バリバリバリ!!』
ゼウスは天空に激しい稲妻を轟かせた。
そしてガラス玉は、雷鳴に共鳴しまぶしい光を放った!
激しい光の放出を繰り返すガラス玉。しかしそれ以上の変化が起こることはなかった。
『これ以上のことは起こらないようだな』
「うん」
『それに、女神の方のガラス玉には何の変化もない』
「なぞなぞみたいだね」と駿。
「そうだ駿君、ガラス玉を透視してみたら。何かわかるかもよ」
『そうだな、駿、頼む』
「うん、わかった」
そして駿は、ガラス玉を透視した。しかし・・
「ダメだ、なんにもない」
「そっか。駿の透視でもダメか」
『女神のガラス玉が雷鳴に反応しないのは、やはり超合金クリスタルのせいだろうか』
『おそらくそうだろう』とゼウス。
「でも、この超合金クリスタルは、雷鳴の剣がないと壊せないんだろう!」
『翔太の言う通りだ』
「だけど、雷鳴の剣は、女神のガラス玉がないと手に入らないんでしょ!」
『美咲の言う通り』
「結局のところ、どうにもならないってことじゃあないか」
『今のところはな・・』
「困ったわね」と桃子ちゃんもお手上げだ。
「駿くんも困ったなあ」
「こんなときアオがいてくれたら、きっといいアドバイスをくれただろうな・・」
ん?何かあるな・・。
ガラスのケースに隠されるように、地面に何かが・・。あのときと同じ場所、アオだ!
僕は必死で地面を探った。
そこには二枚にちぎれた無惨なカードが・・。
「みんな、これ!・・」
「あっ、ブルー」
『ブルーよ』
『翔太、どこにこれが?』
「サターンと闘った時と同じ、ガラスのケースに隠されるように落ちてた」
『そうか』
「でも翔太君、それっておかしくないかな?確かブルーがサターンにやられた時は、ここからだいぶ離れた場所だったわ。それがなぜ、ケースの脇に・・」
「そう言われてみると、美咲お姉さんの言う通り、確かに距離がありすぎる!」
「アオはこんなことを言ってたよな。サターンはアオに強い殺意を向けてきたけど、途中でそれを止めたって。サターンがなぜ途中でアオへの攻撃を止めたのか。前にも話し合ったけど、結局確かな答えはわからなかった」
「サターンは、雷鳴の剣を私達が手にすることを一番恐れていたのよね」
『もしかしたら、ブルーの命と雷鳴の剣には何か深い関係があるんじゃ・・』
「どんな関係だ?ゼウス」
『ブルーの死を一番悲しむのは母親である女神だ。その女神は雷鳴の剣に関係してるガラス玉を持っている・・』
「その悲しみが雷鳴の剣を甦らせると言いたいのか!?」
『ああそうだ。そしてガラス玉は対となるもうひとつのガラス玉の元へ、雷鳴の剣を導く・・』
「でもサターンはアオを倒したんだ。つまり今の仮説がが正しければ、雷鳴の剣は僕達のところに導かれるはずだぞ」
『しかし手に出来ていない。これはどう説明するんだ・・』と少しなげやりのアカ。
「じゃあ、ブルーは死んでないんだよ!」と鋭い指摘の駿。
「そうかアオは生きている!?」