勇者復活
そして、レオン彗星から僕達の姿は消えた。
『おのれ、バリアの外に脱出したか地球人め。厄介なことにならなければいいが・・』
「・・ん?」
『気がついたか翔太』
「あっ、アカ!・・ってことはここは月なのか」
『そうだ、みんなも無事さ』
「美咲お姉さん、桃子ちゃん、駿・・」
「うーう、翔太君」
「翔太・・」
『みんな大丈夫か』
「あっ、レッド。じゃあ成功したんだね!瞬間移動」
『うん、よくやったな駿!』
「そうだ、アオはどうなったんだ?」
「まだレオン彗星だ。バリアが破壊された時、一瞬テレパシーが通じたんだが、そのあとは・・』
「ブルーは死んだりしないよねレッド」心配そうな駿。
『きっと大丈夫だよ・・』
「待っててよブルー、きっと助けるからね」
「そうさ、きっと助ける!」
「そうね、きっと」
「よし、アカ、早く勇者を復活させよう!」
『うん、一緒に来てくれ』
「アカ、勇者って名前はあるのか?」
『名はゼウス』
「ゼウス、カッコいい名前だな」
『正確に言うと、天空の神ゼウスを真似たサイボーグだ』
「サイボーグだって・・」
『知っての通りワタシ達は、敵と闘う能力に乏しい。その為、我々の守り神として造ったサイボーグだ・・ワタシは桃太郎として地球人に助けられて以来、幾度となく地球と月を行き来していた。そこで人びとの優しさに触れるのが、嬉しくてな』
「そうだったんだ」
『その時、一人の少年に出会った。原因不明の病にかかり、独り、命の尽きるのを待つだけだった。ワタシはその少年を月に連れ帰り、新しい命を授けたんだ。サイボーグという形でな』
「ということは、もとは人間・・」
『うん、それが善の心の源だ』
僕たちは、地球から見て裏側に当たる場所に移動していた。
『よし、着いたぞ!この山だ』
確かに圧倒される高さだ。
『一刻を争う、休まず行くぞ』
「わかってるさ、そんなこと」
『では、山に向かって一列に並んでくれ。そして手をつなぎ、思いをひとつにするんだ!』
そう、僕達の仲間アオを助け出すんだ。テレパシーで心を通わせ、シンパシーを感じ合う。思いはひとつだ、アオを、アオを助けるんだ!!
すべてが無になった。今だ・・。
『さあみんな、唱えるんだ勇気復活を』
「勇者復活!!」
すると静けさのなか、山はまぶしい光を放ち始めた!
そしてまぶしすぎる光が山全体を覆い隠したとき、地鳴りと共に山に一つの亀裂が入った。
やがてその亀裂から真っ白の光の魂が飛び出し、宙をゆらゆらさまよい始めた。
そして、その魂は静かに下降し地面に接した。
地鳴りは止み、ただただまぶしい光だけが、僕達を捉えている。
そして光は徐々に弱まり、そこに一つの生物を産み落とした。勇者だ!
『長い眠りからさめ、勇者ゼウスがついに復活した』興奮する月の神。
「アカ、あれが勇者なのか?」
『いかにも!』
「ただの少年じゃないか!年齢は僕と同じぐらいの」
『外見は変えてない、元の人間のままだ』
「あっ、なるほどね」
『外見は人間でも、破壊力は底知れぬ・・』
「翔太、勇者って翔太の友達なの?」
「なんかそんな感じだな」
「同級生とか」と美咲お姉さん。
なんかこう想像とギャップがありすぎるんだよな。
『勇者ゼウス・・ゼウス・・わかるか?月の神だ』
アカはテレパシーで勇者に呼び掛けている。
そして勇者は、静かに目を開けた。
『君たちか、ワタシを呼び起こしたのは!?』
「・・」
『何を怖がっている、翔太、駿、美咲、桃子』
えっ、僕達の名前を知ってるのか。しかも呼び捨て。
「君がゼウスか?」
『そうだ』
「君の力を借りたい。友達のアオを助けたいんだ!」
『わかってる、君たちの心は解析済だ』
「じゃあサターンを倒してくれるのか?」
『サターンは手強い相手だ!ワタシだけが闘っても勝負はつかない、互角の戦闘能力だからな』
「じゃあどうしたらサターンを倒せるの」
『最後は君たちの友情の力さ!』
勇者が僕達と変わらない少年だなんて。本当にあのからだで、サターンと互角に闘えるのだろうか。でも、今は彼を信じるしかない。勇者ゼウスの本当の力を。
それに彼は言っていた。最後は僕達の気持ちが決め手となるんだと。
アオ、今行くぞ!
レオン彗星はどんどん太陽に近づき、ハッキリと尾をひきはじめた。時間がない、急がないと彗星にいるアオも女神も吹き飛んでしまう。
『あの彗星のバリアだが、ゼウス、なんとかなるか!?』
『バリアといっても、頑丈な物質で覆われてるわけではない。ある周波数の超音波で攻撃すれば、バリアの効力は消滅するはずだ』
『問題はそのあとか・・』
「うん、サターンを倒すだけじゃなく、アオと女神を救出しないと」
「ブルー大丈夫かなあ」
『駿、ブルーは大丈夫さ。必ず助け出すよ』
「うん」
『ところ,で翔太、彗星で女神は見たのか?』
「うん、ガラスのケースに入れられてたよ」
「なんだか眠っているようだったわ」と桃子ちゃん。
『ゼウス、ガラスのケースとは・・』
『神の想像どおり、おそらく超合金クリスタルだろう』
『あらゆる魔術を跳ね返すというあのクリスタルか』
「なんなんだ?その超合金クリスタルって」
『いかなる攻撃でも跳ね返されてしまう』
「じゃあ、ゼウスでも壊せないってこと」
『美咲の言う通りだ』
『ゼウスよ・・』
「ケースが壊せないなら仕方ない、取り敢えず瞬間移動で月に移すしかないか、手段が見つかるまで・・」
『それがダメなんだ』
『何でだアカ?』
『超能力も跳ね返してしまうんだ』
「つまり手段がないってこと!?」
『・・』
そして、アカが静かに語り始めた。
『ただひとつだけ、その超合金クリスタルを砕くことの出来る武器がある。雷鳴の剣だ。天空の神ゼウスが用いたとされる天地最強の武器!』
「なんだ、だったらそれを使えばいいじゃんか」
『それは無理だ』
「何で」
『天空の神ゼウスは、もうその剣を持ってはいない。彼が唯一認めた後継者に授けたとされる』
「後継者・・だったらここにいるじゃんか、ゼウスが」
『残念ながら、彼はワタシが造ったサイボーグだ。後継者ではない』
「じゃあ、誰なんだ後継者って」
『言い伝えでは、宇宙の流れをも支配する、最強の超能力者だと言うことだ』
「話がでかすぎてちんぷんかんぷんだな・・」
宇宙最強の超能力者を探すなんて、夢をつかむより難しい話じゃないか・・。
それに時間もない。すぐそこにアオも女神もいるというのに、手も足もでないのか・・。




