イミテーションムーン
翔太達の心をひとつにする。あのひとを助けるんだという、四人の共有した強い思い。それこそが勇者を蘇らせる唯一の方法だ。ブルーよ、いささか辛い役目だが許してくれ。
『ブルー、ワタシは地球に向かう。いいな・・』
『はい』
『翔太、聞こえるか・・ワタシだ』
「ああ、聞こえる。どうしたんだアカ?」
『実は・・ブルーがサターンに捕らわれてしまったんだ』
「なんだって、アオが・・」
『サターンの挑発にのり、ひとりでレオン彗星に向かった。その後いくら呼び掛けても返事がない!』
アカが姿を現した、
「アカ、どういうことだ!アオがひとりで彗星に向かうなんて」
『ワタシも意外だった。おそらく女神の命をたてにされたのだろう。ブルーはママ思いだ』
「レッド、ブルーは悪いやつに捕まっちゃったの?」
「それでサターンは何か言ってきてるの?」
『いまのところは何も。しかし、サターンは我々のやろうとしてることを、薄々気がついていたのだろう。それを妨害しようとしてブルーを・・』
「それがいちばん考えられることね」
駿も桃子ちゃんも美咲お姉さんも、ブルーの事が心配でならない。ブルーはもはや僕たちの仲間なんだ!
『事態はいっそう難しくなった。こうなったら一刻も早く勇者を蘇らせなくては・・やってくれるかみんな』
「もちろんさ!女神だけじゃなくアオまでサターンに捕まってるんだ。アオは僕達の大切な仲間なんだ」
「翔太、早くブルーを助けてあげよう」
「そうよね。私達の仲間だもんね!」
「うん」
『みんなありがとう!』・・許してくれ。
『勇者を蘇らせるには、みんなの気持ちをひとつにした強い意思が必要なんだ』
「・・誰かのための切なる思い!」
『そうだ。勇者は自らの意思で自らを封印した。その封印を破りこちらの思いを伝えるには、それ以上の力が必要だ』
「わかってるわレッド、ブルーを助けるために」
「うん、必ずうまくやれる」
「ブルー、待っててよ!」
美咲お姉さん、桃子ちゃん、駿、それぞれの思いがアオのためにひとつになった!
だけど僕は、アオのとった行動が素直に受け入れられない。生意気で負けず嫌いで・・でも行動はいつも冷静だった。そのアオがなぜ・・。
「アオ・・アオ、聞こえるか・・」
僕はテレパシーでアオに何度も呼び掛けたが、返事が返ってくるとこはなかった。
『パパ、翔太から何回も呼び掛けがあるんだ。ボクがサターンに捕まったなんて、そんな嘘はつくべきじゃなかったのかな』
『辛抱するしかない。すべてが終わったら、ワタシが翔太達に謝ろう』
・・桃子ちゃんの家・・
「ワンワン、ワンワン」
「どうしたラッキー?」
「朝から落ち着きがないのよね。外にばかり出たがって」
「そうなんだ、珍しいね。いつもおとなしいのに・・」
「翔太、ラッキーを散歩に連れていこうよ」
「そうだな」
「駿君が紐を持つ!」
「気を付けろよ、ラッキーは力が強いぞ」
「じゃあ駿君、お願いね」桃子ちゃんがそう言って、玄関を開けた瞬間、紐をつける間もなくラッキーは走り出した。
「こら、ラッキー・・」追いかける僕達。
ラッキー、どうしたんだ?そんなに急いでどこへ・・。
間もなくそれは判明した。あの広場だ!
「ワンワン、ワンワン」ラッキーは必死に土を掘り起こしている。何があるというんだ。
「ワンワン・・」
「ラッキー」駿が駆け寄った。
「何か出てきたか?駿」
「あっ!・・カードだ」
「カード」
「ブルーが入っていたカードだよ」
「えっ・・」僕たちも駆け寄った。
「裏に絵は描いてあるの?」
「いや、何も描いてない。」
「誰がこんなところに埋めたのかな」
「アオしか考えられないよ」
「そうね、でもなんのために?」
しかし、何でラッキーは知ってたんだ?カードがここにあることを。
「カードどうしようか?翔太」
「一応とっておこう」
「うん、そうだね」
アオは僕達に何かを伝えようとしたのかも知れない、このカードで。それでラッキーにカードの存在を教えておいた・・。でもなぜ・・。
・・もしかしたら。
「駿」
「なに翔太?」
「そのカードを透視出来るか」
「そんなの簡単だよ」
駿はカードを透視した。
「・・何もないや」
「ということは、アオはまだサターンに捕まってないってことじゃないかな!?」
「ん?」
「もし捕まってたら、またこのカードに閉じこめるんじゃないかサターンは・・」
「そうかしら、一度私達に封印を解かれてるのよ。同じところに閉じ込めるかしら・・」
「それもそうか・・」
「じゃあなんのためにカードを埋めたのかしら?」
「うん、こんなときラッキーがしゃべれたらな・・ラッキーはきっと、何か知ってるはずよ」
『翔太・・翔太、ワタシだ・・』
「あっ、アカが呼んでる」
『みんなも聞こえるかい・・美咲ちゃん、桃子ちゃん、駿』
「あっ!」
そして超イケメン神様がまたやって来た。
『みんな集まってくれたか・・今度の新月の夜、勇者を蘇らせる!またあの広場に来てくれ』
「うん、いよいよだな!」
『そうだ。今度は月の裏側まで瞬間移動する、駿の力を共有してな』
「月って簡単に言うけど、宇宙服は?」
『心配ない。桃子ちゃんの力を共有するんだ!シンパシーでな』
『月の裏側には高い山々が連なる。そのなかでも特に高い山に勇者は眠る。そこで唱えるんだ!勇者復活を。では、新月の夜にまたここで会おう』
・・新月の夜・・
「みんな準備はいいか!?」
「うん」
「ワンワン、ワンワン」
「行くよ」
九十九里中央広場には、またピラミッドが置かれていた。例のカードが埋ってた丁度その場所に。
この前はピラミッドのさす天空に満月があったが、今はない。
「駿、あのカードは持ってるか」
「あるよ!ほら」
カードにはきっと何か秘密がある。アオが僕達に託したあのカードに・・。
『来たねみんな』
「ああ」
『ピラミッドを囲むように並んでくれ。そしてテレパシーでお互いを感じるんだ。ピラミッドがパワーをくれるはずだ』
「・・」僕達は目を閉じた。
静かに時が流れている、とても静かに・・。
そして、瞼が赤く燃えている、光だ!
体には他に感じるものはない。
その時、アカの声が聞こえた。テレパシーだ。
『まずは桃子ちゃんの力をみんなで共有するんだ。そしてゆっくり呼吸を止めて・・』
「・・」
『次に駿の力の共有だ!』
「・・」
『よし今だ駿!月に瞬間移動だ!!』
翔太達が来る、この月に。感じる!ものすごいパワーだ。
彼らならきっと大丈夫だ、きっと!ブルーはそう確信した。
この山に眠る勇者。ボクのママを守るために、自らをこの山に・・。
レオン彗星もかなり太陽に近づいている。ママのいるレオン彗星。
ボクが残したカードは、無事、翔太達の手に渡ったみたいだな、よくやったぞラッキー。
でも、あれは最終の手段だ。できれば使わずにすんで欲しいけど・・。
勇者とはいったいどんな・・勇者、勇者・・。
「うっ・・ん?月に着いたのか・・」僕は勇者の夢をみていたようだ。
「あっ駿、駿、大丈夫か」
「翔太・・ここは・・月?」
「美咲お姉さん、桃子ちゃん!」
「うっ・・翔太君、駿くん」
「ここは・・月なの?」
僕達四人だけか、アカはいないのか?
『アカ・・アカ・・』ダメだ、通じない。
・・月では・・
『パパ、大変だ!翔太達が・・』
『確かに月に瞬間移動したはずだだが・・』
『サターンだ、サターンの仕業だ』
『なんだと・・どういうことだブルー』
『翔太達は、サターンのいるレオン彗星に瞬間移動したんだよ』
『なんだと・・』
『イミテーション ムーンを目指して!』
『うっ・・ワタシがついていながら・・』
・・イミテーション ムーン・・
翔太達が月に瞬間移動した時は新月。地球から月の形は確認できない。なので目的地を確認するには、細心の注意が必要だ。
あの時、駿は確かにこの本物の月をイメージしていた。しかし、次の瞬間、空に明るい月が出現したら・・。
サターンはその時を待っていたんだ。そしてレオン彗星をイミテーション ムーンとして輝かせた。
一瞬のことだ、駿の頭には、その偽物の月がイメージされてしまったんだ。
『翔太・・翔太・・』ダメだ、バリアが張られている。
『ブルーよ、いくらあの四人が超能力を持ってるとはいえ、サターン相手では勝ち目がない』
『くそう!』
ここは本当に月なのか?
何しろ初めてだからな、ここが月だと言われればそうだし、違うと言われれば違う。でも、いつかテレビでみた月面とは明らかに違ってる。これが月の裏側なのか・・。
「翔太君、なんだか様子が変よね」と美咲お姉さん。
「それにちょっと不気味な感じ・・」
「おい、駿、本当にここは月なのか?」
「月・・だと思う?!」
「それにアカもいないし、高い山々なんてどこにもないぞ」
やはりおかしい・・。
その時だった。不気味な声が辺りに響いたのは。
『ようこそ!勇敢な地球の人間たち』
「翔太、今の誰の声・・」
「翔太君・・」
『パパ、ひとつだけ方法がある。ボク、翔太達にあのカードを預けてあるんだ』
『カード?』
『ボクが閉じ込められてたカードさ』
『それを翔太達が今持ってるというのか』
『うん、ああ見えて勘の鋭い翔太だ、必ず持ってきてる』
『それで、方法とは・・』
『パパの力でボクをまた、あのカードに閉じ込めて欲しいんだ!』
『なんだとブルー』
『テレパシーや瞬間移動は、バリアで遮られてるけど、カードへの封印は可能なはず』
『確かにカードへの封印は、瞬間移動とは移動系列が異なる。やって出来ないことはないだろう』
『もしカードに移動ができたら、彗星のバリアを壊して、翔太達にもう一度この月に瞬間移動してもらう』
『バリアを壊すだと』
『そう、スーパーサイコキネキスで』
『ブルー、そんなことをしたらエネルギーを遣い果たして、二度とカードから抜け出せなくなってしまうぞ!』
『わかってるさ』
『ならワタシがカードに入ろう。お前を見殺しにすることは出来ん!』
『・・いやパパ、ボクが行く!翔太達はボクを助けようとして、こんな目に合ってしまったんだ。だから・・。それに翔太達はボクの大切な友達なんだ!!』
『ブルーよ・・』
そして偽りの月レオン彗星では。
『地球人よ、勇者を復活させるなど愚かな考えはやめて、ワタシと手を組まないか。悪いようにはしない』
「翔太君、また聞こえた」おびえてる桃子ちゃん。
「うん」
『ここがとごだかわかるかい』
「いったいどこなの?」
「おまえは誰なんだ?!」
『ワタシの名はサターン』
「なんだって・・」
『ここはレオン彗星だ!』
突然黒い影が僕達の前に現れた。鈍く光る赤い二つの目が、僕達をにらんでいる。
「そんなあ、駿くん、ちゃんと月に瞬間移動したのに」
『駿、お前が見たのは偽りの月だ』
「えっ?」
「ちょうどいい、仲間のアオを返してもらおうか!」
『アオだと、知らんな』
「とぼけるな、月の神の息子だよ」
『だから、そんな者は知らんよ。女神ならここに預かっているがな』
「ブルーのママね」
「じゃあ、ブルーのママをかえせ!!」強気の駿。
『それは出来ない。神が月を手渡すまではな』
「駿、もう一度月をイメージ出来るか?」
「うん、出来るよ」
「美咲お姉さん、桃子ちゃん、ワン・ツー・スリーで、もう一度月に瞬間移動だ」
「うん、わかったわ」
「駿、頼んだぞ!・・ワン・ツー・スリー・・」
「ん?・・」
「翔太、ダメみたい」
『残念だな!この彗星にはバリアが張ってある。バリアの外への瞬間移動は出来ない』
「くそー」
『これを見るがいい』
その時、サターンの足元から薄い光が漏れてきた。
そしてゆっくりとガラスのケースが浮かび上がった。
中には美しい女性が眠っている。
「女神様!」
「美しい女性だわ」
「ブルーのママだ」
「女神を返してくれ」
僕はそう言って一歩前に踏み出した。
その時だった。サターンの赤い目が光ったのは!
そして次の瞬間、僕は左腕に生ぬるい痛みを感じた。
「翔太君、血が出てるわ!」驚いた顔の美咲お姉さん。
『変な真似をしたら、またおみまいするよ』
「くそー、サターンめ」
「翔太君、腕を見せて・・」
そう言って美咲お姉さんは、腕の傷に手をかざした。
・・「はい、治ったわ」
「ありがとう、お姉さん」
『ほおー、なかなかやるではないか』
「こら、サターン、翔太に何をするんだ!今度やったら駿くんが許さないぞ」
「やめろ駿」
『兄さんおもいだな駿。だが、ワタシにはどうでもいいことだ』
「うるさーい!駿くんは怒ってるんだぞ」
そして駿がサターンをにらんだ瞬間だった。
またあの赤い目が光り、駿はその場に倒れこんでしまった。
「駿、駿、大丈夫か」
『安心しろ、気を失っただけだ』
「駿君、駿君・・」
「くそー、何をするんだサターン!」
僕は怒りを抑えきれなくなっていた。
このまま闘ったとしても、僕たちに勝ち目はないだろう。しかし、今度あいつの目が光ったら、サイコキネシスで反撃すると決めていた。




