ep.11 300年越しの真実(中編)
「マジマさんもいた……って」
マジマの言葉には、さすがにミライも驚きを隠せなかった。
「マジマさん、御幾つなんですか?」
イワト財団の置き土産、コウノとトリノという二人の男の摘発。その作戦が決行されたのは、300年近く昔の話だと、他でもない本人の口から語られたばかりだ。そこに参加しているということは、マジマは少なくともそれ以上の年月を生きていることになる。
ミライの問いに対し、マジマは鋭い鉤爪で頬を掻き、すっとぼけたような顔をした。
「幾つだったかな。まぁ、350はいっていないはずだ。言ってしまえば、俺もその“かがやきの家”の出身で、この長寿も、おまえたちの前で見せたいろいろも、そこであった能力開発計画の副産物みたいなもんだ」
軽く語ってみせるマジマだが、事実は彼の語る様子ほど軽々しいものではない。もっと凄絶な何かが、マジマの人生にはあったはずだ。だが、それを言葉や態度ににじませることは、少なくともマジマはしようとしなかった。
「俺のことは本題じゃない。続けるぞ」
「は、はい」
ミライがなんと言えば良いのか考えあぐねていると、マジマはあっさりとそう言った。
確かに、そこは今は本題ではない。アカリの謎に関わる話の最中だった。ミライは、マジマの言葉に難とも言えないもどかしさを感じつつ、頷く。
マジマは腕を組んだまま椅子に腰を下ろし、それから語り始めた。
300年以上も前のことだが、まるで昨日を思い出すかのように、その口調はよどみがなかった。
当時、マジマはスキルテイカーと呼ばれていた。
スキルテイカーは、内閣特殊異能対策室によって与えられたコードネームだ。
当時、内特対の室長であった石蕗五郎入道政宗は、本人の真面目さとは裏腹に奇抜なネーミングセンスを持っており、作戦に参加した異能者の大半は“おっぱいエスパー”だの“ゴールドヤンキー”だの、ふざけているとしか思えないようなコードネームをもらっていた。“スキルテイカー”は、その中ではかなりマシな方である。
“かがやきの家”残党の摘発作戦は、それよりも以前に何度か行われており、これが最後の作戦になるはずだった。いや、事実、最後の作戦にはなった。
このとき、内特対の作戦に初めて参加する人物がいた。コードネームを“ナイトメア”という。
ナイトメアは内特対と協力関係にあった組織からの出向者だ。外見こそ20歳前後の女性だが、その正体は特殊な精神寄生体が、乳児の段階から人間の中で過ごしていった結果、人間に近いメンタリティを獲得していったというものである。
人間としての彼女は早くに両親を亡くしており、幼少期を“かがやきの家”で過ごしており、それが、作戦に参加するひとつのきっかけでもあった。