一義の憂鬱03
一義はハーレムを持っている。
白い髪。
白い瞳。
長い耳。
褐色の肌
それは亜人としての証明。
エルフ……または東夷と呼ばれる種族のことを示す。
大陸西方では忌み嫌われる存在ではあるが……その美貌は誰にも否定できず結果として一義を慕う女子が現れるのもしょうがないことではある。
姫々、音々、花々は当然として、金色のアイリーン、青色のビアンカ、燈色のジンジャー、桃色のハーモニーをハーレムとして加えている。
アイリーンは金髪金眼の美少女で反魂の魔術師の異名を持ち……元は一義たちのいる霧の国の隣国たる鉄の国の宮廷魔術師だった存在だ。
ビアンカは青髪青眼の美少女でドラゴンバスターの異名を持つ竜殺しの魔術師である。
ジンジャーは燈髪燈眼の美少女で一義に言わせれば一番平凡と言われる存在であり、新聞部に所属する情報通でもある。
ハーモニーは桃色桃眼の美幼女で泣く子も黙る鳥の国の炎剣騎士団の団長だったが、今は一義のハーレムに所属する一介の王立魔法学院の特別顧問だ。
他にシャルロット、ディアナ、アイオンが一義のハーレムに加えられる。
ディアナとアイオンは事情があって霧の国の王都ミストに身を置く身だ。
シャルロットは運び屋の仕事をしている身もあって、今は大陸最西端……その霧の国と不可侵条約を結んでいる島国たる波の国にいる。
閑話休題。
次の日の朝食はフレンチトーストだった。
作ったのは姫々とアイリーンだ。
家事全般は姫々とアイリーンが率先してすることになっている。
誰が決めたわけでもなく本人たちが喜んでしているのだから一義に遠慮は無かった。
「一義はそんなに……」
アイリーンが言う。
その隣でビアンカ。
「一義、慰めてほしいのならわたくしに言うべきですわよ?」
腕を組んで巨乳を強調する。
「一義はかしまし娘だけでいいの?」
ジンジャーがそう問い、
「…………」
ハーモニーがクイと一義の袖を引っ張る。
「大丈夫だよハーモニー」
一義は桃髪桃眼の美幼女ハーモニーの髪をクシャクシャと撫ぜる。
それを心地よさ気に感じるハーモニー。
桃色の瞳を柔和に細める。
「なんで一義はハーモニーには優しいのです?」
アイリーンがそう問う。
「一義は幼い娘が好きなのですの?」
ビアンカがそう問う。
「一義の不潔」
ジンジャーがそう非難する。
「別にハーモニーを特別視してるわけじゃないんだけどね」
フレンチトーストを嚥下して一義は言う。
そして牛乳を一気飲み。
「はふ」
と吐息をついて、
「御馳走様でした」
一拍する。
「美味しかったよ。姫々。アイリーン」
「もったいのう……」
「恐縮です」
姫々とアイリーンは照れた様にはにかんだ。
「音々」
と一義は黒髪黒眼の幼女の名を呼ぶ。
かしまし娘の一人たる音々は食後のお茶を飲みながら一義に問うた。
「なにかな!? お兄ちゃん!」
「髪を梳いてくれる?」
自身の白い髪をクシャクシャと撫でながら一義。
「うん! もちろん!」
音々は、
「嬉しくてしかたがない」
とばかりに頷いた。
「花々」
「なんだい旦那様?」
「僕の制服を用意しておいて」
「言われずとも」
花々は肯定する。
そして一義は朝食の席から脱すると音々と一緒に洗面所へと向かう。
そして鏡を前にして、
「音々。よろしく」
そう呟いた。
これ以上の幸せなど無いかのように、
「うん!」
と首肯するのは音々。
「お兄ちゃんは格好いいから身だしなみもちゃんとしなきゃね!」
そう言って音々は一義の髪を丁寧に梳いた。
次に待っていたのは一義の私室にて制服の準備をしていた花々だ。
赤い瞳を一義に向けて、
「用意はできているよ」
花々は言った。
そして花々に手伝ってもらって一義は王立魔法学院の制服に着替えるのだった。
緑色のネクタイは二過生の証。
すなわち最低限の魔術を覚えた証。
しかして、
「なんだかなぁ」
一義は愚痴る。
今日一義は四過生に昇進する予定であった。