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一義の憂鬱01


「ああ……」


 これは夢だ。


 一義はそう思う。


 そしてそれは事実だった。


 そうでなければ灰かぶりの姫が出てくるはずがないのだ。


 散々見た幻影。


 もはやルーチンワークと言ってもいい。


 結果も変わらない。


 マジカルカウンターによって大鬼を投影した灰色の姫は、その大鬼の持っている斧によって体を二分割されるのだ。


 致命的な一撃。


 そして一義は矛盾を手に入れる。


 灰色の姫の死と引き換えに。


 それでも。


 されども。


 どす黒い感情だけは否定しようがなかった。


「うわああああああああああっ!」


 もう何度も繰り返した……月子の死に際を夢に見た一義は絶叫して起き上がる。


 夢と現実の区別がつかない。


 胡蝶の夢。


 どちらが真なるか判別がつかない。


 誇張の夢。


 どこまで夢が真に迫っているかわからない。


 それでも一義の見た映像は一義の心臓を強く叩く。


 心的外傷。


 それはそう呼ばれる現象だ。


「はぁ……! はぁ……!」


 胸を押さえて、


「畜生……っ!」


 と一義は愚痴る。


「ご主人様……」


 一義と同じベッドで寝ていたかしまし娘の一人……姫々が覚醒して一義を呼ぶ。


「月子様の夢を見ていたのですか……?」


「うん……」


 弱々しく一義は頷く。


 そんな一義の頭部を姫々は抱きしめる。


 決して大きくはないが小さくもない胸にて一義を抱擁する。


「僕は……僕はさぁ……」


 涙を流して泣きすがる一義に、


「大丈夫です……」


 姫々はあやすように言葉を紡ぐ。


「ご主人様は何も悪くなどありません……」


 最大限の優しさを込めて。


「でも僕は……!」


 自責の言葉を吐こうとした一義の口を、ギュッと抱きしめることで封じる姫々。


「ご主人様の苦悩はわかります……」


 事実として姫々ならびにかしまし娘はソレを知っているのだ。


 だからこそ救いなのだった。


「でもそれはご主人様が原因ではありません……」


 一義を弁護する姫々。


「事実ご主人様は優しいです……」


 どこまでも純粋に。


「ご主人様は誠実です……」


 どこまでも清廉に。


「罪を罪と認められない輩もおります……。それとは対照的に他者の罪を自身のものとする輩もいます……」


 姫々は休むことなく言葉を紡ぐ。


 少しでも取り違えれば一義が罪悪感という落とし穴に陥ることがわかっているからだ。


「ご主人様は後者です……」


 だから姫々はきっぱりと慰めの言葉を放つ。


 一義を優しく抱擁したまま。


「月子様の不幸は月子様のものです……。そこにご主人様の介在する余地はありません……」


「でも僕が月子に魔術を教えたばっかりに……!」


「それでも……です……」


 姫々は譲らない。


 一義は悪くないと。


 そう言い続ける。


「僕は……」


「それ以上ご自身を責めないでください……」


 抱擁に力を込める姫々だった。


「僕は……最悪だ……」


「違います……」


「僕は……害悪だ……」


「そんなことはありません……」


「僕は……罪悪だ……」


「それは自罰的感情に過ぎません……」


 一義の自責を姫々は否定する。


「ご主人様は言ったじゃないですか……。月子様の苦しみを金色に変えると……。ならばご主人様は月子様を振り切らねばなりません……」


 クシャクシャと一義の白い髪を撫でる姫々。


「それは月子を忘れろってこと?」


「違います……」


 姫々は否定する。


「それはご主人様の業です……。忘れるなぞとんでもない……。ただ責任の全てをご主人様が背負う必要が無いということです……」


 そして銀色の瞳に優しさを宿す。


「姫々。僕は……っ」


「それ以上ご自身を責めないで……」


 銀色の髪の銀色の瞳。


 銀色の美少女……姫々がニコリと笑う。


「うう……ううううううっ……」


 一義は姫々の胸の中ではらはらと泣くのだった。


「ご主人様は本当に愛おしいですね……」


 姫々は一義を抱きしめたままあやすようにそう言う。


「姫々は僕の傍にいるよね?」


「はい……。いつでも御傍に……。なんならここでわたくしを抱いてくださってよろしいんですよ……?」


「ありがとう姫々」


 鼻水をすすりながら姫々の抱擁に身を委ねる一義だった。


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