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パワーレールガン03


「え……?」


 燈色の髪と瞳を持つジンジャーはポカンとして、


「一義と代表者七名で……つまり一対七で一義が決闘するってこと?」


 問いなおした。


「そう言ったよ」


 一義は「何を今更」と付け加える。


「なんでそんな不利な条件を飲んだんです!」


「僕の強さは知ってるはずでしょ?」


「知りませんよ!」


「あれ? そうだっけ?」


「姫々さんや音々さんや花々さんの戦闘能力はわかってますけど……一義自身の戦闘能力までは知りませんよ!」


「じゃあこれから把握すればいいさ」


 そう言ってパスタを口に運ぶ一義。


 場所はもう一義とハーレムたちが慣れ親しんだ5LDKの宿舎。


 そのダイニング。


「うーん。濃厚で美味しいね姫々」


 そう姫々に賛辞を送る一義に、


「此度の料理のメインはアイリーン様が指導してくださいましたので……」


 姫々は謙虚に応じた。


「そうなんだ。やるじゃんアイリーン」


「もったいのう」


 アイリーンも謙遜する。


 姫々とアイリーン……銀色と金色の美少女はそれぞれ分野の違う料理を教え合い技量を高め合うパートナーとなっていた。


 閑話休題。


「ともあれ」


 パスタを嚥下してジンジャーが言う。


「一義には何の得もないじゃないですか」


「まぁ有名税とでも思うことにするよ」


 一義は白い髪を弄りながら軽い調子だ。


「今からでも拒否できないんですか?」


「できはするだろうけど僕自身が望んでることだしなぁ……」


 ほけっと一義。


 それから、


「御馳走様でした」


 と言って一義は、


「姫々、お茶」


 と命令する。


「何のお茶にしましょう……?」


 問う姫々に、


「うめこぶ茶」


 断ずる一義。


「はい……。ではそのように……」


 姫々はお茶を用意するためにキッチンへと消えていった。


「何故争いを望むのですか?」


 当然の問いをジンジャーはした。


「試したいことがあるから」


 やっぱりほけっと一義。


「試したいこと?」


「そ」


「何ですそれは?」


「今はまだ秘密」


「隠し立てすることですか?」


「そういうわけじゃないけどもったいぶった方が有難味があるでしょ?」


 くつくつと一義は笑った。


「…………」


 ジンジャーは憮然として黙るのだった。




    *




 そして宿舎の風呂に一義とシャルロットとジンジャーが入った。


 当然風紀を厳しく律する「一義ルール」のため三人とも水着着用だ。


 一義はまっさきに髪と体を洗って風呂に入る。


 ディアナのいるミスト王城の風呂ほどではないが、集団生活を基礎とした5LDKの宿舎故にゆったりと広い風呂場ではある。


 そしてビキニを着ているシャルロットとジンジャーが互いに体を洗いっこしてから、湯に浸かるのだった。


「うう……シャルロットさんはモデル体型で羨ましいです」


「それはありがとう」


 あっさりとシャルロット。


「私は胸は大きくないし……かといってスレンダーでもないし……でも幼児体型でもないし……一番需要が無いです……」


「だってさ。どう思う一義?」


 試すようなシャルロットの言に、


「自らのスタイルに負い目を持つ美少女こそ可愛く映るモノだよ」


 一義は悪戯っぽくそう言うのだった。


「僕も同感」


 とシャルロットが追従する。


「じゃあ来たるべき日には一義は私も抱いてくれるのですか?」


「時が来たらね」


 玉虫色な一義。


「ああ、それについて疑問がある」


 と、これはシャルロット。


「なにさ?」


「かしまし娘だけを君の……一義の寝室に招くのは不公平だとは思わないかな?」


「ああ、それは私も同感です」


「と言われてもねぇ……。僕の罪悪の記憶を共有しているのは姫々と音々と花々だけ……だからね」


 一義はぼんやりと言う。


「僕たちとて既に君の過去は知っている」


「知っているだけだ。理解はしていない。かしまし娘は僕が魔術で具現化している延長線上僕の記憶を引き継いでいる。真に僕の罪悪を理解でき慰められるのはかしまし娘だけだよ」


「そうするためにかしまし娘を具現化するのは虚しいとは思わないか」


「まぁ自慰行為には違いないね」


「わかっていてそうしているのかい?」


「他に何がある?」


「…………」


「…………」


 一義とシャルロットは視線を交錯させる。


 そしてシャルロットは嘆息した。


「ま、いいさ。君がそうしたいのならね」


「なに? シャルロットも僕を慰めたいの?」


「あらゆる意味でね」


「いやん」


 しらじらしく一義はそう言った。


「僕は本気だよ?」


「嬉しさ過分だね」


「私も……私も一義にとっての温かいコートになりたいって思います……!」


「ありがとうジンジャー」


「それでも寝室はかしまし娘の聖域かい?」


「今はまだ……ね」


 そして一義は言葉を続ける。


「いつか……いつかきっと……」


「…………」


「…………」


「かしまし娘を不要となる日が来たら、矛盾の悪夢を見なくなったならば……そのときはハーレムをも寝室に招くこともあるはずだよ」


 力無く笑いながらそう言う一義に、


「業が深いね……一義は」


「それじゃ一義があんまりです」


 シャルロットとジンジャーは悲しげに一義を見つめるのだった。


「まぁだからこその僕だとも言えるんだけど」


 そう言って一義は風呂に肩までつかり、五分の時間を数えるのだった。


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