ドラゴンバスターズ03
そして兵士が学院長室の扉の傍に座っている老齢の秘書に言う。
「ドラゴンバスターのビアンカ様およびドラゴンバスターバスターの一義様および絶防の音々様を連れてまいりました!」
「はい。確認しました。警護に戻ってください」
秘書はそう言って、兵士を下がらせると、学院長室の扉を開いた。
そして一義の嫌な予感が的中する。
「一義様ーっ!!!」
と紫色の髪に紫色の瞳を持って紫色のドレスを着た美少女が学院長室から飛び出してきた。
「…………」
一義は縮地を使ってそれをあっさりと避ける。
飛びつこうとした紫色の美少女は一義のすぐ横を通り抜けて音々に飛びつき、もみくちゃになって廊下を転がった。
「やっぱりか……」
苦虫を噛み潰したような顔で一義は自身の悪寒に舌打ちする。
紫色の美少女……霧の国の最高権力者……即ち霧の国の女王ディアナがそこにいた。
「なんでディアナがいるのさ」
「一義様に会いたい一心ですの!」
「さいですか」
カクンと首を下げてそう言う一義だった。
「ご主人様はまた……」
「もう! お兄ちゃん!」
「旦那様……いい加減に」
「一義。浮気は許しませんことよ?」
そんなハーレムの意見を無視して、
「えへへぇ……一義様ぁ……」
と表情を喜色に崩して、一義に抱きつくディアナ。
「あまり僕の立ち位置を危ぶめないでほしいんだけどな」
「大丈夫。非難する輩は打ち首にするから」
「東夷といると魂が穢れるよ?」
「そんな風評被害なんて気にする器じゃありませんわよ? 私は……」
「さいですか」
なら言うことは無いとばかりに一義はディアナを抱きつかせたまま学院長室へと入っていった。
すると今度は、
「か、可愛いいいいいいいいいっ!!!」
と学院長室のソファに座っていた燈色の髪に燈色の瞳を持った美少女が一義に抱きついてきた。
「???」
もはやわけがわからないとばかりに困惑する一義。
燈色の美少女は一義を抱きしめて、
「可愛い! 可愛い! 可愛い! 可愛い!」
と一義に頬ずりした。
「ね? 言ったでしょ? 一義様は可愛くて格好いいって」
自慢するようにディアナが言うと、
「ここまでとは思いませんでした! 本当に可愛らしい! これがエルフなんですね! ねえ一義……わたくしの近衛騎士になりませんこと? 三食昼寝付きで月に百万ミスト出しますわよ?」
「その前に……あなたは誰ですか?」
「ああ、申し遅れました。わたくし王都ミストにて宮廷魔術師をしておりますアイオンと申します。雷帝のアイオンと言えばわかりますか?」
「雷帝のアイオンって……!」
一義が驚愕する。
「もしかして……!」
姫々も驚愕する。
「ジンジャーのお姉さん!」
音々も驚愕する。
「へえ。あなたが雷帝アイオンか」
花々だけは臆せずにそう言った。
「あなた方……ジンジャーを……わたくしの最愛の妹を知っていますの?」
「知ってるも何も……」
うんざりと一義。
「ジンジャーは僕のハーレムの一員だよ」
「一義様……またぞろハーレムの人員を増やしてますの?」
これはディアナである。
「まぁ色々と縁があって……」
「やっぱり私も入りますわ! 一義様のハーレム!」
「いや、さすがにディアナをハーレムにいれたら僕なんて即打ち首なんで」
「誰にも異論は挟ませませんわ。ね? いいでしょう?」
「はぁ……まぁ……本人が良いならそれでいいですけど……」
ガシガシと後頭部を掻く一義だった。
「ちょっと待ってください女王陛下……。一義はわたくしの近衛騎士に誘っているんですけど……」
「無理だよ。一義はロイヤルナイトの地位すら拒否したほどだから」
「王属騎士を辞退したんですの!?」
驚愕するアイオンだった。
ジンジャーと同じ燈色の髪を振り乱し、ジンジャーと同じ燈色の瞳を見開いて、信じられないと驚愕するアイオン。
「まぁそんな大それた存在じゃありませんが……」
後頭部をガシガシと掻きながら一義だった。
「ううん。ならわたくしもまたハーレムに入れてもらっていいでしょうか? 雷帝アイオンが可愛い可愛い可愛い一義のハーレムに入れば箔がつきますよ?」
「好きにしてください」
一義はうんざりと答えた。
「ご主人様……」
「お兄ちゃん……」
「旦那様……」
「一義……」
ジト目で一義を睨むかしまし娘とビアンカに、
「だって……しょうがないじゃないか……」
と狼狽えながら言い訳をする一義。
「女王陛下……雷帝様……戯れはその辺にしておいてください……」
と、妙齢の女性……学院長がデスクワークから言葉を紡ぎ牽制する。
「そうでしたわね。今はこんなことを言っている場合ではありませんでした」
「申し訳ありませんわ……学院長……」
そうして抱きついた一義から離れるディアナとアイオン。
「いえ、構いませんが……」
遠慮がちに述べた後、学院長は、
「ドラゴンバスター……ドラゴンバスターバスター……絶防……お待ちしておりました」
一義たちに向けてそう言った。