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王立魔法学院入学式とその後04


「いやあ……はっはっは。そりゃ目立つよね」


 一義は渇いた笑いを浮かべた。


 宿舎を出て王立魔法学院への道すがら「何事か」と道行く人たちがジロジロと一義および一義に尽くす美少女たちを見やる。


「…………」


 姫々は無言で一義の三歩後ろを追従している。


「あは!」


 音々はルンルン気分で一義の右手と繋いである自身の左手を振り乱している。


「旦那様……」


 花々はうっとりとしながら一義の左腕に抱きついている。


 これで注目するなと言う方が無理難題である。


「あの銀髪の子……可愛くない?」


「俺は黒髪の子が良いと思う」


「あの額の角……東方の……オーガ……だよな? 何でうちの制服着てるんだ? まさか入学か?」


 そんなヒソヒソ話が一義の耳にも届いてくる。


 そして結論は誰一人欠けることなくこの言葉に集約される。


「「「「「ていうか何で東夷なんかに尽くしてんの?」」」」」


「あっはっは……はぁ……」


 ひとしきり笑った後に溜め息をつく一義。


「溜め息などつかれまして……どうかなさいましたかご主人様?」


「どうかしたのお兄ちゃん?」


「どうかしたかい旦那様?」


 まるで「わからない」とかしまし娘。


「衆人環視の眼が痛いなぁって……ね」


 一義がそう言うと、


「俗人の嫉妬なぞ御気になさらずに」


「お兄ちゃんが格好いいからみんな嫉妬するんだね!」


「旦那様はあたしたちだけをみていればそれでいいのさ」


 かしまし娘はやはりあっさりとそんなことを述べ立てるのだった。


 そして衆人環視の針のような視線は王立魔法学院の門をくぐってからも変わらなかった。


「東夷が女子をはべらしている」


「理不尽だ」


「なにか弱みでも握られているのか?」


「銀髪の子可愛い」


「黒髪の子可愛い」


「赤髪のオーガ可愛い」


 並べてみればそんな言葉が多く聞こえてきた。


「ま……自業自得か……」


 ガシガシと後頭部を掻きたい一義であったが生憎と両手は音々と花々に占領されているため諦めるのだった。


 それから一義とかしまし娘は学院のクラス編成の掲示板へと向かう。


 そこには多くの新入生が屯していて、誰もが誰も自分が何組のクラスかを確認しようとしていた。


 そしてそれまでの衆人環視同様新入生たちもまた一義とかしまし娘を見やってギョッとし、ヒソヒソとその関係性についての憶測を流布する。


 とりあえず一義はそんな好奇の視線を無視して掲示板に目を見やる。


「僕は……と……」


 掲示板に張り出された紙を見るに一義は九組に配属されたらしかった。


「九組か……」


 ポツリと呟く一義。


 魔法学院の一過生は九つのクラスに編成される。


 一組がとりわけ優秀な生徒を確保するとすれば、九組は劣等生ばかりを集めたクラスとなる。


 つまりクラスの数字が小さければより優秀で、大きければ劣等だという話である。


「わたくしは……一組ですね……」


「音々も一組だ!」


「あたしも一組だね」


 かしまし娘は例外なく最優秀の一組配属らしい。


 一義だけが九組なのである。


「じゃあ一旦ここでお別れだね。姫々……鞄ちょうだい」


「はい。ご主人様」


 姫々は丁寧に一義に鞄を渡す。


 ちなみに姫々が一義に向けて言った「ご主人様」という言葉に、また衆人環視がザワリとどよめく。


「じゃ、僕は九組のクラスに行くよ。また後でね。姫々……音々……花々……」


「はい。入学式が終わればご主人様を迎えに行きますので教室でお待ちください」


「お兄ちゃん! 昨日の内に美味しい東方系列の定食屋を見つけておいたからお昼はそこでとろうね!」


「ではね旦那様。短い別れだ」


 かしまし娘はそんなこんなで自身の配属された一過生一組の教室へと向かった。


「じゃ、僕も行くかな」


 今度こそ後頭部をガシガシと掻いて、一義は一義で自身のクラスである一過生九組の教室へと向かった。


 掲示板に屯している新入生は一義が動きを見せるとモーゼよろしくザザッと道を開けた。


「…………」


 まぁしょうがないかと心の中でだけ溜め息をついて、空いた道から九組へと向かう一義だった。


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