いざ王都13
「なんのなんの。あ、そう言えばもう一人の一義様は私が洗ってもよろしくて?」
ビシと一義のチョップがディアナの頭部に食いこんだ。
「うぐおおお……」
頭部を押さえてうずくまるディアナ。
残るはアイリーン一人。
「アイリーンは馬鹿なこと言わないよね?」
ふざけたらぶっ潰すと顔に書いてニッコリ笑い問い詰める一義に、
「あは……あはは……もちろんです一義……」
アイリーンはそう答え、黙々と一義の体を洗った。
「しかして本当に一義の体は鍛えぬかれていますね。私、少々うっとりしてしまいます」
「まぁ忍としての性質上これくらいの身体能力は維持しないと意味ないからね」
「忍……ですか? なんですそれ?」
水着以外の部分を洗い終えて、桶でお湯をすくい一義の体を洗い流すアイリーン。
「大陸西方でいうところの諜報員だよ。和の国では忍っていうんだ」
「へえ……でも西方の諜報員っていえば情報収集に長けるインテリって感じでこんな逞しい肉体は持っていませんけどね」
ツイーと人差し指で鍛え抜かれた一義の体をなぞりながらアイリーン。
「忍には潜入や暗殺なんて仕事もあるから」
「カヴァーとは違うんですか?」
「そういうこともあるよ。まぁ僕はもっぱらカウンターインテリジェンス寄りだったけど」
「カウンターインテリジェンス……というと……」
「もちろん仕える大名や城を守る側の忍って事さ。対暗殺だったり……ね」
「なるほど」
「ま、何はともあれアイリーン……君は自分の体を洗っていいよ。僕はもう一人の僕を洗うから……」
「はぁ……そう……ですか……」
頬を朱に染めるアイリーンだった。
「なんだい……。アイリーンはネンネちゃんなのかな?」
「はい……。経験……ありません……」
「そっか。でも大丈夫。アイリーンほど可愛ければ男なんて向こうから寄ってくるよ」
「一義は……抱いてくれないんですか?」
「僕に抱かれたいの?」
「はい。それは……私は……ハーレムですから……」
「それはまた……はやまった判断を」
「駄目……ですか……?」
「駄目じゃないけど今の僕は操を立てている身だからね」
「誰に対してですか……?」
「それは秘密」
口元に人差し指を当ててウィンクする一義だった。
「ほら、君たちもいつまでもうずくまってないで体洗いなよ。僕はもう風呂に入るよ?」
そう言って一義は下半身を自分で洗うと、ザバンと入浴した。
じんわりとお湯が一義の体を温める。
春も半ば。
夜はまだまだ寒い季節。
適温のお湯は極上のもてなしであった。
美少女たちもそれぞれ自分の体を洗い、水着のまま風呂に入る。
「一義様……湯加減はどうでしょう?」
一義の腕に抱きついて胸を押し当てるディアナに、
「うん。いい湯加減だよ。それより当たってるよディアナ」
忠告する一義。
「当ててるんですの」
「さいですか」
さっぱりとしたものだった。
「一義……もしかして女の子に興味無いのですか?」
そう問うてきたのはアイリーンである。
「まさか美少女が大好きだからかしまし娘をはべらせているんじゃないか」
「でも手は出さないんですね」
「それはまぁ……色々あってね」
一義はガシガシと後頭部を掻きながら言う。
「一義様……私もハーレムに入りたいですわ。すわすわ」
「ダメ」
「なんでですの?」
「王女がそんな立場になってみなさいよ。僕、本当に打ち首だよ?」
「身分を越えた愛がドラマティックでいいじゃありませんの」
「嫌がらせにしか聞こえないのは僕の耳が腐っているからなのかな……」
一義はうんざりするのだった。
そこに
「ご主人様から離れてください……ディアナ様……」
「お兄ちゃんから離れて! ディアナ!」
「旦那様から離れるんだ。ディアナ」
かしまし娘が割り込む。
「あん。あなた方ハーレムはこれからもずーっと一義様と一緒なのですから良いではありませんか。それにここはミストの王城。私の命令には従ってもらいますわ。一義様……今日は一緒に寝ましょうね?」
「寝るだけならいいけどね」
「一義様が望むのならそっち方面で寝てもいいんですのよ?」
「僕、貞操の薄い女の子は嫌いなんだ」
一義はそう言って肩まで湯に浸かるのだった。
それからそれぞれの肉体的特徴を持つ美少女たちの水着姿に翻弄されながら一義は風呂を楽しむのだった。