いざ王都12
そして日が沈み、王都ミストは夜を迎える。
一義たちは王女であるディアナとともに夕食を取り、混成一個旅団の一義たちに個室が与えられ、一義は一義の個室にて風呂の準備をした。
聞くに王都ミストはシダラと違って温泉が湧くようなことはなく、風呂は王族専用のモノとなっているらしい。
風呂場に流れるお湯は、隣の部屋で適温まで温められた水を流すことで成り立っているとか。
まぁ何はともあれ風呂はあるのだ、と……大陸東方の出でありお風呂大好きな一義は風呂の準備をして風呂場へと向かう。
「…………」
その風呂場に行く過程で一義は沈黙した。
部屋を出た一義を見計らって姫々、音々、花々のかしまし娘が合流し、さらにタイミングが良いというにはいささか首を傾げなくてはならない呼吸でアイリーンとディアナが合流した。
一義は姫々と音々と花々とアイリーンとディアナを連れて風呂場に向かった。
無論、かしまし娘が合流することを見通して水着を用意していた一義だったが、さすがにアイリーンと女王陛下たるディアナまで一緒とは思っていなかった。
しかしてそれを指摘しても「大丈夫。水着は持っていますから」とアイリーンとディアナは言うだけで、恥じらいとは無縁だった。
「はぁ……」
と嘆息する一義。
そうこうして一義はかしまし娘とアイリーンとディアナと一緒に風呂に入ることになった。
なんの権力も無い東夷が霧の国の女王と風呂に入るのである。
不敬罪まっしぐらだが当のディアナが気にしていないのだから気にしてもしょうがないかと思う一義だった。
脱衣所にて。
「花々……胸が大きいですね。私も自信あったのに挫かれた気分です」
「こらこら。これを触っていいのは旦那様だけだよ」
「音々は可愛らしいですね。これも一義様の趣味ですか?」
「ツルペタはステータスだからね!」
「姫々とアイリーン様はモデル体型ですね」
「それは……どうも……」
「恐縮です」
というようにディアナは興味津々にハーレムたちの裸体を見て回った。
その快活な声は一義の耳にも届き、
「…………」
一義を無常の気持ちにさせるのであった。
そして全員が水着を纏って風呂場へと。
シャワーはこの世界には無いため、一義が風呂のお湯をすくって体に浴びせて洗う。
そして美少女達はというと、
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
無言で牽制しあっていた。
その沈黙の緊迫感を一義はつついて破裂させた。
「姫々、音々、花々……体を洗ってくれる?」
「了解しましたご主人様……」
「わかったよお兄ちゃん!」
「わかってるじゃないか旦那様」
石鹸をとって意気揚々と一義に歩み寄ると、かしまし娘はいつもの通りに一義の体を洗う。
「ではいつもの通りわたくしはご主人様の髪を……」
「音々はいつも通り前を!」
「背中はあたしだね。なんならこの豊満な胸で洗ってあげようか……旦那様?」
スイカップの花々が自らの豊満な胸を一義の背中に押し付ける。
心揺らぐ魅力的な提案だったが、一義はそれを却下した。
「セクハラしたら一緒に入浴してあげないよ」
「それは困る。旦那様と風呂に入るのがあたしの楽しみの一つだ」
「ならスケベ心は封印することだね」
「しかして美少女五人の裸体を見て何も思うところはないのかい?」
「そりゃ意識はしてるさ」
「あたしならもう一人の旦那様を胸で包んであげられるよ?」
「あ! 花々ズルい! お兄ちゃんお兄ちゃん! 音々が胸を擦り付けてあげようか」
「何を馬鹿なことを……。ご主人様……わたくしがご奉仕して差し上げますから二人の意見を却下してください……」
「全員却下」
ビシビシビシとかしまし娘にチョップをかまして自分で体を洗い始める一義。
姫々と音々と花々は「うう……」と頭を押さえてうずくまる。
そこに「今だ!」とアイリーンとディアナが一義に寄り添った。
「一義……私が洗ってあげますよ」
「一義様……私が洗ってさしあげますわ」
「ふーん。じゃあお願い」
そう言って一義が石鹸を渡すと、アイリーンとディアナは一義の前と後ろを分担して洗い始めた。
「ふわ……一義様は筋肉質でいらっしゃるのね」
「鍛えているからね」
「たくましい男の人って素敵です」
「普通西方の人は東夷を忌避するものじゃないの?」
「ドラゴンバスターバスターの勇名はこちらにも轟きましたわ。それ以降私は一義様のファンですの。それにエルフだって……デミヒューマンだって喜びもすれば悲しみもします。ならば一義様は尊敬に値する人物ですわ」
「ありがと」
照れながらそう言う一義に、ディアナはニコリと笑って答える。




