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いざ王都11


 ディアナの私室から場所を移して、王城護衛軍の修練場へと身を置く一義率いる混成一個旅団。


 訓練をしていた兵士たちはディアナを視界に収めるとまるでそう定められたかのようにかしずいた。


 その内の一人……明らかに一兵卒とは装備の違う兵士に声をかけるディアナ。


 その兵士はディアナ曰く魔法剣士という立場にあるらしい。


 剣士としての腕も十二分でありながら、魔術師としての才能も十二分であると一義たちは聞いていた。


 そんな魔法剣士にディアナが一義との試合を申し込むと、魔法剣士は一も二も無く首肯した。


 そんなこんなで王都ミストの王城の修練場で一義と魔法剣士との試合が行われる運びとなった。


 何でこんなことに……と思ったのは一義。


 対する魔法剣士は爛々と目を輝かせていた。


 どうやらディアナにいいところを見せたらしい心根が透けて見える。


 訓練していた兵士たちは魔法剣士の命令によって修練場の端に追いやられ、五十メートル離れて対峙する一義と魔法剣士とを見定める。


「姫々、和刀を出して」


 そう姫々に命令する一義。


「はい……ご主人様……」


 答えて姫々は背中に手をまわしてどこからともなく和の国の刀……和刀を取り出すと、それを一義に手渡した。


「ん。ありがと」


 そう言って姫々の頭を撫でると、


「いえ……ご主人様のためですもの……」


 顔を朱に染めて姫々は言うのだった。


 そして姫々は一義から離れる。


 一義と魔法剣士が距離を取って対峙する。


 ちなみに鎧を装備しバスターソードを持っている魔法剣士に対して、一義は王立魔法学院の制服に和刀である。


 一義の率いる混成一個旅団以外の……修練場の兵士たちは誰もが魔法剣士の勝利を疑わなかった。


 そして、


「始めっ!」


 との言葉が発された瞬間に、


「っ!」


 一義は袖に隠したクナイを取り出し、


「ファイヤーボール!」


 魔法剣士はファイヤーボール……炎の塊の弾丸を超音速で撃った。


 一義は取り出したクナイをファイヤーボールにぶつけて故意に爆発させると、その閃光と煙を陰にして高く……とても高くジャンプした。


 魔法剣士はもうもうと立ち込める爆発の後の煙を見て呆然としており、宙に身を置いている一義を見ようともしない。


 そして一義は空中でスラッと鞘から和刀を取り出すと、魔法剣士の背後に着地……刀を魔法剣士の首筋に当てて、


「王手だね」


 と言った。


「「「「「っ!」」」」」


 絶句する衆人環視。


 一人を除いて誰もが一義の勝利を認めた。


 認めていない一人は……当然魔法剣士だ。


 舌打ちをしながら魔法剣士は体勢を反転させるとバスターソードを振るった。


 それを和刀で受け止める一義。


「あの~……もう試合、終わりましたよね?」


 そうのたまう一義に、魔法剣士は「まだだ」と否定してバスターソードを振るう。


 それは洗練された剣捌きであったが皮肉だろうか……大艦魔法主義の発達した大陸西方の剣術は、侍や忍と言ったアナログな文化を持った大陸東方の剣術に敵うわけもなく、魔法剣士の斬撃はすべて一義の和刀にはね返された。


「!!!」


 それでもバスターソードを振るう魔法剣士の……その懐に一義は飛びこんで、


「ヒュッ!」


 と独特の呼吸をし、魔法剣士の胸当ての上から打撃をくわえた。


 苦悶の呻きを上げて嘔吐する魔法剣士。


 その飛沫を避けるようにバックステップする一義。


 ぜえぜえと息をし、嘔吐しながら一義を睨みつける魔法剣士に、一義は肩をすくめることで応えた。


「勝負あり!」


 との言葉とともに一義と魔法剣士の試合は終わった。


 同時に一義の持っていた和刀が薄れて消える。


 姫々の魔術の維持が終わったのだ。


「すごい……すごいすごいすごい! すごいですわ一義様!」


 女王陛下……ディアナは目を輝かせて一義を褒めちぎった。


「まぁ大したことはしてませんよ」


 と謙虚に応じる一義。


「あの高く飛び上がったのが魔術ですの?」


「そうだね」


「その後……相手の鎧に撃った打撃は?」


「あれは鎧抜きといって、鎧の上から心臓を止める技術だよ。無論手加減はしたけどね」


 ガシガシと後頭部を掻きながら一義は説明する。


「すごいですわ一義様……! それほどの腕を持っているのならロイヤルナイトになりませんこと?」


「ロイヤルナイト……ですか? 何ですそれ?」


「国王直属の騎士ですわ。大変名誉な称号ですわよ?」


「遠慮しておきますよ。名誉には興味が無いもので」


 一義は苦笑するばかりだ。


「私では仕えるに不服ですか?」


「ええ、不服です」


 屈託のない一義。


「むぅ……」


 と顔をしかめるお姫様だった。


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