エピローグ
「さて、ではいきますか」
何か、と問われれば、旅立ちだ。
一義は、異国に出る事にした。
地図を広げて、目に止まったのは、大陸最西部……霧の国。
最東部の和の国とは、大陸の反対側。
「ま、こっちには脚もあるしね」
斥力場による加速。
姫々と音々と花々を、一時的に解除して、本来の能力を取り戻している。
矛盾。
全てを弾く矛であり、全てを弾く盾でもある。
尚、ソレによる加速は、超々音速を実現し、大陸とて数日もあれば踏破できる。
「本当にいくんですか?」
生徒……ヒロインたちの目には、寂寥があった。
さすがに大陸の反対側は、異国も異国だ。
一義の超々音速だからこそ気楽にいけるのであって、普通の人間は、どうあっても年単位となる。
「うん」
特に斟酌もしない。
少女に縋られても、意見を変えないのは、さすがと言うべきか。
「王立魔法学院があるらしくって」
「講師を?」
「否」
かぶりを振る。
「そこに入学するつもり」
「入学……」
「ほら、キャパがどうにもだからさ」
今は違うが。
「何かしらの触発が欲しい。そう言うときは旅に出ろと過去に言われた」
「けれども国内で、でしょう?」
「まぁ矛盾を使えば距離なんて有って無いような物だけど」
「ですわね」
「…………」
ザンティピーの視線を受けて、咳払い。
「魔術には底が無いから。得られる物を探すよ」
「出来るのか?」
「さて、それは自分次第」
まこと以て、その通りだった。
「人種差別を受けますよ?」
「いいんじゃない?」
それも文化。
「ここで感傷し続けるのもね」
「感傷?」
「何でもにゃ」
月子については、結局、一切喋っていない一義だ。
思い出は、自分の中に。
そしてかしまし娘だけが、ソレを共有出来る。
月は夜になれば、必ず空に現われるのだ。
忘れられるはずもない。
忘れたいと思う事ほど、人は明確に思い出す。
「慰みなら……わたくしたちが……」
「然程でもないかなぁ」
超嘘つき。
「先生が生徒に……」
「劣等生だけどね」
超嘘つき。
「ご一緒は?」
「邪魔」
一言で介錯した。
「新天地には何が待っているか」
ドキドキワクワクだ。
かしまし娘も、事前の討論では、そんな感じだった。
「あう」
「なにか……あれば……」
「泣いて帰ってくる」
「その時は?」
「誰かの胸で泣くかもね」
クスッ、と笑う。
「約束です」
「口頭契約で良いのなら」
どこまでも減らず口をたたく一義だった。
「さて、じゃあいきますか」
クルリと背を向ける。
半回転で、白い髪が揺れる。
「先生」
「先生……」
「一義先生!」
「あう。先生」
「一義講師」
「…………」
「一義先生」
「何?」
「お達者で」
「そっちもね」
次の瞬間、一義は跳んだ。
一瞬で、ヒロインたちの視界から、消え失せる。
矛盾だ。
遅れて聞こえた、パン、と鳴る衝撃波は……スタートの合図かも知れなかった。
カラフルハーレム譚の。
丁度時間と相成りました。
「いけない魔術の使い方~カラフルハーレム譚~」……如何だったでしょうか?
少しでも楽しんでいただければ、これに比する幸福はありません。
お出口はあちらになります。
なお、感想や評価など頂戴できましたら望外の極みにございます。
では、また別の形での出会いをお待ちしておりますノシ




