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思えばいと疾し06


「ほほう。銃の」


「取り扱い」


 ある意味、収まるところに収まった、というべきだろう。


 銃の構造理解には明るいため、そちらの商売には強みだ。


 その知識は、姫々が出発点となっている。


 銃をハンマースペースから取り出す魔術。


 凶悪なソレだ。


「まぁ銃くらいなら」


 といえる花々が規格外なだけである。


 ヅケ丼と海藻サラダ。


 今日のメニューだ。


 タバサも一緒にする。


 咀嚼。


 嚥下。


「先生の料理は美味しいですね……」


「恐悦至極です」


 姫々の謙遜。


 食後の茶を飲んで、


「じゃ、温泉に行こっか」


 と一義が言う。


 着替えとタオル。


 それから水着。


 平然と付いていくかしまし娘。


「え……?」


 とタバサ。


「何か?」


「一緒に……入るんですか……?」


 一義には今更だが。


「何なら一緒に入る? 水着厳守だけど」


「いいん……ですか……?」


「いいんじゃないかな」


 そっけない一義だった。


 というわけで、


「ふえ……」


 困惑しながらも、タバサも混浴。


 一義が、濡れた墨色の髪を撫でる。


「綺麗になったね」


「えへへ……」


 おべっかに喜ぶタバサ。


「先生に恋人は……?」


「片思い」


「片思い……」


 一義が?


 それは確かに疑問だ。


 月子の事情を知らねば、


「有り得ない」


 と一蹴できそうな話ではある。


 何せ不世出の美少年だ。


 才気煥発で最凶最悪。


「選ぶ側……でしょうに……」


 とはいうが、


「まぁねぇ」


 一銭にもならないため、月子については話さない。


「とりあえずはタバサがしっかり生きているならそれ以上は無いよ」


 クシャクシャ。


 髪を撫でる。


 そんな感じで一時を過ごすのだった。


 後日、王都の城に銃を納品して金銭を得ると、発注先として国王に信頼され、さらに地位を確立するタバサだった。


「どこまで人は殺人を突き詰めるのか?」


 文明の命題だ。


 誰しも平和を望みながら、けれども時に武器を取る。


 原始人なら石斧で、現在では剣や弓や銃と為る。


 あるいは魔術も此処に含まれるか。


「姫々の劣化コピー」


 と評したのは花々だが、


「あながち冗談に聞こえないのが」


 そう一義は頬を掻く。


 帰りの際にまた団子茶屋に寄って、一義に団子と茶を奢って金銭を落とし、タバサは、また本社に戻る事と相成った。


「結果どうなるか?」


 そこまでは責任を持てない。


 犯人は裁けても、凶器は起訴できない理屈だ。


「誰にとっての誰が」


 かは議論の余地があろうとも。


「お団子……美味しいですね……」


「僕のお気に入りだよ」


 なのでかしまし娘が働いているのだが。


「姫々先生のお茶は相変わらず」


「美味しいよね」


「はい」


 座学庵祭を思い出すタバサだった。


 茶の淹れ方を指導する姫々。


 眩しく映った事だろう。


「とやかく言える立場ではないけど」


 茶を飲みながら、一義は言う。


「息災で」


「お互いに……」


 南無。


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