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思えばいと疾し04


 警邏隊の実習訓練。


 何故か……一義は、其処に混じっていた。


 各々の大名が、名を競って派遣したつわもの……その沽券を賭けた争い。


 基礎的な訓練で能力を量り、それから模擬戦と相成る。


「ふむ」


 と、吐息をつく一義。


 襲ってきた兵士を、軽くあしらっている。


 特に力も込めず、闘牛士のようだ。


 闘牛の文化は、和の国にはないが。


 相手は、能力値で言えば十分だが、体術に理が存在しない。


 魔術は、肉体強化のソレだったが、ソレを使って尚、一義が手加減する始末。


 やいのやいのとやって、中指一本拳人中打ち。


 さすがに本気で撃てば死ぬので、控えめではあったが。


「何処の警邏隊だ?」


 とは、訓練に参加した兵士たちの共有する処だが、


「まさか団子茶屋を根城にするニートです」


 とも言い難い。


 とりあえずは、


「ステファニーの推薦人物」


 ということで通した。


 一義と同様、ステファニーも、またレベルの高い魔術行使で、模擬戦を有利に位置取っていた。


 評価が高ければ、所属する城もまた誇らしいため、色々と苦労させられる。


 一義は、


「ほう」


 と感嘆した。


 斥力場の扱いに、淀みが少なくなっている。


 突進してくる兵士を、全面的に弾く事をしない。


 足下に地雷のように仕掛けて、バランスを崩す。


 倒れる兵士……その体勢の立て直しを、否定する。


 崩れ落ちたところに、拳を一撃。


 斥力場で拳を加速させるため、威力も十分。


 斥力場の、根幹にして奥義。


 局所展開を、身につけていた。


 一義のレベルには達していないにしても、年齢を考えれば、十分に怪物だ。


 模擬戦は適時行なわれ、一義とステファニーは、王都の警邏隊ですら相手にしない成績を残す。


 メンツ丸つぶれだが、どちらかといえば、兵士の持つイメージは、好印象だった。


 碧色の乙女。


 それも美少女。


 そんな彼女が、誰よりも強い。


 魔術は文明にあれど、別種のファンタジーと言えたろう。


 一義も一義で、えびすながらに美形で有るため、一部尊崇を集めている。


 最終的に、一義とステファニーの模擬戦が、実習訓練の最後となった。


「先生の胸をお借りします」


「おっぱい無いんだけどなぁ」


 一義の方は、平常通りだった。


 開始の合図と同時に、二人は間合いを詰めた。


 斥力場は、目に見えない。


 何処に、どう展開されるか。


 見切るのは難しいが、それは両者に言える事。


 タタン、と、音が鳴る。


 拳。


 足刀。


 踵落とし。


 受け止め、弾き、攻め、弾かれる。


 一義は天井に、足を付けた。


 それだけで、兵士たちは、驚愕する。


 雷光一閃。


 落下して、跳び蹴りを繰り出すが、


「…………」


 無詠唱で自身を弾き、回避するステファニー。


「ふ」


「は」


 どちらともなく、笑った。


 一義は首をコキコキ鳴らして、


「よくぞそこまで練った」


 教え子を、褒める。


 青は藍より出でて藍より青し……とはいかなかった。


 斥力の取り扱いは、さすがに一義の方に、一日の長がある。


 長丁場の展開にはなったが、結果として一義が勝者となった。


 結果、


「警邏隊に所属しないか?」


 とスカウトされたが、


「働きたくない」


 などと、割と破綻した意見で、袖にする一義は、物悲しかった。


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