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思えばいと疾し03


「警邏隊。エリートだねぇ」


 花々は、


「感慨深い」


 と口にした。


「いつの間にか音々より大っきくなってるし!」


 幼女のままの音々であるから、致し方ない。


 普通の人間は、加齢と共に成長し、劣化するのだ。


「先生方のおかげです」


 碧色の瞳が、照れを見せる。


 今夜は、一義たちの宿舎に泊まる事になった。


 夕飯は魚料理。


 刺身と煮物。


 頭焼き。


 姫々の料理の手腕は、職人にすら負けていない。


「美味しいです。さすが先生」


 至福の言葉だった。


「折角ですから先生方も参加しませんか?」


「何に?」


 聞いたのは音々。


 他三人は概ね察している。


「守護強化実戦訓練……と呼ばれる要するに実技訓練ですね」


「一応仕事が別にありますので」


 やんわり、かしまし娘は断った。


「一応仕事が別にありますので」


 やんわり断る一義に、


「嘘を堂々と付かないでください」


 ステファニーの目は据わっていた。


「先生って言う基準があると、戦力の模範にしやすいんですよ。レッツゴーです」


「めんどい」


 無精。


 一言で述べれば、ソレだけ。


 かしまし娘も、ステファニーに賛同した。


「むぅ」


 と唸って、


「死者が出なければ良いけど」


 かなり物騒な事を口にする。


「一応訓練ですので安全でしょうけど」


 そもそも、各大名たちの懐刀を集めて、殺し合いをさせれば、純粋引き算で、和の国の戦力が目減りする。


 必然、温和な訓練で、それぞれの大名のパワーバランスを確認する場だ。


 王都の警邏隊は、強者たちばかり。


 そこに各地の大名がどれだけ善戦できるかがお題目で、ある種の間接的な武力衝突の側面を持つ。


「聞くだにやる気が無くなる」


 平常運転の一義だった。


「まぁまぁ」


 と言われて渋々参加。


 とりなしは後日として、ステファニーが名刺を切って口を効く事になった。


「では」


 と夕食の片付けが終わって、


「お風呂の時間ですよご主人様」


「南無三」


「一緒に入られるので?」


 困惑するステファニー。


「何時もの事だよ」


 大体四人で、近場の温泉に入るのが普通になっている。


 無論一義が望んでの事だが、精神的には疲労もある。


 ある意味、


「慰みであり慰みでなし」


 との論評。


「私もご一緒しても?」


「勿論」


 と姫々が頷いて、


「水着着用だから」


 と一義が念を押した。


 肉付きが良くなっていたため、花々の水着を借りる。


 そして混浴。


「背徳感がありますね」


 緊張しているらしい。


「そういえばまだ処女だっけ?」


 言葉にはせず一義は思う。


「女子で若くて美貌持ちで警邏隊」


 男に不自由していないだろうに。


 とは言う物の恋慕は方程式で表せない。


 永い時間の果てに、


「一義」


 という光に眼が焼かれたら、その色以外受け付けなくなるのだ。


 ハーレムの前段階。


「えへへ」


 すり寄るステファニー。


「そんなに僕が好き?」


「大好きです!」


 元気よくステファニーは応えた。


「さいでっか」


 寝るときも、一義の隣を、かしまし娘が開けてくれるのだった。


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