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それから三年後02


「ふっ」


「…………」


 乙女なお年頃の、ステファニーと、ザンティピー。


 二人は、空中を駆けていた。


 斥力場の発生。


 展開と座標指定。


 力の作用とその加減。


 パパンと音が鳴る。


 超音速での天翔。


 その通りに機能する。


「お見事」


 賛辞と拍手を、一義は送る。


 実際に、一義の領域には、いる。


 あくまで、


「現時点の」


 と必須事項を書き加えれば、ではあるが。


 一義自身も、無詠唱非儀式で、斥力場を発生させられるため、立場としては同格だろう。


 生憎と、


「フィジカルを混ぜるなら」


 が、条件なら、まだまだ力量差はあるが、


「人を傷つける人間になって欲しくない」


 は一義の思うところだった。


 そういう意味で、


「天翔」


 斥力場による空間の推移は健全だが、


「問題は」


 嘆息、


「ザンティピーだよね」


 杏色の美少女。


 先述したが、既に幼女ではない。


 立派な美少女だ。


 寡黙にして、声を聞いたこともない。


 失語症かどうかはわからない。


 というより、まだ、この世界の文明に、精神心理学が存在しないため、


「心理精神による肉体負荷」


 は認識もされていない。


 閑話休題。


「…………」


 ザンティピーは、空中を駆けながら、様々な魔術を行使してのけた。


 四大属性。


 五行生剋。


 キラキラと、虹色に光る、様々な現象。


 その覚えの速さは、戦慄に値する。


 エルフより短い寿命の人間としては、異例の熟達さだろう。


 まだ美少女でありながら、器用に魔術をこなす。


 設定年齢はともあれ、外見年齢で言えば、音々と比肩しうる。


 ただ、攻撃魔術の出力は、まだ音々に追いついていないが、


「それも時間の問題」


 一義の戦慄は其処に有る。


「…………」


 講義の時間が終わると、ザンティピーは一義に寄りそう。


 杏色の髪が擦りつけられる。


 杏色の瞳は、


「褒めて褒めて」


 と懐いた猫のような彩を見せる。


「すごいねザンティピーは」


 一義が撫でると、


「…………」


 語らないにしても、穏やかに目を細める。


 至福らしい。


 恋に恋する恋乙女。


 四年も一緒に居た異性。


 ザンティピーが『その特性』から、音々ではなく、一義を選んだ理由が、コレだ。


 エルフ特有の美貌。


 練られた肉体。


 愛らしい御尊顔とは乖離した戦闘力。


 その一環である天翔。


「むぅです」


 膨れるステファニーを無視して、


「…………」


 ギュッと一義を抱きしめる。


「可愛いねザンティピーは」


 杏色の髪を、そのまま次の講義まで、撫で続けるのだった。


「先生!」


「何?」


 ステファニーが言う。


「私も天翔が使えるようになりました」


「だね」


「褒めてください」


「偉い偉い」


 抱きついてきたステファニー。


 その碧色の頭を撫でてやるのだった。


「えへへぇ」


 ちなみに、


「ご主人様の本気はこんな物ではありませんけどね」


「全く全く」


「だぁねぇ」


 かしまし娘は悟っていた。


 一応、


「口にチャック」


 と掣肘はしているが、一義の能力は、天翔のソレでは実はない。


「使う日も来ないだろう」


 そんな楽観論も覚える一義ではあったが。


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