傷心者と小心者12
「その……宜しく……お願いします……」
「お願いします」
姫々は墨色の少女と鉛色の少女を相手取っていた。
前者がタバサ。
後者がアーシュラだ。
タバサは引っ込み思案で、アーシュラは快活。
そしてどちらもが姫々を、
「先生」
と認識した。
「それで……ええと」
姫々はあまり魔術を意識していない。
が生徒二人は姫々に用があった。
「その……銃を……魔術で……」
「まぁそうですね」
ハンマースペース。
無尽蔵の質量生産。
ヒョイヒョイと背中からマスケット銃を取り出す。
「それ……覚えたいです……」
「物騒なだけですよ?」
「でも……」
タバサは銃に興味があるらしかった。
「そちらのアーシュラ様は?」
鉛色の瞳を覗き込む。
「先生のハンマースペースで弓矢は取り出せるかな?」
「可能ですよ」
背中に手を回して元に戻すと矢が出てきた。
「わお」
驚くアーシュラ。
「それが何か?」
「僕は弓手になりたいんです」
「弓……」
「はい」
しっかと頷く。
「けれど」
と続ける。
「矢筒を背負って射るにしても限界は来ます」
「ですね」
「ですから魔術による無尽蔵の矢の生成を会得したいんです」
「で、わたくしですか」
ハンマースペース。
質量魔術は目に見えるだけ想像しやすい。
タバサの銃生成。
アーシュラの矢生成。
なるほど姫々が適任だ。
「ではイメージからですね」
やはりトランス状態は基礎だ。
同時に正常との乖離でもある。
「とりあえず瞑想しましょう」
そこから。
「薬は?」
「大丈夫です……」
「だよ!」
「ソレは宜しゅうございます」
穏やかに姫々は笑う。
まずは魔術の何たるか?
コレを教えねば意味は無い。
「銃の知識と構造。発射過程……ですか」
「僕は?」
「矢は単純なのであまり説明も要りませんね」
肩をすくめる。
「ただバリエーションは必要でしょう」
「バリエーション?」
「折角魔術で矢を造るんですもの。毒矢だったり火矢だったり可能性は無尽蔵にありますが?」
「わお」
アーシュラは目を輝かせた。
「毒矢に火矢……たしかに」
狙撃なら毒矢が。
攻略なら火矢が。
それぞれ力となるだろう。
「まずはライティングからです。千里の道も一歩から」
光。
フォトン。
最も原始的な現象だった。




