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傷心者と小心者02


「ご主人様は自責に過ぎます」


「だよ」


「だね」


 月子は死んだ。


 原因は一義にはない。


 が、肩を貸したと言えないか?


 それはテーゼではある。


「お兄ちゃん?」


「何?」


「何で泣いてるの?」


 言われて気付く。


 一義は泣いていた。


 その心の染み故に。


「違う……これは……」


「月子様を想って……か」


 緑茶を飲みながら花々が苦笑する。


「だけど……っ」


「泣いて良いんです」


 姫々が断じた。


「その悲しみが月子様の価値ですから」


「でも……」


「だから一人で悩まないでください」


「鬱憤は誰かにぶつけるものだよ」


 花々も便乗する。


「音々ならいつでも抱いていいから!」


「いい子いい子」


 一義は音々の頭を撫でた。


「にゃー」


 幸せそうな音々だった。


「むー」


「むぅ」


 不満そうな姫々と花々。


「ほふ」


 茶を飲んで吐息。


「君たちは優しいね」


「それは」


「もう」


「当然だね」


 かしまし娘のレゾンデートルだ。


「ありがとう」


 自慰行為と分かっていても感謝せずにはいられない。


「くあ」


 と欠伸。


「寝ますか?」


「夢を見るのが怖い」


 怯える少年。


 エルフは長寿で若作りだが、それでも一義の精神は少年だった。


「苦労かけるね」


「幾らでも」


「存分に」


「かけてくれていいのさ」


 かしまし娘は相変わらずだ。


「悪夢を見たら慰めて差し上げますから」


「本当に?」


「ええ」


 速やかに姫々は頷く。


「音々も!」


「あたしもだよ。旦那様」


「本当に君らは……」


「頼もしい?」


「だね」


 音々を撫でる。


「ま、おかげで生きていけるんだけど」


「本当に、ですよ」


「お兄ちゃんが死んだら音々たちも」


「あまり褒められた未来じゃないね」


 かしまし娘が一義の魔術である以上、


「一義が死んだら自分らも死ぬ」


 は当然だ。


「そのため?」


「まさか、ですよ」


「だね!」


「旦那様第一義」


「本当に……」


 人の良い。


 とはいえ設計したのは一義だが。


「お茶、美味しいね」


「愛がこもっていますので」


「でっか」


「次は音々が茶を淹れる!」


「楽しみにしてるよ」


 ほんわかと一義は笑った。


「姫々より美味しいよ?」


「わお」


「じゃあその次はあたしだね」


 花々も参戦した。


「そんなに僕に茶を淹れたいの?」


「好きになってもらいたい!」


「だね」


「恐悦至極」


 クスッと一義は笑った。


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