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エピローグ


 一義はいい加減疲れて、


「一刻も早く霧の国に帰る」


 と云った。


 行き場を失ったペネロペと一義に夢を見たローズマリーは一義に付いていくことになった。


 要するにハーレムがまた増えたわけで、


「居残り組にどう説明しよう?」


 そう思案した後、気が重くなる一義だった。


 姫々と音々と花々は再び具現化され一義のお世話をしている。


 アイリーンはにゃははと笑い悠々と霧に国に帰れることを喜んでいた。


 ルイズは元より派遣という形で一義に師事しているため、会おうと思えば何時でも会える。


 かしまし姫は一義をたいそう気に入っていたが、一義が取り込まれることはなかった。


 一義という存在が霧の国と鉄の国において微妙なソレとなるのだが当人は、


「我関せず」


 とあっさり云う。


 クイーンは学院に残った。


 元々が天才教授であるため執務も日常である。


 そんなわけでクイーンとは学院で別れ、ルイズとかしまし姫とは帝都で別れることになる。


 自由気ままを信条とするシャルロットが何をしているかは一義は知らないが、特に心配もしていないし会いたければ向こうから来るだろうというのは信頼の一つだ。


 ついでに非常に微妙な政治的問題であるため一応鉄の国にも事情を説明せねばならず、途中でついでに寄った帝都の城でひとまずのあらましを説明する。


 要するに風の国の第一王子が霧の国の要人を暗殺して鉄の国に罪を着せ、二正面戦争を誘発させようとした。


 以上。


「さすがですわ一義!」


 ハシッとかしまし姫の長女……マリアが一義を抱きすくめた。


「ああ、それで」


 ナタリアは帝都におけるファンダメンタリストの教会の消滅に納得したらしい。


「はわわ!」


 とオリヴィアはいつも通りだった。


「それはわかったが……よく死ななかったの……」


 皇帝は冷や汗をかいていた。


 当然皇帝である以上……そしてシャルロットを通じて……鉄血砦の末路については存分に実感しているつもりだった。


 が、あくまで


「つもりだった」


 に終始する。


 矛盾。


 完全な攻撃と完全な防御。


 その意味する政略的かつ戦略的な価値をさも簡単そうに語られれば冷や汗の一つは垂れようというもの。


 一義としては特別何かを為しえたというわけでもないのだが、これは一義の方が自身の力について(誤解されるのを承知で云うのなら)自覚が無いだけだ。


「とりあえずまぁ」


 風の国に妥協は引き出したから後は自分でどうにかしろ。


 そんな感じで擲って特に鉄の国に何らのフォローもする気のない一義はらしいと云えばらしかった。


「一義は素晴らしいですわ」


 マリアは、


「お気に入りだ」


 と一義を猫可愛がる。


「一義さえ居れば鉄の国が大陸を併呑するのも夢ではありませんわ! 代わりに一義には無制限の権力とわたくしの肉体を差し出しましょう!」


「興味ない」


 天晴れな一義であった。


「でも先生?」


 とこれはナタリア。


「出来れば無詠唱否儀式の魔術を覚えるまでくらいは鉄の国に居て欲しいのですけど……」


「興味ない」


 天晴れな一義であった。


「一義様!」


 これはオリヴィア。


「大好き!」


「僕も気に入ってるよ」


「お嫁さんにして!」


「興味ない」


 天晴れな一義であった。


「むぅ」


 と唸ったのは皇帝。


「我の娘らが要らぬと申すか」


「まぁ有り体に言えば」


 この面の皮の厚さに慣れているのはかしまし娘とシャルロットくらいだろう。


「鉄の国がどこと戦争しようが構わないしね」


「では何故救ってくれた?」


「結果論」


 皇帝を前に一義は不敵だった。


 とはいえ一義と帝都のパワーバランスがどちらに傾いているかは相当の鈍感でもない限り把握するに難解ではないが。


「我としては王族に貴様を迎えたいのだが……」


「特に娘さん方に不満があるわけでは……いやあるか」


「あるのか!」


「口が滑りました」


 ぬけぬけと云う。


「でも面倒なのは事実なんで」


「むぅ」


 とにかくとっかかりすらない。


 その気のない人間を説得するのはネゴシエイターでもない限り難しい作業だろう。


 一義は金銭や権力や名誉には特に興味を持っていない。


 自主宣言によるハーレムは作っているものの、それはあくまで一義を好きになった美少女の集団と云うだけで、例えば霧の国や鉄の国の重鎮と為って屋敷を持ち本当の意味でのハーレムを楽しむような趣味の悪い性癖は持ち合わせていない。


 興味が無いと言えば嘘に為る。


 が、一義の心臓は血流を送っているが、一義の心は出血を呼んでいる。


 今のところ一義の想いはややこしい。


 レゾンデートルにさえ関わる痛烈だ。


 それは誰と共有するつもりもない。


 そんな状態で別の女性を抱けるはずもなかった。


 ある種の不能と言えるかもしれない。


「さて、それでは」


 一義はかしまし娘とアイリーンとペネロペとローズマリーを連れて城を出た。


「とりあえず大変なことに為りましたね……」


 姫々がクスクスと笑う。


「お兄ちゃんは素敵だから!」


 音々はあははと笑う。


「旦那様の人徳だね」


 花々はくつくつと笑う。


「まさか鉄の国にコネクションを持つとは」


 アイリーンがにゃふふと笑う。


「あー……」


「あう……」


 とペネロペとローズマリー。


「本当に……」


「大丈夫……?」


「まぁ大河に一滴って気分」


 他に言い様もない。


「とりあえず言い訳を考えないとなぁ」


 用意されたランナー車に乗りながら一義は穏便な着陸方法に頭を悩ませた。


 乙女の慕情に自覚的である一義だからなおタチが悪いのだが。


 とっぴんぱらりのぷう。


丁度時間と相成りました。

これにて「いけないカラ」の第三話、閉幕にございます。

如何でしたでしょうか?

御帰りに際して少し寄り道していただきコメントや感想等をもらえれば幸いです。

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