いざ王都02
「というわけで……シャルロットを泊めることになりました」
そんな一義の言葉に、
「「「「「…………」」」」」
一義のハーレム……姫々に音々に花々にアイリーンにビアンカは沈黙した。
ついでにジト目である。
ここは一義の住む宿舎の玄関。
ハーレム総出で一義を迎えた後、その後ろをついてきた緑色の美少女ことシャルロットを見ての反応である。
「ご主人様はまた……」
「お兄ちゃん……あのねぇ……」
「旦那様……」
「一義はこれだから……」
「どうしてそうホイホイと美少女を連れてくるんですの?」
「袖振り合うも多生の縁っていうでしょ? さ、あがってシャルロット。姫々、あったかいお茶を淹れてあげて。花々……今日は君の番でしょ? ベッドをシャルロットに貸してあげてね」
「ご主人様がそう仰るなら……」
「旦那様がそう言うのなら……」
しぶしぶ頷く姫々と花々。
「ここは大奥かい?」
銀色と黒色と赤色と金色と青色の美少女を見やって緑色の美少女が言う。
「はは、僕もそんなこと思ってる。奇遇だねシャルロット」
一義はくつくつと笑って、それからシャルロットをダイニングへと招いた。
「シャルロット様、お荷物をお預かりします……」
「ええと、繊細なモノが入っているのでできれば安置しておきたいんだけどね」
「了解しました……。ご主人様……お荷物はやはり花々の部屋に……?」
「そうだね。その方がシャルロットも安心だね」
「ではそのように」
そう言って姫々は花々の部屋にシャルロットの荷物を置いて、それからキッチンに立つと紅茶を淹れはじめた。
一義とシャルロットと姫々を除くハーレムはダイニングテーブルの席につく。
「それでお兄ちゃん?」
「旦那様?」
「一義?」
「一義?」
「なにさ。皆して」
「「「「シャルロットさんとはどんな関係だ?」」」」
「小路で絡まれているところを助けただけだよ」
「この度はどうも。ありがとう一義」
「どういたしまして」
それからシャルロットについて……主に一義との関係性について根掘り葉掘り問いただすハーレムたちに、
「はは、一義は魅力的な男の子だけど僕がハーレムに入ることはないよ。これで根無し草なモノで……」
シャルロットは笑って返す。
「根無し草って……もしかして冒険者?」
そんな一義の問いにシャルロットは首を横に振る。
「ギルドには入ってないよ。僕の職業は運び屋。街から街へ指定された荷物を運ぶのが僕の役目だ。此度はシダラに荷物を運ぶためにやってきたんだ」
「何を運んできたんだい?」
「サンタナ焼きと麻薬だね」
あっさりと答えるシャルロットに、
「サンタナ焼きですって!?」
とビアンカが食いついた。
「ビアンカ知ってるの?」
「はい。大陸西方で唯一の……鉄の国のサンタナにあるサンタナ窯から生成される白磁器のことですわ。霧の国の基準で言うなら五百万ミストはくだらない貴重な白磁器ですの……」
「へえ、物知りだね」
「一応わたくし貴族の出ですので。家に帰ればありますわよ?」
大きな胸を張って誇らしげに言うビアンカはスルーして一義はシャルロットに問う。
「それで? もう一方の麻薬って?」
「この街を仕切ってるマフィアに運ぶ代物だよ。なんでも魔術が使えるようになる薬なんだとか……。まぁ僕は運ぶだけだから中身なんて興味ないけどね」
「魔術を使えない劣等生あたりがターゲットか……」
苦々しげにそう言う一義に、
「そういえば魔術と言えば一義……」
とシャルロットが問うた。
「何さ?」
「さきほど絡まれている僕を助けた時のことなんだけど……どうしてライティングを途中で止めたんだい? たしか……ドラゴンバスターバスター……なんてチンピラは言っていたよね? 君は魔術師なんだろう?」
「そうだけど……僕は九組……劣等生なんだ」
「いや、魔術を発動させた時点でトランス状態を発露させることが出来るということだ。君は劣等生じゃない」
「まさに問題はそこなんだよ」
「どういうことだい?」
「君は言ったね。どうしてライティングを途中で止めたんだいって……」
「うん。それは不可思議だ」
「止めたくて止めたんじゃないんだよ」
「というと?」
「僕はライティングを五秒しか持続できないんだ」
「は……?」
ポカンとするシャルロット。
それは当然といえば当然の反応だった。




