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いけない魔術の使い方16


 決闘の結果は学院を震撼させた。


 魔術を使わず魔術師を封殺する。


 何がソレを可能とするのか?


 様々な議論が起きたが結論は出なかった。


 当たり前だ。


 魔術は脅威であるが故に戦力とされている。


 それを、


「生身で対処される」


 ということは魔術の信仰に対する冒涜だ。


 が一義たちには自然な結果でもある。


 元よりルイズでも可能なことだ。


 ルイズの師匠である一義とて片手間に出来る。


「縮地も使わなくて済む程度に決闘をした学生が未熟」


 それに尽きた。


 学生の一義を見る目が少し変わった。


 未知の恐怖へと。


 元々一義は東夷だ。


 そこに不気味さが付与されれば学生たちの感情も理解は出来る。


「ふーん」


 で済ませる一義でもあるが。


 とりあえず面倒事を終わらせた後、食事を取って風呂に入り、一義は月夜の夜歩きを行なった。


 ファンダメンタリストの刺客。


 脅威を覚えないと言えば嘘になるが、


「まぁへっぽこだし」


 そんな思いも有る。


 夜の街を歩き、月を見上げ、そして感傷に浸る。


 一義の心を縛る鎖。


 少女の形をした何か。


 月子を重ねる。


「ああ……」


 これこそが一義の原点。


 何より貴重な致命傷。


 故に一義は今此処に居るのだから。


「で」


 と一義は闇夜の虚空に声をかける。


「僕に何か用?」


 問う。


「ほう」


 答えは人語だった。


「気づいていたか」


「まぁそこまであからさまならね」


 一義の皮肉。


 多少空気が凍り付く。


「ペネロペは?」


「いるけど?」


 要するに二人の暗殺者に狙われているという事だ。


 ペネロペは藍色の髪と瞳が月光に照らされている。


 もう一人の暗殺者は仮面を被って黒衣を纏っている。


「もはや定番だね」


 いい加減諦めている節もある。


「今日こそ殺す!」


 ペネロペが真っ先に襲いかかってきた。


 毒ナイフを振るう。


 躱す。


 毒ナイフを振るう。


 躱す。


 毒ナイフを振るう。


 躱す。


「意気込みの割には代わり映えしないね」


 そう言った瞬間、もう一人のファンダメンタリストが動いた。


 速度は超速。


 ペネロペより更に速い。


 一義は袖に隠した暗器……クナイを取り出して名も知らぬ刺客の毒ナイフを弾く。


「へえ」


 練られた身体制御。


 得物の扱い。


 さすがにファンダメンタリストの刺客として高水準の威力を持っていた。


 一義はその上を行ったが。


 クナイとナイフが丁々発止。


「フェイにも劣らないね」


 それは賛辞。


「フェイを知っているのか」


「色々ありまして」


 他に応えようが無い。


 上段からナイフが振るわれる。


 一義はクナイで受け止める。


 が、


「っ!」


 一義の頬を刺客のナイフがかすった。


 バネ仕掛けの飛び道具。


 ナイフに仕込まれたカラクリだった。


 スッと一義の頬から血が流れる。


「ほう。赤いのだな」


「まぁね」


 一義は不敵だ。


「ともあれ戦果は挙げた。引くぞペネロペ」


「はい……」


 ペネロペは一瞬だけ一義に同情の眼差しをやって、刺客と一緒に消えた。


「あー……」


 一義は大体を理解していた。


 一義の頬をかすったのはバネ仕掛けで飛び出したナイフの刀身。


 そしてそこには強力な毒が仕込まれている。


 ナイフがかすっただけで死に居たる致死性の毒だ。


「なんだかなぁ」


 一義にしてみれば脅威とも言えない事柄だ。


 ファンダメンタリストの判断は認識としては正しいが現実としては間違えている。


 一義がこの程度の毒で殺されるのならとっくに死んでいる。


 もっとも引いた相手に懇切丁寧に説明する義理もないのだが。


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