いけない魔術の使い方15
昼間は講義をしたり講義を受けたり昼寝したり読書したり食事したり。
やってることがあまり霧の国と変わらない。
こと戦闘という一点に置いて一義はあまりに洗練されすぎている。
そして学院が戦力を育む場である以上、それは一種のイニシアチブだった。
ある時……一義は姫々と音々と花々とアイリーンとルイズとマリアとナタリアとオリヴィアとクイーンとローズマリーを連れて原っぱでお茶会を開いていると、
「銃力!」
と学院の生徒の一人が激昂した。
「何?」
特に感情も乗せない一義の疑問。
「決闘しろ!」
「何で?」
本気で意味が分からなかった。
「銃力が許せないからだ……!」
「何かした?」
自覚の無い一義。
生徒は更にテンションを上げる。
「高貴なる姫殿下を何と心得る!」
「ハーレムの女の子」
素で言うのだからタチが悪い。
「こっちが勝ったら姫殿下を解放して貰う!」
「こっちが勝ったら?」
「好きにしろ」
「じゃあ却下」
「逃げるのか!」
「うん」
特に何とも思っていない一義である。
「だいたいソレで僕に決闘を申し込むのがどうかしている」
淡々と言う。
「それならかしまし姫に直接言えば良いじゃん」
「出来るか!」
「だからって僕に八つ当たりされても」
至極まともな論理展開だが、怒り狂う生徒には通じない。
そんなわけで中略。
「何故こんな事に……」
一義は学院の決闘場に立っていた。
学院の生徒は爛々と瞳に闘志を燃やす。
「何がそこまで駆り立てるのやら」
知識としての理解はあるが実感が伴っていない。
特に勘案すべきことでもないが、面倒に巻き込まれた業については嘆息せざるを得なかった。
「とはいえなぁ……」
呟く。
「女の子たちを無下に扱うのもね……」
結果論だが、そのための決闘なのだろう。
「常道か」
そうには違いなかった。
そして決闘が開始される。
「水よ!」
学生が呪文を唱える。
「竜と成りてそのアギトを敵へ! ウォータードラゴン!」
竜の形をした水が一義に襲いかかる。
「なんだかなぁ」
一義は一歩横にズレてギリギリで避ける。
斥力場を使わなかったのは一種のプロパガンダだ。
「学院の生徒如きに魔術なぞ必要ない」
という。
水のドラゴンは噛みつきを避けられるとキャパに従って虚空に消えた。
ある種、中々強力な魔術なので維持に大量のキャパを使うのだろう。
丁度一義の主義と正反対の魔術の使い方である。
「水よ! 弾丸と成りて敵を討ち貫け! ウォーターバレット!」
今度は水の弾丸が具現される。
「しっかし……」
一義は呆れた。
「呪文が長すぎる」
サラリと一義は水の弾丸を躱す。
ルイズの剣撃の方がまだ速い。
「一々そんな呪文を唱えるの?」
「それが魔術師だろう?」
「まぁね」
反論したかったが言い聞かせても無駄だろう。
そう思い、一義は説得を諦めた。
パワーレールガンを使えば何時でも試合を終わらせられる。
が、あくまで一義は身体能力で魔術を躱す。
面攻撃をされればさすがに対処せざるを得ないが、今のところソレも無い。
水の魔術に特化した魔術師らしい。
それもウォータードラゴンとウォーターバレットの二種類しか使えない。
「よくまぁこれで」
一義の感想だ。
同時にハーレムの感想でもある。
一義はスルリスルリと学生の魔術を避けて歩み寄っていく。
学生は距離を取りながら魔術を放つも梨の礫。
「……っ!」
終には決闘場の壁まで追い込まれた。
「さて……どうするの?」
一義は問うた。
「こんな事は有り得ない!」
学生は混乱していた。
それなりの自負とプライドを持っているらしい。
その全てを片手間に対処されれば自己同一性を否定されるようなものだ。
「貴様! 何かズルを……っ!」
「してるなら審判が止めるさ」
「こんな事は有り得ない!」
「さっきも聞いたよ」
一義は学生の首を絞めた。
頸動脈を抑える形で。
血の巡りに致命的な支障が出て学生は失神する。
決着だった。




