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いけない魔術の使い方08


 次の日。


 一義は学院の道を歩いていた。


 シャルロットとナタリアを連れて。


 当然他の女の子たちもついて行こうとしていたが、


「勘弁してください」


 と一義は深く一礼した。


 既に此処に居るだけで一義は女性を洗脳する魔性の東夷という認識を受けている。


 洗脳では無いが乙女を恋に落とすと云う意味でなら魔性にも頷けるのが現実だ。


 実際の所、一義は洗脳系の魔術は使えないのだがエルフ特有のシュガーフェイスは乙女を恋と云う名の暗示にかける。


「シャルロットはいいの?」


 着いてきている一人に問う。


「久しぶりに君の魔術が見たい」


「でっか」


「ナタリアは? 軽蔑しないの?」


「先生がそれだけ魅力的と言うことです」


「嬉しいこと言ってくれるねシニョリーナ」


「先生の価値が分かる人間だけが先生の傍に居れば良いんです。知らない人間の幼稚な悪意程度でへこたれる先生でもないでしょう?」


「それはその通りなんだけど……」


 とりあえず王族権限で人払いを済ませた魔術訓練場の一つを借りる一義たち。


 ナタリアの魔術指導だ。


 シャルロットは野次馬だがハーレムの中でも最も小気味よい関係を築いている女の子であるから一義の心労的肩こりには繋がらない。


 ちなみに逆はディアナとかしまし姫殿下である。


「王族が東夷に心を預けるのもなぁ……」


 そう思ってしまう。


 ナタリアの心労にならないよう言葉にはしないのだが。


 とりあえず衆人環視の視線は無視して道を歩いていると、


「馬鹿かテメェは!」


「能無しが!」


「お前如きに解放するわけ無いだろうが!」


 数多ある訓練場の一つで悶着が起こっていた。


 男女四人が一人の少女を言葉と暴力で責めていた。


 一義は、


「へぇ」


 と気を惹かれた。


 テンプレートのようなモブ虐めっ子は眼中にない。


 一義が認めたのは虐められっ子の方だ。


 蒼穹の髪と瞳。


 どちらかと云えば鉄の国より霧の国に通用しそうな美貌。


 一義としても美少女であることは大前提として、それでも(かしまし娘を除けば)霧の国のご尊顔の方が好みだったりする。


 澄んだ青色の瞳は涙を溜めていた。


 当然一義が放っておくはずもない。


「これこれ。亀を虐めて何とする?」


「ああ? 他人が口出しするんじゃ……っ……ナタリア殿下!?」


 一義に寄り添っている姫殿下に大層驚く虐めっ子たち。


「げほ……」


 蒼の美少女は切ったのか血を口の端から垂らして咳をした。


「さて」


 ナタリアはニコニコ。


「何か言い訳は?」


 無言のプレッシャー。


 腐っても鯛と言うことだろう。


 鉄の国の国民にとってナタリア殿下の機嫌は天気のソレすら凌駕する。


「いや、その……」


 虐めっ子たちはしどろもどろ。


「当然あなた方が他者に暴力を振るうというのなら暴力を振るわれても文句を言われる筋合いはないよね?」


 正論で詰め寄るナタリア。


「き、聞いてください!」


 虐めっ子たちは必死だった。


 場合によっては文字通りに必死になるかもしれなかったが。


「こいつ霧の国の出身なんすよ!」


 ビシッと蒼色の少女を指差して弾劾する。


「それで?」


「敵国の人間がこっちの魔術を盗もうとするのは間違っているでしょう!」


「それで?」


「鉄血砦だって霧の国が攻め滅ぼしました!」


「それで?」


「つまりコイツはスパイで敵って事です!」


「それで?」


「あ……う……」


 言い訳の言葉がそれ以上思いつかないらしい。


「で、どう思います先生?」


「無性に罪悪感が……」


「銃力……!」


 虐めっ子たちが戦慄した。


「銃力……?」


 蒼色の美少女も困惑した。


 瞳から透き通った涙が零れた。


「とりあえずギロチンと電気椅子とアイアンメイデン……どれが好みでしょう?」


 有無言わさずとナタリアは言った。


「ごめんなさい! 勘弁してください!」


「そう言ったそこの少女をあなた方は許しましたか?」


「二度と手を出さないので!」


「ではあたしもあなた方を処刑した後、二度とあなた方に手を出さないと誓いましょう。それなら良いですよね?」


 もはや悪鬼羅刹の如しであった。


 とりあえず今回に限っては懲罰委員に話を持ち込んで学院側の処分で済むのではあったが。


 一義たちは蒼色の美少女を保健棟に連れて行く。


 ベッドに寝せると、一義はカーテンの外に出る。


 服を脱がせて少女の症状を診るためだ。


 打撲のみ。


 骨折はしていないとのこと。


 治癒魔術で保健棟の講師が傷を治した。


「ありがと……ございます……」


 それがローズマリーとの出会いだった。


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