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三人の姫は23


 とりあえずペネロペの件については解決した……わけではないが不問とした。


 ファンダメンタリスト。


 ヤーウェ教原理主義過激派。


 大陸に根ざす教会の闇である。


「で」


 一義は言う。


「何故そんな輩に狙われにゃならんのか?」


 と。


「ご主人様は……」


「あまりにも!」


「危険だからね」


 いつも通りのかしまし娘だった。


「アイリーンがいるのに?」


「将を射んと欲すれば……じゃないかな?」


「けどアイリーンが生きてれば取り返しがつくよ?」


「それは……」


「そうだけど」


「ふむ……」


 かしまし娘も思案に暮れるのだった。


「仮に僕が殺されたらどうなる?」


「「「ファンダメンタリストを殲滅する」」」


「出来ないでしょ?」


「「「むぅ」」」


 少なくとも姫々と音々と花々には無理難題だ。


 一義が死ぬことがイコールでかしまし娘が死ぬことに相違ないのだから。


「でもアイリーンとルイズもそうですよね……?」


 姫々が確認すると、


「それは」


「もちろん」


 特に気後れ無く二人は頷いた。


「わたくしも参加しますわ」


「あたしもね」


 マリアとナタリアもそう云った。


「不肖私も」


 これはクイーン。


 朱色と緋色と茶色の瞳に嘘はなかった。


「本当にいいのだろうか?」


 一義はそう思う。


 もはやハーレムの規模があまりに大きくなりすぎて、管轄外の影響まで出そうな雰囲気であった。


 それについて責任を負いかねる一義でもあったが。


 とまれ、


「僕を殺して得することと云えば」


 そこまで考えて、


「?」


 と首を捻る。


 どうしても解が得られない。


 たしかにハーレムは驚異的だ。


 だがそれは個人個人の力であって一義の物ではない。


 もっとも一義のためになら力の行使を躊躇わない女の子たちであるため、一義と全く関係がないではないが、


「それとこれとがどう繋がる?」


 が一義の疑問だった。


 それはハーレムもそうだ。


「ま、考えてもしょうがないか」


 そんなわけで、


「講義を続けよう」


 一義は本を片手にそう云った。


 今はナタリアの魔術講義の時間だ。


 部屋には一義とかしまし娘……アイリーンとルイズとマリアとナタリアが居た。


「で、魔術の方は?」


「さっぱりです」


「ふぅむ」


 一義は思案する。


「とりあえず」


 と一義は言う。


「スペースヒートは取りやめよっか」


「なして?」


「イメージしにくい。結局のところ無詠唱否儀式で魔術を行使するならイメージしやすい方が良い」


「ではどうしろと?」


「炎をイメージして念じる方向で行こう。ソレが出来てからスペースヒートの練習と云うことで」


「ふむ」


 クイーンにも一理あった。


「クイーンはどう思う?」


「良いと思いますよ」


 サックリ。


「じゃ、その方向で」


「はい」


「集中」


「はい」


「顕現」


「無理」


「ですよねー」


 すぐに使えるなら世話はない。


「ところで……」


 これは一義。


「そちらの紅色の瞳は何でしょう?」


「はわわ!」


 パタンと講義室の扉が閉まる。


「あー……」


 ナタリアがむず痒そうに声を伸ばす。


「ですわね」


 マリアも似たような反応であった。


「誰?」


 そんな一義たち。


「第三王女……オリヴィアですわ」


 いともあっさりとマリアは云った。


「第三王女……ね」


 他に言い様がないのも確かだが。


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