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三人の姫は03


「よく戻ったルイズ。剣は冴え渡っているか?」


「それはもう」


 開始のジャブはそんな感じ。


 皇帝はルイズに一定の信頼を寄せているらしい。


 その皇帝の瞳が金色を映す。


「よくもおめおめと顔を出せたな」


 アイリーンに対してだ。


 元々の宮廷魔術師であることを放棄し、無断で霧の国に亡命したのだ。


 皇帝の皮肉も分からないではない。


 が、


「特に憂慮することでも無いですので」


 アイリーンは歯牙にもかけなかった。


 スッと皇帝の目が細くなる。


 アイリーンの心理を探っているのは明白だ。


「私の前に顔を出せば拉致監禁されるとは思わなかったのか?」


「やれるものならどうぞ?」


 やはり柳に風だ。


「そちらの東夷を人質にすることも出来るな」


「死にたいのならどうぞ?」


 やはり暖簾に腕押しだ。


「先に断っておくと……」


 一義が白髪の頭をガシガシ掻いて、


「今危機的状況にあるのはそっちだって分かってる?」


「ほう?」


 皇帝は、


「面白い」


 と一義を睨む。


「よくぞほざいた!」


 一義たちの拝謁を見ていた将軍の一人が剣を抜き放つ。


「さきからの不遜! あまりに目に余る! 皇帝陛下を蔑ろにするその不敬……貴様らの血で贖って貰おうか!」


「そうですか」


 一義がそう言った瞬間、剣を抜いた将軍がいきなり直上に吹っ飛び天井に頭部を激突させた。


「……っ!」


 言葉も無く気絶し、今度は逆再生のように地面に落下。


 結果として頭から血を吹いてぐったり倒れた。


「っ!」


 皇帝の護衛たちに戦慄が奔る。


 とはいえそれは危機感と言うには攻撃的だ。


「陛下のためなら命も要らぬ」


 という覚悟。


「良い部下をお持ちで」


 一義はニッコリ笑った。


「ああ、自慢の強者たちだ」


 皇帝も特に怯むことは無かった。


「それで」


 と皇帝。


「私を殺すために参上したのか?」


「いいえぇ。皇立魔法学院が目的です」


「アイリーンは譲り渡して貰いたいのだが……」


「僕に言われても困るよ」


 気安く両手を挙げる一義である。


「アイリーン?」


「先にも言いました。私にその気はありません。無理矢理を通すつもりならそれ相応の覚悟を持って挑んできてください」


 宣戦布告にも等しい。


 少なくとも一義たち側にとっては気楽なものだ。


 一義が害されてもアイリーンの反魂でどうにかなる。


 アイリーンが無力化されても矛盾が無理を通す。


 ウィンウィンの関係。


 だからこそアイリーンは憂い無く皇帝と面会できるのだ。


「待遇は応相談だが?」


「特に興味はありませんね」


「むぅ」


 唸る。


「そんなに殺されたいか!」


 将軍の一人がまた激昂する。


 シャランと剣を抜く動作は自然で、それなりの使い手であることは読み取れる。


 が、


「…………」


 パァンと空気の弾ける音がする。


 姫々のマスケット銃だ。


 脚を打ち抜かれる将軍。


 マスケット銃は虚空に帰る。


「動脈を貫きましたから急いで処置をしないと死にますよ……?」


 もはやこの場の支配者が誰なのか。


 明確に分かるやりとりだった。


「というわけで平和裏にアイリーンを諦めて貰えれば幸い」


 ニコッと一義は笑う。


「断ると言えば?」


 皇帝としての維持だろう。


 心情はどうあれ不敵な態度は表面上崩れなかった。


「まぁ反魂を求めて魂を捨てるって云うのも面白い童話になりそうではあるんですが……」


 元々皇帝はダモクレスの剣に恐れを抱いてアイリーンを囲っていたのだ。


 その死への忌避感がアイリーンの信服を冷めさせる因子だったのだが、それを皇帝は覚っていなかった。


 結果として一義と巡り会ったのは何をかいわんや。


「人の縁はよく出来ている」


 以前一義はそんなことを呟いていた。


「冗談だ」


 皇帝は武威を押さえた。


「娘たちがそなたに興味を持っているらしくてな。今のところ害する気は無いぞ」


「重畳だね」


 軽やかに笑う一義と、


「むぅ」


 新たな女の子の気配に警戒するハーレムの女の子たちであった。


 特に勘案する一義でも無いが。


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