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いざ鉄の国15


 ホテル。


 その二人部屋。


 キングサイズのベッドに花々と二人で並んで寝ていると、金属音が都市全体に響き渡った。


 鐘の音だ。


 一義と花々の超感覚にははた迷惑な音量である。


 もっとも警鐘が都市全体に響くためには大音量を必要とするのは分かっているが。


「何事か?」


 もっともな一義の疑問。


「さぁて」


 花々も当然起きている。


 そこに、


「市民の皆様」


 脳に直接思念が入り込んでくる。


 テレパシー。


 そう呼ばれる技術である。


「東北からリッチと死者の軍勢が迫ってきています! 今すぐ避難を! 繰り返します! 今すぐ避難を!」


 カランカランと警鐘がなる。


 とりあえず何かしらの問題が発生したのは一義も花々も読み取れた。


「何だと思う?」


「りっちとか言っていたね……」


 大陸東方の出である二人には縁の無い言葉だ。


「ご主人様!」


「お兄ちゃん!」


 部屋の扉がかしまし娘によって叩かれる。


 一義は部屋に招き入れた。


「警告は聞こえましたか……?」


「うん。まぁ。一応ね」


 姫々の確認に一義は頷く。


「死者の軍勢が迫ってきてるって!」


「だってね」


 音々の言葉に一義は答える。


「たしか……」


 と姫々。


「《りっち》……などと言っていましたね……」


 そこで一義とかしまし娘は残る二人……即ちアイリーンとルイズに視線をやる。


「知ってる?」


 コレは一義の言葉だが、かしまし娘の総意でもある。


「大陸東方にはリッチは出ないのですか?」


 冷や汗をかきながらアイリーンが問う。


「少なくとも僕は聞いたことがない」


 即ち等式でかしまし娘も知らないのが結論だ。


「あはは……」


 ルイズは引きつった笑いだった。


「で?」


 と東方四人で一番冷静な花々が話を促す。


「リッチって?」


「亜人の一種です」


「亜人……」


 これは一義。


 当人も花々も亜人なのだから今更ではある。


「何かマズいの?」


 そんな楽観論の音々に、


「亜人の中でも特上にタチが悪いアンデッドです」


「アンデッドって言うと……」


「文字通り不死身の怪物です」


「不死身……」


 今のところそれを再現する技術も魔術も存在しえない。


 ほとんどお伽噺を聞いているような心境だ。


 一義とかしまし娘は……だが。


「あらゆる物理攻撃が痛痒とならず……欠損は即時再生……心臓を潰しても死なない……そんな存在です」


「うへぇ」


 一義の口がへの字に歪んだ。


 さもあろう。


「トロールやヴァンパイアもアンデッドに分類されますが……あちらさんは条件付きの不死であるのに対しリッチは本当に死を超越した存在なんです」


 アイリーンが滔々と語る。


「死者の軍勢というのは?」


「リッチの能力ですね」


「ヴァンパイアみたいに同族を増やすの?」


「少し違うね」


 ルイズが訂正する。


「リッチの認識範囲内で世界に記録されている死者のソレに実体を与えて顕現させる。要するに死人を復活させる技術だよ」


「反魂とは違うの?」


 一義はアイリーンに視線をやる。


「あくまで私の反魂は死体を治癒することで再復活させるだけです。ですがリッチのソレは骨になった死体や、もはや物理的に消失した死人の記録まで読み取って具現化……結果論として完全な死者の復活を可能とします」


「良い事じゃん」


「死者がリッチに従属せざるを得ず、その過程で生きている人間を襲わなければそうでしょうね」


「あー……」


 ここに来て、


「リッチがどれほど厄介なのか?」


 肌で感じる一義だった。


「本当の本当に不死身なら倒す術は無いの?」


「あります」


 アイリーンが答えた。


「どうするのでしょう……?」


 姫々が尋ねる。


「聖火……浄化の炎でリッチを焼けば滅ぼせます」


「形而上的だね。で、その聖火とやらはどうやって調達すれば?」


「教会の使徒が使えますよ」


「なら教会に任せるしかないんだね」


「あのー……」


 とアイリーンが挙手。


「私……元々使徒なんですけど」


「あ」


 一義とかしまし娘には盲点だった。


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