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いざ鉄の国08


 そんなわけで一義たちはルイズの待機させていた馬車に乗って鉄の国を目指すことになった。


 メンツは一義とルイズ……それから姫々と音々と花々とアイリーン。


 以上。


 一義は自身が行かねば意味が無いため当然。


 ルイズは元々鉄の国の住人。


 かしまし娘は当然一義に付き沿う。


 一義が発作に襲われたとき傍に居なくてはならないからだ。


 アイリーンは保険である。


 仮に一義が鉄の国で殺された場合を考えて同行を願い出た。


「皇帝に囲われるんじゃないの?」


 一義がそう危惧したが、


「一義がいるから」


 そう言った。


 違いない。


 一義とて鉄の国の恨みを買っている人間ではある。


 仮に一義が謀殺されてもアイリーンが居れば保険となる。


 そして一義の戦力を持てば皇帝がアイリーンに何をしようと取り返せる。


 ウィンウィンの関係だ。


「フェイちゃんも連れてきたかったな……」


 シスコンらしい言い様だったが、


「ファンダメンタリストを刺激してどうする」


 がハーレムの総意だった。


 元々一義とアイリーンの二人で超重要人物扱いだ。


 そこにフェイまで加わればやかましくなること間違いない。


 が、あくまでソレはハーレムの総意であって一義の意思では無い。


 一義にしてみれば狭い馬車の中で姉妹百合を見せられると気分が悪くなるので意図的にフェイを遠ざけたという思案があった。


 何せアイリーンはと来れば、


「私は反魂」


「フェイちゃんは不死身」


「故に無敵姉妹」


「一義に姉妹丼を食べて貰いたい」


 と宣言するほどだ。


 あながち間違ってもいないが、そんな無敵艦隊にツッコミを入れる疲労を鑑みて、少し姉妹の距離を取ってみようという作戦でもある。


「鉄の国ってどんなところ?」


「ん~」


 ルイズは思案した。


「文明の進歩自体は霧の国と変わらないかな?」


「そなんだ……」


「ただ漁業より畜産に重きを置いているから肉料理が発展してるね」


「うげ」


 一義は顔をしかめた。


「肉嫌い?」


「ってわけじゃないけど魚の方が健康に良いし」


「和の国では魚が基本ですしね……」


「あとお茶!」


「あたしは豆が好きだなぁ」


 一義にしろかしまし娘にしろ質素な食事事情だった。


「鉄の国の食肉文化は結構素敵ですよ?」


 アイリーンがフォロー。


「そ」


 一義は馬車から外を見る。


 開拓された一本道を馬車がパカラッパカラッと進んでいく。


 女子五人はカードゲームに興じている。


 一義がカードをシャッフルする役目だ。


「そういえば」


 と道を見ながら一義が提議した。


「鉄血砦ってあれからどうなってるの?」


 更地に帰した本人が問うのだから始末が悪い。


「村が出来てるよ?」


 さほど気負わずルイズは答えた。


 カードを切る。


「師匠がシダラにいる限り砦の再建は現実味が無いんだってさ」


「別段喧嘩を売られない限りどうこうしようとは思わないんだけど」


「それがつまり……」


 ルイズの嘆息。


「師匠がシダラにいれば鉄の国は霧の国に攻め込めない。そんな戦略的に無価値な砦を維持することに税金を使うのも馬鹿らしいって結論になるんだよ」


「僕の機嫌の方が砦の意地よりプライオリティが高いわけだ」


「まぁだから鉄の国と霧の国の中間地点として村が出来ているわけだけど」


「ちなみにその村は鉄の国と霧の国……どっちに税金を支払ってるの?」


「鉄の国」


「ふぅん?」


 政に興味は無いため単なる戯れた確認だ。


 一義に思うところはないらしい。


「帝都まで馬でどれだけ?」


「三週間って所かな?」


「なるほどね」


「途中でランナー車に乗り換えるから実質一週間もあれば着くよ」


「ランナー車……ねぇ」


「一応僕が皇帝陛下から賜った一品。もっとも霧の国までは持ってこれないから元鉄血砦のあった村までは馬車しか無いけど」


「形式ってのも馬鹿馬鹿しいな」


「僕は公人だから」


「にしてはフットワークが軽いな」


「ま、基本帝城にいるだけだから」


 それで有休が取れるのもまたすごいが。


「一応鉄の国の最終戦力って見做されてるけど……僕の意見を言わせて貰うなら帝都まで敵陣が殺到してきた時点で敗北は確定しているような物だしね」


「だな」


 一義もそこには異論は無い。


「ていうかその気になれば一義は攻め滅ぼせるでしょ?」


「あんまり自分のために力を使いたくない」


 ブスッとして一義は言った。


「可愛い女の子のためなら幾らでも使うけど」


 一応一義も男の子である。


 長寿のエルフだが。


 で、カード勝負が一区切り着いて一義がカードをシャッフルしていると、その超感覚に和やかざる違和感を感じ取った。


「…………」


「旦那様?」


 花々もまた超感覚を持つ亜人だ。


「大体想像着くけど……どなた?」


「山賊だよ?」


 事も無げに花々は言った。


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