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いざ鉄の国06


 ルイズは我が物顔で学院に馴染んでいた。


 敵国の騎士であることは既に承知されている。


 が、別段問題視もされていない。


 此処が王都ならまた違った反応があるのだろうが、シダラは元より鉄の国と国境を定義するための戦術都市だ。


 ましてルイズは皇帝直属騎士。


 諜報活動や破壊工作とは無縁と取って問題は無い。


 暗殺も無視して良いケースだろう。


 そもそも暗殺されて困る人材はさほど居ないが。


 平民が殺されても上層部は困らないし、貴族が殺されても平民は困らない。


 そんな空気もルイズには心地よかった。


「ふっ!」


「しっ!」


 一義の掌底を肘で受け止めて膝蹴りを放つルイズ。


 一義は硬気功で膝を跳ね返し、同時に片足になったルイズの足を払う。


「ぐえっ!」


 呻くルイズ。


「あまり両足は地面から離さないことだね」


「むぅ」


 ルイズは不満げだ。


「ていうか何で僕の膝蹴りが利かないの?」


「勁を練ってるから」


「けい?」


「気と言えば分かりやすいかな?」


「気……」


 要するに肉体に流れる力の川を操る技術。


「筋肉操作とは違うの?」


「どっちかというと形而上だね」


「?」


「……ってなるよね」


 一義は苦笑した。


「ソレを覚えるのも有用だから。その身で味わって欲しい」


「力の川はどうやって感知するの?」


「筋肉操作と一緒」


 人差し指を立てて教鞭のように振るう一義。


「自身の中の気の流れを感じ取れるように修行するほか無い」


「道は遠いなぁ」


「十分覚えは良い方なんだけどね……」


 褒めたのではなく純然たる事実だ。


 クンフーを修めるには本来もっと時間を必要とする。


 既に原型が出来ているだけでも一義としては驚嘆に値する。


「師匠」


「何でしょ?」


「縮地を覚えたい」


「今のルイズじゃ無理だよ」


「そなの?」


「体と気の操作が出来て始めて可能となる技術だから」


 超神速。


 またの名を縮地。


 一義がルイズを下した技術だ。


 その速度は脳の反応すら追いつかない領域にある。


「じゃあどうするの?」


「とりあえず硬気功を覚える所からかなぁ。型の修行と並行して行なおっか」


「型はどんなもの?」


「優秀だよ?」


「えへへぇ」


 銅色の瞳に喜色が塗られる。


「さて……」


 一義は構えを取る。


「続きと行こうか」


「うん!」


 晴れやかにルイズは笑った。


 元々の身体能力が異常と言えるのだ。


 組み手の二回三回で参る人体構造では無い。


「勉強させて貰います」


「良い姿勢」


 そしてまた一義とルイズは交錯する。


 素手による丁々発止。


 一義の手刀をルイズが受け流す。


 そのままカウンター。


 体を捻って躱す一義。


 同時に裏拳。


 空を切った。


 一義も状況は理解している。


 ルイズが伏せたのだ。


 一義は跳んだ。


 一回転半ひねり。


 伏せた状態のルイズには一義が消えたように映ったろう。


 ルイズは一義をあらゆる知覚で以て探す。


 こういう能力は亜人の超感覚と大差ない。


 一義を背後に捉えたルイズは、


「しっ!」


 伏せたまま回し蹴りを放つ。


 足払い。


 が、


「甘い」


 一義は足を少し浮かせて、その裏でルイズの回し蹴りを受け止めた。


「……っ!」


 特に痛痒も覚えないことに戦慄するルイズ。


「さて」


 と一義。


 自らの足でルイズの蹴りを受け止めたままニッコリ笑う。


「まだ抵抗する?」


「…………」


 苦渋。


「参りました」


「うん。結構。でも肉体操作には慣れてきているね」


「一蹴されたのに?」


「一蹴されたのに」


 特に嫌味も含まず一義はルイズを評価した。


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