いざ鉄の国04
「ホテルに泊まってるの?」
「宿舎は改装中だからね」
一義の業だ。
ハーレム。
「よく刺されないね」
「僕としても不思議」
本心だった。
一義はハーレムの誰にも応える気が無い。
「今のところは……」
と注釈は付くが。
そうであるためハーレムの女の子たちが何を以て一義を見限らないのかが当人にとっては理解の外だ。
特に重視する案件でもないのだが、
「それはそれで身も蓋もない」
とも云える。
というわけでルイズもホテルに泊まることになった。
有休を取って数日こっちに滞在するらしい。
鉄の国にしても戦力の向上は望むところであるため強くは制しづらいとルイズは云う。
「ならいいけど」
と一義。
食事を取って風呂に入る。
今日の付き人は音々。
「お兄ちゃ~ん~?」
黒い瞳が半眼になっていた。
「何よ?」
白い瞳がソレに応える。
「なんでルイズも一緒に?」
「可愛い女の子と一緒にお風呂に入りたかったから」
さも平然と一義は言う。
元々が元々であるためスケベ親父の体が有る。
「僕の体は好きにして良いよ?」
ルイズも乗っかる。
「お兄ちゃん!」
うがー!
そう吠える音々。
「大丈夫だって」
一義は音々の髪を撫で撫で。
「責任取れないから手を出す気は無いし」
「責任取る必要はありませんよ?」
「この年で父親は嫌だなぁ」
エルフは長命なので一般的な人間と等倍には測りきれないが。
「東夷を誰も恐れないんだね」
「ま、理解ある女の子たちに救われている面はあるね」
「音々も?」
「音々も」
優しく音々の頭を叩く一義。
「だいたい!」
と音々。
「お兄ちゃんは誰彼に優しすぎ!」
「出会う女の子が魅力的なのがいけない」
「責任転嫁!」
「とは云ってもね……」
ポリポリと一義は頬を掻く。
「今更どうにもならないんじゃない?」
「お兄ちゃんが拒否すれば?」
「心苦しい」
「もとは音々たちだけの物だったのに!」
「でもかしまし娘はなぁ……」
一種の自慰行為だ。
「じゃあ師匠……僕は?」
「魅力的ではあるよ」
「あはぁ……」
トロリンとほだされるルイズだった。
「お兄ちゃんの浮気者!」
「操を誓った相手もいないのに浮気は成立するの?」
「それは……!」
「まぁ半分冗談だけど」
「半分なの?」
「そんなものでしょ」
サックリ云う。
「ていうか僕とルイズで子どもを作ったらどっちかが所属する国を離れる必要があるじゃん」
「は!」
今気づいた。
銅色の瞳がそう語っていた。
「だからルイズとは有り得ない」
「む~……」
ルイズは不満げだ。
「何でよ?」
一義の疑問も尤もだ。
「僕じゃ不満?」
「そう云う問題じゃないのは先述したよね?」
「でも!」
「い・ま・は」
ルイズの唇に人差し指を当てる。
「君が黄金の園をもたらしてくれるなら幾らでも帰順してあげるよ?」
「黄金の園?」
「僕の心は今のところ灰色だからね」
一義は苦笑した。
「お兄ちゃん」
事情を知っている音々は苦渋に顔をしかめる。
その想いがどれほどのものか?
かしまし娘だけはそれを正確に知っているのだ。
一義と思考を共有しているが故に。
「お兄ちゃんは縛られすぎ」
「Mなもので」
「ドSでしょ」
ツッコむ音々はジト目だった。
「そうかなぁ?」
一義の方に自覚は無いらしかった。