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嗚呼、青春の日々10


「ふぅ」


「疾っ!」


 一義は和刀を。


 ジャスミンは片手剣を。


 それぞれ持って打ち合っていた。


 正確には一義がジャスミンの剣に付き合っていた。


 果敢なジャスミンの剣を一義の和刀がいなしている。


 一義は才乏しき身とは言え魔術師だ。


 そしてジャスミンは魔法剣士である。


 その上で剣撃だけを能力としているのは、


「魔術を使った瞬間終わる」


 とジャスミンが察しているからに他ならない。


 銃力の一義。


 現在の一義の二つ名である。


 斥力場の連続顕現による加速魔術。


 一義の命名で、




『パワーレールガン』




 と呼ばれるソレは何も銃弾のみを加速するだけが能では無い。


 敵自身を加速対象として吹っ飛ばす問答無用の魔術と成り得る。


 まして一義の空間把握能力と組み合わされば空間剣術の御使いとも成り得る。


 仮に手合わせに魔術を交えてしまえば不利になるのはジャスミンの方なのである。


 なので、


「はぁっ!」


 ジャスミンは剣での勝負に依存した。


 女性でありながらロイヤルナイトに選ばれた益荒男さえ道を譲る王の剣。


 それがジャスミンであるはずだった。


 実際その通りに機能し、その通りに結果を出していた。


 一義が現れるまでは。


 白い髪。


 白い瞳。


 黒い肌。


 長い耳。


 東夷……またはエルフと呼ばれる種族である。


 こと大陸西方において亜人は災害の対象だ。


 ゴブリン。


 トロール。


 ヴァンパイア。


 皆々人を襲う怪物である。


 その通念を下地とすれば亜人である一義を忌避するのは人の自然という物。


 そして本来ジャスミンもそうであるはずだったのだ。


 今ではベタ惚れだが。


 が、生憎とソレと剣とには関係性が無い。


 こと剣において一義はジャスミンの導き手だった。


 特に師弟関係でも無いので、


「とりあえず付き合っている」


 程度の認識でしか一義には無い。


「重心が上がってきてるよ?」


 剣を刀で打ち払いながら一義は忠告する。


「まだまだぁ!」


 ジャスミンはすっかり沼にはまっていた。


「沼?」


 とディアナ。


「ええ。剣、流水の如し……ですね……」


 観戦しているハーレムたちの中でかしまし娘が正確に状況を理解していた。


 ディアナは姫々に問う。


「何ソレ?」


 と。


「剛の剣では柔の剣には敵いませんよ……」


 それが姫々の結論。


「剛? 柔?」


「要するに猛牛が闘牛士に敵わないのと同じ理屈です……」


「ジャスミンは翻弄されていると?」


「そう言いました……」


 姫々は遠慮無く言った。


「なおそう誘いをかけるご主人様の意地悪さも手伝っていますね……」


「そなの?」


 姫々はジャスミンを指差した。


「ぜぇ……ぜぇ……」


 多量の剣を振るって肩で息をしているジャスミン。


 無形の位で和刀を持っている一義には息の乱れが無い。


 というか汗一つかいていない。


「終わりかな?」


 和刀の背で肩をトントンと叩く一義だった。


「ご覧の通りです……」


 姫々は言う。


「必要最小限の動きで敵の最大の攻撃をいなす……。別段剣にて斬ることが戦いでは無いのです……」


「ふむ」


「無駄な動きの多いジャスミン様を最小限の動きでいなせば結果として勝ちは転がり込んでくる……。もっとも……真似して出来るものでもありませんが……」


「何故貴様は涼しい顔が出来る!」


 ジャスミンが吠えた。


「別段軽い運動をした程度で汗をかいても……ねぇ?」


 肩をすくめる一義である。


 皮肉のつもりでは無いが、


「くそっ!」


 ジャスミンには最大級の侮辱だ。


「剣の完成度」


 ……と云うよりそれ以前の問題として、


「剣術の土台のレベルが違う」


 のである。


 和の国はこと剣の心に置いて無類の文化を持っている。


 当然月子の護衛であった一義の剣は天下に無双。


 アイリーンやフェイにさえ届かぬ高みにいるためジャスミンが敵わなくて自然と言えた。


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