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嗚呼、青春の日々09


「いーちーぎっ!」


 ヒョイと一義は躱す。


 代わりとばかりにジャンピングハグの餌食となったのは音々だった。


 二人揃ってゴロゴロと床を転がる。


「何でよぅ!」


 ジャンピングハグの主……アイオンが一義を不満そうに見やる。


「こっちの台詞だよぅ!」


 音々の言葉も尤もだった。


「ディアナを正門に放置して良いの?」


「まぁ大丈夫でしょ?」


 ウィンクするアイオン。


 ジンジャーと同じ燈色の髪と瞳。


 ジンジャーの姉で宮廷魔術師。


 雷帝と呼ばれる規格外の魔女である。


「一応監視はしてたし」


「まぁ雷帝ならそれくらいはするよね」


「久しぶりだな一義……」


 今度は紺色の美少女が声をかけてきた。


 ジャスミン。


 ロイヤルナイト。


 王直属の兵士であり、その練度は高い。


 一義のハーレムの一人ではあるが、それと同等に一義にライバル心を燃やす魔法剣士でもあるのだ。


「久しぶりに手合わせしないか?」


「気が乗ったらね」


 一義の返事はぞんざいだ。


 この手の面倒は枚挙にいとまが無い。


「で、キザイア……と」


 褐色の髪と瞳の少女。


 エプロンドレスを着たディアナ専属の侍女。


 失語症故にハーモニーとは別の意味で無口だが、特に一義は不便していない。


 識字は修めているため文字によるやりとりが可能である以上、花々が居ないと成立しないハーモニーとのコミュニケーションよりはやりやすい。


 そして最後に学院長。


 顔が青ざめていた。


 さすがに女王と侍女とロイヤルナイトと宮廷魔術師を相手にすれば、一義やハーレムたちと違って胃が痛くなっても仕方ない案件だ。


 むしろ一義たちの不遜の方が異常なのである。


 それはともあれ、


「何しに来たの?」


 一義が問う。


 ディアナは既に言った。


「一義に会いたいから」


 と。


 アイオンは、


「陛下の護衛ついでに」


 と。


 ジャスミンは、


「陛下の護衛並びに一義との一手を」


 と。


「申し訳ありません」


 メモ帳にサラサラと謝罪の言葉を書いたのはキザイア。


「可愛い!」


 一義がキザイアを抱きしめた。


「…………」


 キザイアは頬こそ赤くした物の、何も言わずに一義に抱かれる。


「ズルい」


 それがハーレムの総意だ。


「キザイア」


「…………?」


「僕に紅茶入れて?」


「…………」


 コクコクと素直に頷くキザイアだった。


 そして一義たちに茶を振る舞う。


「それでは私はコレで……」


 学院長は痛む胃を押さえながら退室した。


「今特別棟が襲われたら霧の国は終わるね」


 事実ではある。


 ここは強力な攻性魔術を獲得するための学院で、一戦力を上回る一人を育成するための実験場だ。


 であれば当然それなりの魔術師は居る。


 杞憂ではあるのだが。


「ディアナは自重してよね」


「では王都に居てください」


「却下」


「一義様が王都にいれば私だって無理して学院に顔を出す必要は無くなります」


「つまりご主人様が悪いと……?」


「そう言いたいの?」


「ディアナは?」


 かしまし娘が殺気立つ。


 例外なく超戦力の三人である。


 当然この場では決定的な意見を持つ三人でもある。


「落ち着いて」


 かしまし娘にチョップを振り下ろして殺気を引っ込めさせると、


「とりあえず歓迎するよ」


 と一義は言った。


「王都には……」


「引っ越さない」


 そこは譲れないらしい。


「一義は……」


「まったく……」


「はぁ……」


「さすが……」


「…………!」


 西方ハーレムもだいたい分かってはいるらしい。


 一義の性質を。


 一義にも自覚は無論在る。


 その上で改善に動こうとしないのは馬鹿なのか慈悲なのか……。


 ハーレムの女子たちが、


「止めろ」


 と云われて止められるならソレが一番平和ではあるのだ。


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