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決闘05


「何を言っているのでしょう?」


「あなたが東夷に魂を穢されて服従させられているのは明らかですわ。ならばそれを救うのはわたくしの使命……。こんな東夷に仕えないでわたくしに仕えなさいな」


「お断りします……」


「なにゆえ?」


 本気でわからないと首を傾げるビアンカに、


「わたくしのご主人様はご主人様だけでありますれば……」


「うん。お兄ちゃんは音々たちのお兄ちゃんだね!」


「まったくだよ。旦那様はあたしたちだけの旦那様だ。余計な横やりは不快以外の何物でもないね」


 あっさりと答えるかしまし娘。


 そこに、


「一義は私たちの一義だしね」


 アイリーンまで参加した。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 一義とかしまし娘とアイリーンとビアンカの六人が沈黙し、それから、


「なにゆえアイリーン様がご主人様のハーレムに入っているのですか……?」


「アイリーン無粋すぎ!」


「アイリーン……君はあたしたちのハーレムに割り込むつもりかい?」


「駄目ですか?」


 キョトンとアイリーン。


 かしまし娘は、


「「「駄目」」」


 と拒絶し、


「まぁ僕は別にいいんだけど……」


 と一義は受諾した。


「本気ですか……! ご主人様……」


「本気で言ってるのお兄ちゃん!」


「本気かい? 旦那様」


「まぁアイリーンが求めるなら拒否するところは何も無いからね」


 閑話休題。


「で……ビアンカはなんで姫々が欲しいの?」


 そう聞く一義に、


「可愛らしい花を愛でる文化は古今東西どこでも一緒ですわ」


 当然とばかりにビアンカ。


「つまり姫々を自分のモノにしたいと……」


「そういうことですわね。わたくしのためにも姫々のためにも姫々がわたくしに仕えるのが一番いい選択ですわ」


「姫々はどう思う?」


「論外ですね……」


「姫々は貴族の血を継ぐ高貴なわたくしよりこんな東夷を選びますの!?」


 ビアンカは信じられないとそうのたまった。


「こんな東夷って……まぁ否定しようもないけどさ……」


 昼食を終えてお冷を飲みながら一義。


「汚らわしい東夷になんか身を委ねても無意味でしょう!? わたくしならこの東夷の百倍の愛を提供して差し上げますわよ!」


「つまりレズか。百合か」


「男なんて女体にばかり関心を持つ下衆な種族ですわ。わたくしは美しいものを愛でるのです。男なんて論外ですわ」


「百合だね」


「百合だ」


「百合ですねぇ」


 音々に花々にアイリーンがそう言う。


「とまれ……」


 と姫々が論を正す。


「わたくしはご主人様に仕える存在です。代わりなどいません」


「ぐぬぬ……」


 親の仇とばかりに一義を睨みつけるビアンカ。


「そんなに熱情の瞳で見られても……」


 一義は「降参」とハンズアップするのだった。


「そういうわけですから……諦めてください……ビアンカ様……」


 諭す姫々を無視して、ビアンカは一義をビシィッと指差した。


「わたくしと決闘なさいな一義!」


「なにゆえ?」


 一義はお冷を飲みながらうんざりとする。


「姫々を賭けて決闘ですわ。どちらがより優れているのか姫々に証明して差し上げます!」


「こっちのメリットがないじゃん」


「ならば万が一にもわたくしが敗れましたら一義のハーレムに入って差し上げますわ!」


「それはメリットっとは言わない」


「わたくしでは不満ですの!?」


 フシャーッと怒るビアンカ。


「いや……ビアンカは可愛いし不満じゃないけどさ……こんな馬鹿馬鹿しいことに自分を賭けなくても……って思って。なにより一過生九組に四過生が負けたら洒落じゃすまないんじゃないの?」


「あなた……万が一にもドラゴンバスターたるわたくしに勝てるつもりでいますの?」


「まぁ……その……忌憚なく言えば……」


「なめられたものですわね……。ならばどちらがより強大か……骨の髄まで教えて差し上げますわ!」


「あれ? 決闘をする流れかな……これ……?」


「当たり前ですわ!」


 ビアンカがそう高らかと宣言すると、学生食堂の生徒たちがにわかに活気づいた。


「ビアンカ様と東夷が決闘!?」


「四過生と一過生が決闘!?」


「ドラゴンバスターが決闘!?」


「相手誰!?」


「あのハーレムの東夷らしいぜ!」


「マジかよ……!」


 どよめく衆人環視。


 一義はというと、


「そもそも決闘なんてどこでできるのさ……」


 やる気なさそうにぶつくさとこぼした。


「この学院にはアリーナが存在しますよ……」


 姫々が補足する。


「……マジで?」


「はい……。両者の承諾の元に決闘は行なうことが出来ます……。無論拒否することもできますが……」


「あそこまで大口をたたいて拒否するつもりじゃありませんことよ!」


 フシャーッとビアンカ。


「……はぁ。じゃあ決闘しましょうか……。ええと……ビアンカが勝ったら姫々を譲って……僕が勝ったらビアンカがハーレムに入る……と」


「なんです! その気だるげな態度は!」


「いや……だって……これ以上ハーレムが増えてもなぁって……」


「わたくしでは不足ですか! というか負けるという発想が無いのですか!」


「ないですねぇ」


 一義はお冷を飲んでホッと息をつく。


「なれば事務に決闘の受諾書を受け取りに行きますわよ!」


 かんしゃくを起こすビアンカに、


「へーへいへいへーいへい」


 どこまでも気だるそうに一義。


「ご主人様……」


「お兄ちゃん……」


「旦那様……」


「一義……」


 かしまし娘とアイリーン……つまるところのハーレムの面々は不安げに一義を見やるのだった。


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