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嗚呼、青春の日々02


「お兄ちゃん! 朝だよ!」


 元気よく音々が起こした。


 悪夢を見ない限りにおいて寝付きの良い一義はふにゃふにゃと起き出した。


 目指すはホテルの食堂。


 顔を出すと、


「ご主人様」


「旦那様」


「「「「一義」」」」


「…………!」


 姫々と花々とアイリーンとビアンカとフェイとジンジャーとハーモニーが出迎えてくれる。


 味噌の匂いが香り漂う。


 艶々の白米に塩鮭。


 そしてだし巻き卵。


 全て和の国の料理だ。


 一流と云えど霧の国のホテルが提供できる料理ではない。


 姫々とアイリーンがホテルのキッチンを借りて用意したものだ。


 既に一義の胃袋は姫々とアイリーンに握られている。


 そんなわけで朝食と為った。


 一義とかしまし娘は元より。


 西方ハーレムも和食に慣れている頃合いだ。


 ホテルとしての威厳はないが、それ以上に専属シェフは姫々とアイリーンの手際に感動していた。


 西方の食事においても一流ホテルのサービスに劣らない腕なのだ。


 魔法学院の生徒でもなければホテルマン……あるいは料理人として大成できる素質の持ち主である。


 一義はもむもむと焼き鮭を食べていた。


「ご主人様……美味しいですか……?」


「美味しいです」


「あは……」


 姫々の顔がほころぶ。


 こと食事において一義の胃の感情は姫々のレゾンデートルだ。


 それはアイリーンもそうなのだが。


 各々が食事をし、とくに大食漢魔王ことハーモニーは、


「……! ……!」


 何度もお代わりを要求していた。


 無論、


「それある」


 を見越して大量に米を炊いていたので問題は無かったが。


 で、何故一義たちがホテルに宿泊しているかと云えば、


「宿舎の改造中」


 であるからに相違ない。


 幾何級数的に……というと大げさだが一義を慕う女の子は両手の指で数え切れないほど膨れあがってしまっている。


 別段一義に帰される責任では無いが、今の宿舎のままであれば全員を受け入れることが不可能と為ったのだ。


 一義、姫々、音々、花々、アイリーン、ビアンカ、フェイ、ジンジャー、ハーモニー……これで基本である。


 さらにここに霧の国の国王やら重鎮やら使用人やら……あるいは根無し草やら敵国の兵士やらまで加わってくる。


 一義一人でも致命的であるのに、何の因果か一義のハーレムは悉くが一人で一軍を相手に出来る物騒な連中ばかりだ。


「一義のハーレム」


 はもうそれだけで戦術を超えて戦略……あるいは政略レベルで捉えなければならない集団と化しているのであった。


 ちなみに当人である一義は特に重視していない。


「力は歪みを生む物」


 と定義しているためだ。


 一義が一義を慕ってくる超戦力をハーレムに迎えているのは、


「偏に可愛いから」


 これに尽きる。


 純粋と云えば純粋。


 そうであるからハーレムは一義を慕うのだが。


 一義の頭には、


「利用しよう」


 とか、


「騙そう」


 などといった思考が存在しない。


 元より人が良いのだ。


 悪に義憤して善に妥協する。


 であるからハーレムの女子たちは一義に純粋な恋心を捧げている。


 各々に事情と心情と感情があるが、


「別に可愛ければいいし」


 と一義は放言しているため、


「ならば」


 という結論に着地する。


 衆人環視にしてみれば嫉妬の対象だが一義は特に気にもしない。


「好きでいてくれることに感謝」


 それ以上の感情を持っていない。


 それ故、


「一義に愛されることの幸福」


 をハーレムの女の子たちは十全に理解しているのだから。


 閑話休題。


 そんなわけで超戦力の一義のハーレムを迎えるために宿舎の改造が王家の権力で以て行なわれていた。


 隣家には金を積んで撤退して貰い、広い敷地を確保すると、一階は玄関とキッチンと広いダイニング。


 二階と三階に一義とそのハーレムが十分に足を伸ばして寝られるような多数の部屋を完備。


 なお一階から三階までは階段で直通できるように設計されてある。


 で、今はその工事中。


 その間はビアンカの口利きで一義とハーレムの全員が一流ホテルに泊まっているという塩梅だ。


「どうしてこうなった?」


 一義は何度も自問自答する。


 答えはあまりに簡単。


「一義に愛されると云うことがどういうことか?」


 それをハーレムの女子たちは知っているのだ。


 であるから今日も今日とて女の子祭りであった。


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