表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/315

いけない魔術の使い方25


 旅は平穏無事に進んだ。


 王都に向かう途中いくつかの問題はあったが矛盾の魔術の前に全てはねじ伏せられた。


 仮面とローブで姿を偽っているとはいえ一義の本質は変わっていない。


 矛盾の魔術は山賊や野盗にオーバーキルの効果を与えた。


 シャルロットもシャルロットで無茶苦茶な魔術を修得しているため足手纏いにはならなかった。


 そんなわけで一義とシャルロットに関してだけ平穏無事に旅は進んだ。


 その後方に屍を積んで。


 波の国は島国ということもあって面積はそんなに大きくはない。


「馬車でもあれば四日で王都につくさ」


 と言うシャルロットの言通り……四日後、一義は王都の土を踏むのだった。


「じゃ、僕の仕事はここまでだね」


 シャルロットは王都につくとそう言った。


 既に遠目ながら王城は見えている。


 案内の必要はもうなかった。


 一義はニコリと笑う。


「ここまでありがとう」


「仕事さ。感謝されても困惑するだけだよ」


 口の端を吊り上げて苦笑するシャルロット。


「僕としては穏当に事を進めて欲しいんだけど……」


 そんなシャルロットの言葉に、


「さてね」


 一義は肩をすくめる。


「ところでさ」


「何だい?」


「シャルロットは僕のハーレムには入ってくれないの?」


 現時点において全く関係の無い質問を振る一義に、


「ふむ……」


 とシャルロットは真剣に考えた。


 沈思黙考。


 それから、


「一義は魅力的だよ?」


 そう言った。


「それは良かった」


「ただ僕が奔放と云うだけのことさ」


「奔放?」


「僕は運び屋。体も心も一ヵ所に留まれない女の子だよ」


「なるほどね」


 一義は苦笑した。


 せざるを得なかった。


「一義は僕のことが好きなのかい?」


「好意的ではあるね」


「ふぅん?」


 窺うようなシャルロット。


「ハーレム……あれから増えた?」


「急増中だよ」


「まぁ一義の魅力を鑑みればそうだろうね」


 くつくつと笑われる。


「魅力的……かなぁ?」


 一義はガシガシと後頭部を掻く。


「うん。今は仮面で見えないけど一義はとっても美男子さんだよ?」


「まぁもとよりエルフは美的だしね」


「まったくまったく」


 うなずくシャルロット。


「でもシャルロットには通用しない、と」


 一義のそんな言に、


「そうでもないさ」


 シャルロットは否定する。


「君ほどの美貌の主は人類にはあり得ない。だから僕だって心揺らがないかと言えば嘘になる」


「本当?」


「本当」


 首肯される。


「ただ僕は誰にも縛られたくないし誰かを縛りたくもない」


「奔放だね」


「然り」


 シャルロットは肯定する。


「色んな国の文化を見て回ることが僕の生き方の醍醐味だよ。そのために運び屋なんてやってるんだ。故に一義を僕が求めるとしたら旅に疲れたその後だろうね」


「そっか」


 一義の表情はいっそ晴れやかだった。


「納得」


 と顔に書かれてある。


 意外そうな顔をしたのはシャルロットの方だった。


「一義……君はこんな僕の事情に付き合ってくれるのかい?」


「シャルロットを好意的に思う限りにおいてはね」


 それは皮肉。


 しかして辛みはなかった。


「ふふ……」


 シャルロットが笑う。


「一義は優しいね」


「紳士たれって感じかな?」


「多くの女の子をはべらせておきながらそれはないんじゃない?」


「然りだ」


 一義も笑う。


 仮面の奥で。


 その感情の波動はしっかりシャルロットに届いていた。


「うん。まぁ」


 シャルロットは言う。


「君のハーレムに入るのはもうちょっと待ってくれると嬉しいかな? 自分勝手な言い分で申し訳ないんだけど……」


「強制はしないよ。それについては他の女の子にも言っている」


「うん。そういうところも魅力的」


 クスリとシャルロットは笑った。


「ここまでありがと」


 一義がそう言うと、


「仕事をしただけだよ」


 シャルロットは当然とばかりに返答する。


 そして一義は王都に向かって一歩を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ