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剣劇武闘会17


 表彰式が終わった。


「やれやれ」


 と呟き、一義はアリーナを出ようと足を向けた。


 この後のハーレムによる歓待に心を煩わせ、


「しょうがないか」


 と無理矢理心を納得させ、通路を歩く。


 弓状に曲がっている通路の先で一人の美少女が待っていた。


 姫々ではない。


 音々でも花々でもない。


 ハーレムでもなくエレナでもない。


 銅色の美しい瞳に同色の美しい髪を持った美少女。


 腰にさしているのは木剣ではなく鋼の片手剣。


 人を斬り殺せる魔性の道具だ。


 そしてそれを帯剣している美少女は裂帛の威圧感を伴っていた。


 ルイズがそこにいた。


「…………」


 偶然とは思えなかった。


 何かしらの意志をルイズから感じる一義。


「やっほ」


 と一義は片手をあげて挨拶した。


「やっほ」


 とルイズも返す。


「それで?」


 問う。


「僕に何か用?」


「うん。まぁ……」


 言葉を濁すルイズ。


「…………」


「…………」


 しばし沈黙が差し込まれ、それから、


「見事だった」


 ルイズがそう言った。


「何に対して?」


 聞く一義に、


「無論、君の剣の冴えに関して」


 明確にルイズは答えた。


 そこには悔しさや恨みは一分も入ってはいなかった。


 称賛。


 ただそれだけがルイズの言葉を象っていたのだ。


「一対一の純粋な剣技で後れをとったのは久方ぶりだ」


 再び言うがルイズの言葉に悔しさは存在していない。


「それで?」


 一義は挑発する。


「今度は真剣どうしで争ってみるかい?」


 ちなみに一義は見た目だけなら素手だ。


 言うまでもなく服の裏には暗器を隠し持っているが。


「そんなことをすれば僕の騎士としての名誉にかかわる。だからそんなことはしない」


「ふうん?」


 首を傾げる一義。


「じゃあ何さ?」


 根本的な問いに、


「僕を弟子にしてくれ」


 素っ頓狂な言葉が返ってきた。


「は?」


 と一義が呆けたのも無理なかった。


「ワンモアプリーズ」


「僕を弟子にしてくれ」


 一義はここで漸く聞き間違いでないことを悟る。


「なして?」


 必然の言葉だったろう。


「一義の剣の冴えが僕のそれを凌駕しているからさ」


 銅色の瞳に映るのは単純に、


「何を今更」


 といった感想だ。


「一義、君のことを師匠と呼ばせてくれ」


「ウェイウェイウェイ。何? 僕にルイズの師匠になれっての?」


「さっきからそう言っている。一義の剣技は見事なものだ。是非とも吸収したい。君への弟子入りを許可してもらえれば嬉しい」


「さて……何て返そうか?」


 と一義は悩んだ。


 そんな一義の心境を無視して熱っぽくルイズは語る。


「僕に剣技で勝る存在は、これは自慢か増長になるが希少だ。そして君はその希少に含まれる。師事したい。一義の剣技を僕のものとするまで導いてほしい」


「…………」


 一義は無言でガシガシと後頭部を掻いた。


 困ってしまったのだ。


 ルイズの意志は強靭にして純粋だ。


 その美しい銅色の瞳が、言葉に偽りなしと語っている。


「一義……いや師匠。僕を指導してくれ」


「師匠……ね」


「金銭が必要というのなら用意する。僕の体を求めるのなら捧げよう」


「いや、いらないから」


 さすがにつっこむ一義。


 そして、


「ルイズの本気はわかったよ。だから弟子にはしてあげる。まぁ君も鉄の国でのしがらみはあろうけど僕に師事するというのならそれもいいさ。都合のいい時間に此処シダラに顔を見せればいい。剣術の指南くらいはしてあげるよ」


 諦めたように言った。


「うむ。感謝する師匠」


「それにしても鉄の国の皇帝直属騎士が弟子……か。本気で政略的な集団になりそうだ」


 心の中でそう呟く一義。


「これからよろしく頼む師匠……」


 そう言ってルイズは手を差し出してきた。


「ああ、まぁ、そうだね」


 一義も困惑気味ながら握手に応じる。


 こうして誰も知らないところで霧の国最強と鉄の国最強が師弟関係になるのだった。


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