■第十一話■
むかし、むかし。
と言っても、10年くらい前のお話。
佐原孤児院、という保護施設がありました。
そこには、不慮の事故で身内を亡くした子、捨てられた子、親から過激な虐待を受け、引き取られた子など、
沢山の"可哀想な子"が住んでいました。
そこの施設は、里親を探し、"可哀想な子"達を幸せに育ててくれる人を探して
送り出すのです。
その日は
当時6歳だった女の子2人が引き取られました。
一人の女の子は、3歳の時に捨てられ、引き取られた子。
一人の女の子は、両親からの過激な暴力虐待により、4歳の時に引き取られた子。
二人はいつも一緒にいました。
院長は2人を引き離すようなことはしたくないと思い、"2人ともを引き取ってくれる家庭"を探していました。
当時、孤児院には、石神 樹という女の子が2人の女の子に会いに孤児院に通い詰めていました。
樹と2人の女の子は年齢は少し離れていましたが、
樹は2人を妹のように可愛がり、2人は樹に大層なついていました。
だからこそ、2人は"引き取られる"ということを拒んだのです。
「いつきちゃんと離れたくない」と。
院長先生は困りました。
子供の意思は尊重したい、と。
しかし、2人を引き取ると名乗り出た人は、佐原孤児院に莫大な資金を寄付していました。
「2人を引き取らせてくれないのなら、佐原さんへ寄付するのはやめよう」
そう言われてしまえば、院長も2人を送り出す他ありませんでした。
佐原孤児院は、彼の寄付金で運営できていると言っても過言ではなかったからです。
2人の為に、20人以上の小さな子供たちを生活困難にする訳にもいきませんでした。
彼はにこりと笑いながら
「私が死ぬまで、佐原孤児院に寄付し続けることをここに誓おう」
そう告げ、泣きじゃくる2人の女の子を連れて帰りました。
10年たった今でも、佐原孤児院には彼から定期的に寄付金が振り込まれています。
しかし、それ以来、院長の前に彼も、2人の女の子も姿を見せることはありませんでした。
ー2人の名前はー・・・