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ぱらさいと  作者: 楸由宇
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奇声綺譚

 先日の朝(正確には火曜日の朝)四時頃の事です。

 日曜日の夕方から月曜日の夕方にかけて急ぎの仕事が有った為、会社の事務所に缶詰で徹夜に近い状態でした。ですから、月曜の夜は疲れ切ってしまい、いつもより早い九時半頃にはベッドに入り、直ぐに寝てしまいました。

 そう言う事で、身体がとても疲れていたので、ぐっすりと寝ていたのですが、ふと目が覚めました。枕元の目覚まし時計を確認すると、朝の四時過ぎでした。カーテンの隙間からは、明かりが漏れていて、外は白み始めているのが分かりました。

 先日、妹と弟と三人で部屋の交換を大々的にしたので、現在は部屋の窓が通りに面しています。

 ただ目が覚めたと言うよりは、何か落ち着かない気分でした。何か、地震でも有ったのかなぁ等と思っていたら、窓の外から微かに何かが聞こえてきました。

 何かが鳴いている様な。

 最初は犬か猫だと思っていたのですが、どうも人の声の様です。遠くの方から、徐々に近づいて来ている様に思えます。

 あ゛~とも、う゛~とも言えない気味が悪い声でした。

 段々と声は近づいて来て、声も大きく成ってきました。

 何かを探している様な、何かに呼び掛けている様な。

 でも、何と叫んでいるのか聞き取れません。

 声はどんどん近づいて来ます。もう殆ど目の前です。

 しかし、相変わらず何と言っているのか分からないのです。

 そうして、遂に家の目の前を、つまり、部屋の目の前を何かが通過していきました。

 かなり薄気味が悪く、じっとベッドの上で固まっていました。

 気味が悪い声は、何事も無かった様に、通り過ぎていきました。

 近づいて来た時と同様に、ゆっくりと遠ざかって行きます。

 じっと固まったまま、声が遠くへ行ってしまうのを待っていました。

 徐々に遠ざかって行ったのですが、暫くすると、ぱたっと声が止まりました。聞き取れなく成る程、その声の主は遠ざかってはいない筈なのです。

 そのまま、心の中でゆっくり数を数えました。

 いち、にぃ、さん、しぃ……。

 そうして、六十迄数えましたが、外は静かなままでした。

 数えるのを止めても、身体を動かせずにいましたが、突然、窓の外で音がしました。

 身体が一瞬浮き上がるかと思う程、驚いてしまいました。

 でも、直ぐに音の正体は分かりました。

 新聞が新聞受けに入れられた音だったのです。

 驚いた自分に赤面してしまいました。

 それで、金縛り状態から解放され、楽になりました。新聞配達員の自転車が遠ざかる音を聞き、少しホッとしたのです。少なくとも、彼(若しくは彼女)は、怪しいモノを見ていない様に思えたからです。

 ただ、先程聞こえてきた声は何だったのだろうとは思いました。

 ベッドの上で身体を起こすと、カーテンの隙間からは、明るい光が差し込んでいます。外は晴れている様に思えました。

 そして、カーテンを開けてしまったのです。

 外は快晴でした。

 でも、そこで気付きました。窓に何かが張り付いて……。



 階下から、母親の声が聞こえてきて、目が覚めました。

 その瞬間は、状況が飲み込めませんでした。

 目覚まし時計を確認すると、もう八時近くです。起きる予定の時刻を三十分も過ぎています。

 慌てて起き上がると、カーテンが捲くれているのに気付きました。

 そして、先程の事をはっきりと思い出したのです。

 最初は、夢だったのかとも思いました。でも、確かにカーテンが捲れているのです。

 そっと窓の外を見ました。

 外は、とても良い天気でした。

 何事も無かった様です。

 けれども、そこで見付けてしまいました。

 窓に残る白い手形を。


 あの時、カーテンを開けると、二階の窓に張り付いていたのです。

 アレが。

 足場も無い二階の窓に、べったりと。

 しかも、高いパイプベッドに寝ていたので、目線はかなり上に有りました。

 でも、アレの顔が、目の前に有ったのです。

 人とも云えない何かが、ニッと笑いました。

 目が合った瞬間、気を失ってしまったのでしょう。



 その事は、もう思い出したくもありませんし見たくもありませんが、矢張り気になります。

 一体アレは何だったのでしょうか。

 まあ、教えてくれると言われても聞かないとは思いますが。


 後書きめいたもの


 この話は、ハーフフィクションです。

 フィクションとノンフィクションの中間です。

 事実と虚構が微妙に混在しています。

 確かに今朝、気味が悪い思いをしたのです。

 それは事実です。


 素敵な夢を見られます様に。

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