最後の嘘
結婚を前提に付き合っていた彼が、事故によって下半身不随となる。
それでも彼を支えたいと願う主人公に対し、彼は別れを切り出す。
「僕は大丈夫だから」
その言葉に込められた本当の意味とは——。
私には結婚を前提にお付き合いしている人がいる。
何度も同じ季節を共に過ごしていく中で、私には彼しかいないと思っていた。
-いつもの日常が壊れた-
突然の事故。信号待ちで止まっていた彼の車に後ろから車がぶつかってきた。飲酒運転だった。
ブレーキ痕も無く、そのまま突っ込んできた。
……彼の下半身はもう、一生動かない……
「何か、して欲しいことある?果物剥こうか?」
「僕は大丈夫だよ。いつもありがとう。」
「私達の間に遠慮は要らないよ」
「ありがとう。実は考えた事があるんだけど聞いてくれる?」
彼は優しくていつも感謝の言葉をくれる。考えた事って何だろう?
「僕達、別れよう。僕はこんな体だし君には幸せになってもらいたいんだ。僕の事は忘れて、幸せになってね。」
目の前が真っ暗になった。
私は、本気で彼と一緒になるつもりだったのに。彼に突き放されて胸の痛みを感じながら
「……やだよ」
その一言を、なんとか絞り出した。私は離れるなんて嫌だった。
「僕は大丈夫だから。君のこれからを僕の世話で大変にしたくないんだよ。」
私は必死に嫌だと伝えた。
お互い1歩も引かず話し合っていると
「分かった。僕の負けだよ。」
そう言って彼は笑った。
私は安心して、病室を後にした。
彼の薬はその日から減らなくなった。




