Darling
「今日の占い、運命の再会があるかもって」
友人のメールを見て、35歳千尋は苦笑いした。
結婚して、離婚して、今は一人。
もう恋なんてしないと決めていた。
フリーのイラストレーターとして働く千尋の元に、ある日、絵本の挿絵の依頼が来た。
担当編集者の名前を見て、心臓が止まりそうになった。
「高瀬拓也」
十年前に別れた恋人の名前だった。
打ち合わせの日、カフェで待っていると、見覚えのある後ろ姿が現れた。
「久しぶり」
拓也の優しい笑顔は、あの頃のままだった。
「元気だった?」
「うん、一応ね。離婚しちゃったけど…」
「俺も」と拓也が笑った。
「お互い遠回りしたね」
仕事の話をしながら、かつての思い出が蘇る。
あの頃、二人は夢を追いかけて忙しく、すれ違って別れた。
「千尋の絵、やっぱり好きだな」
拓也がぽつりと言った。
三ヶ月間、絵本の制作を通じて、二人は少しずつ距離を縮めた。
最終打ち合わせの日、拓也が言った。
「占い、信じる?」
「急にどうしたの」
「今朝、おみくじ引いたら『失せ物見つかる』って。俺の失せ物、千尋だったのかもしれない」
千尋は笑った。
拓也が言った。
「もう一度、やり直せないかな」
窓の外、桜が咲き始めていた。
占いは道標。でも歩くのはいつも自分だ。
今度こそ大切な人を手放さない。
「うん」
千尋はもう一度恋をしてみようと思った。
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