私
「で?」
目の前で床に頭を擦り付けるようにしている男にむかってため息を吐くように問う。
先日まで生き別れの双子の妹の婚約者だったが破棄が成立した今は男と妹とは赤の他人になっている。
「いえ…その…ですから…その…」
土下座の男は頭を上げず先ほどから歯切れの悪い言葉を繰り返している。
「…運命の方がいらっしゃるなら妹には用はないでしょ」
勢いよく顔を上げて此方を見るので口元を扇で隠し顔を逸らした、貴方なんかに妹を会わせる訳無いでしょお馬鹿さん。
…ちょっと驚かせたら運命の女性という話だった女性のご両親は娼館に娘を売り飛ばして自分達は関係ないと逃げたらしいわ、やだ!なんて恐ろしい。
あ、でも彼が本物の運命なら何としてでも取り返すんじゃないかしらね、一般的には。
勘当されて後ろ楯がなくなったみたいだけど運命なら何とかするわよね、ただし私の妹を頼るのは筋違いよ。
「…あの…えっと…妹さんともう一度お話を。」
あらやだ、そんなに頭を押し付けたら床が汚れちゃう。
ぱちん。
私は扇を閉じた。
「あの子は私の住む隣国に移る準備で忙しいの。」
愚かな貴方の相手をする時間なんてないのよ。
男はどうやら妹が隣国に移り住む事を初めて知ったらしく顔を上げて目を見開いている。
「り…隣国?」
「わたくし達、家族をやり直しすることに致しましたの。」
お引き取り願って。…と扇を振り召使いに目配せする。
「貴方の運命の愛…でしたっけ?みせて下さいな。」
目を細め立ち上がる、私達が新生活を始める前に悪縁は断ち切らないと。
「やり直したいんだ!」とか「会わせて欲しい」と声がしたけど妹達が遠くに出かけているタイミングでよかったわ。
さあ、わたくしも帰国に向けて荷物を纏めないと。
隣国に戻ったら書類だけで式を挙げていなかった両親にささやかな式を計画している。
計画について母は大ごとにしなくてもと言っていたが大事な家族の仕切り直しなので手抜きは許されないわね衣装や装飾などやる事は多い。
昨晩のうちにジャンケンで私がリングガール、妹がフラワーガールと決めたの勿論ジャンケンは後出し禁止。
父は家族がやっと揃ったことに感極まって鼻水流しながら号泣していたけど大事なら手放さない努力すべきよね?
まぁ、本物の運命なら離れても再び引き寄せられるのよ。
本当の運命ならばね。
もう邪魔させないわよKSBBA!
7月のログイン変更でアップ出来なくなったら困るから何とか完結。
7月無事ログイン出来ましたちょこっと修正。
7月はタロットテーマでなんか書けるといいなぁ。